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居心地の良さを求めて行ったのに失望した話

落ち着いてゆっくりしたくて、あえてそのカフェに行ったのに。
結局その願いは叶わなかった。

何か考えごとをしたいとき、ノートと鉛筆を持ってカフェに行く。

その日も自分の中でいったん整理したいことがあって、ちょっと遠出した先にあるカフェに向かった。
時刻は14時少し前。
お店に着くと、ランチを終えたらしい人々と駐車場や入口ですれ違った。
店内は少し空いていて、奥の方の大きなテーブルに6名のグループがいて、あとは1~2名で来ている人ばかり。
グループも騒がしい感じではなかったし、どの席のお客さんもひっそりとそれぞれの時間を楽しんでいるように見え、和やかな雰囲気だった。
私は庭の見えるカウンター席にかけ、コーヒーを待ちながらノートを開いた。

やった方がいいとわかっているのに、行動に移せていないな。
何が邪魔をしている? 何が障害になっている?
そんなことを思いつくままに書き始めたときだった。

「すいません、デザートお願いしてもいいですか?」
奥のテーブルから若い男性が1人歩いてきて、ドリンクカウンターで何か作業をしていたスタッフに声をかけた。
どうやら奥の席のグループは、ランチのコースを楽しんでいたところらしい。

私が座っていたカウンター席は、ドリンクカウンターにちょうど背を向ける形になっていたので、目で見ることはできなかったけれど、にわかにバタつきはじめた雰囲気が音で伝わってきた。

そしてある女性スタッフがデザートをグループのテーブルに配膳して戻ってくると、少し年配の女性スタッフが口を開いた。
「お客さんに催促されてちゃだめなのよ」
まあ確かに。私も飲食店で働いていたことがある。コース料理の進み具合を見て次の料理の準備を厨房に声かけするように、という指導は散々されたし、自分の後輩にももちろん伝えた。
でも、客(私ともう1人、カウンター席に座っている人がいた)に聞こえないところで言って欲しいなあ。

そんな願いが粉々にされるかのように、年配女性のご指導が始まった。
コースのお客さんへの対応の話なんて早々に終わり、通常営業についての細々をひとつひとつ「あれもできてない」「これもできてない」「なんでこれをしないの?」と延々とまくし立てている。
決してボリュームの大きな声ではないし、ましてや怒鳴ったりもしていない。
でも私の席だと、一言も聞き洩らさないレベルで聞こえてきてしまう。

うるさいって言うほどでもない。
でも不快なんだよな~~~~~~。

ご指導されていたスタッフがお客さんに呼ばれ、平穏な時間を取り戻せるかと思ったら、今度はどこからか現れた別の女性スタッフに「あの子があーだった、こーだった」と話し始めた。話しかけられた方の声は一切聞こえないから、年配女性が一方的に話を続けていたんだと思う。

ひとこと声をかけるか私が迷っているうちに、言うだけ言って気が済んだのか、静かな空間が戻ってきた。
でも、心に不快感が残ったままだ。

「静かな場所で心を落ち着けて考え事をしたい」という、そのカフェを選んだ目的は達成されなかった。
暴れまわりたくなるような衝動を覚えるような怒りではないけれど「もうこのお店は来なくていいかも」と思うくらいには、静かに怒りを覚えている。

飲食店は飲食物を提供する場所。
それは大前提なんだけれど、カフェやバーなんかは雰囲気も提供しているものに含まれていると思っている。
「その場所の雰囲気がいいからそのお店を選ぶ」は、私はよくある。
実際、今回のカフェも、そこのコーヒーやスイーツがおいしいと思ったことは一度もない。
それでも行っていたのは居心地が良いと思っていたからだ。居心地が悪いなら、そこに用はもうない。

ということで、ただでさえカフェの少ない地元で、行きつけをひとつ失った。
もう自宅の中にカフェスペースを作って、自分が最高に居心地のいい場所を、作るしかないのかもしれない。


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