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note躍進の理由をジョブ理論で考察してみた

note がこれだけ普及したのはなぜだろう?と考え、クリステンセンのジョブ理論で考察してみました。

note の躍進がすごい

note の MAU(月間アクティブユーザー)が6300万人を超えたらしいです。すごい、めっちゃすごいです。

Twitter の MAU が4500万人なので、いまや note は Twitter よりも多くの人が訪れるプラットフォームになっています。
ちなみに、note の MAU の定義は「1ヶ月にnoteを訪問したアクティブブラウザ数」であって、note で記事を書いている数ではないので注意です。それにしてもすごい。

機能面で見れば、競合ブログサービスに劣っている

これだけ躍進している note ですが、機能の充実度合いでいうと、他のブログサービスよりも大きく劣っています。
ちょっと思いつくだけでも、下記のようなことが note ではできません。

【noteでできないこと】
・アフィリエイトリンクや Google Adsense を貼る
・ブログデザインをカスタマイズする
・アクセス分析をする
・Google Analytics を入れる
・文字を装飾する
・段落を入れ子構造にする

これらの機能は、例えばはてなブログのような他のブログサービスでは当たり前にできるものです。
このように、機能面で言えば明らかに他サービスに劣っている note がなぜこれだけ躍進しているのか?をジョブ理論で考察してみたいと思います。

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人が購買する理由をひもとくジョブ理論

ジョブ理論とは、『イノベーションのジレンマ』で有名なクリステンセン教授が提唱している、顧客の購買理由をひもとくための理論です。詳しくは、『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』をどうぞ。

ジョブ理論において、顧客は片付けたい用事=ジョブのためにその商品を買うのであり、商品の機能そのものを買うのではないと主張しています。
ジョブ理論を説明するために、ファストフード店でのミルクシェイクの事例を紹介します。

【ミルクシェイクで学ぶジョブ理論】
ファストフード店がミルクシェイクの売上を伸ばすために、フレーバーを増やしたり価格を安くしたりと色々なことを試すも売上は変わらず…。
よくよくユーザーを観察してみると、顧客がミルクシェイクによって片付けたいジョブは下記の2点であることが分かった。
・自動車通勤中の退屈をしのぎつつ、ランチまでお腹を空かせない
・父親が子どもに買い与えることで子どもを喜ばせたい(優しい父親だと思われたい)。しかもミルクシェイクを飲んでいる間は子どもが大人しくなる
このことから、新たに「どろっとしていて飲むのに時間がかかるミルクシェイク」を開発。これが顧客の片付けたいジョブと合致して売り上げが大きく伸びる。

顧客はミルクシェイクの味や価格ではなく、ミルクシェイクという商品によって片付けられるジョブ(自動車通勤の退屈しのぎ・子どもを喜ばせたい)に価値を感じていたということですね。
このジョブ理論を note にあてはめるとどうなるか?を以下に考察しました。

ユーザーが note で片付けたいジョブは何か?

note ユーザーは、note を利用することでどんなジョブを片付けたいか?を考えてみます。考えるヒントになるのは、note のミッション「だれもが創作をはじめ、続けられるようにすること」。このミッションを掘り下げると、どんなユーザーのどんなジョブを片付けているかが分かる気がします。

このミッションを分解して、わたしの私見を含めて掘り下げたのが下記です。

だれもが創作をはじめ・・・これまで創作をしてこなかった、つまりこれまでブログを書いてなかったような人が創作をはじめる。また、「だれもが」にはITやWebに詳しくない人が含まれる。
続けられるようにすること・・・書くことに慣れていなくても、創作すること・書くことを続けられる。

上記に加えて、note ユーザーは創作することで何を成し遂げたいか?というわたしの解釈も含めた note ユーザーの片付けたいジョブは下記です。

ITに詳しくなく、書くことに慣れてない人でも創作をはじめたい。創作することで自分を表現し承認されたい、また誰かとつながりたい。
(アクセス至上主義ではなく、少数の人にでも読まれたい・認められたいというニュアンス)

こう定義すると、note でできること・できないことはすべてこのジョブを片付けるため、と説明できるように思います。

【だれでも始め・続けられるための機能】
・デザインをカスタマイズできない分、始める際に迷うポイントがない
・文章の装飾ができない分、誰が書いても一定レベルの見た目になる
・みんなのフォトギャラリー機能で、カバー画像をつくる必要がない
・連続投稿をほめてくれる。そのほか、バッジ機能でいろいろほめてくれる
【承認される・誰かとつながるための機能】
・スキ・フォロー・記事購読機能で承認とつながりを生み出す
・サークル機能でつながりを生み出す
・アクセス解析ができないことで、PVを気にしすぎないようにというメッセージ。PVランキングもない
・編集部のおすすめ記事に選ばれることで承認を生み出す
・アフィリエイトや Google Adsense はジョブを片付けることに向かっていないので必要ない

こうして整理してみると、他ブログサービスに比較して足りないと思える機能は note ユーザーのジョブを片付けるためにはむしろ邪魔で、あえてつけていないのだと分かります。
ブログデザインのカスタム機能は、ITやブログに慣れている人にとってはあると便利ですが、「だれもが創作を始める」というジョブを片付けるためには不要・邪魔と判断されたのだと思います。

note の競合ははてなブログではなかった

こうしてみると、note の競合ははてなブログのような既存のブログサービスではないように思います。
自由にデザインをカスタマイズしたいとか、ブログを書くことで広告収入を得たいという人ははてなブログを利用した方が便利です。しかし、note が片付けるべきジョブはそこではないのです。

「書くことを続けたい・承認されたい・つながりたい」というジョブにフォーカスすると、note の競合は Twitter や Facebook などの SNS、またはジョブを解決する適切な手段がない故の「何もしない」勢なのだと思います。
実際、これまでブログを書いてこなかったのに note ならばと情報発信を始めている人が数多くいるようです。

noteユーザーの多くが、「ブログを書く」ではなく「noteを書く」という表現を使うことがその証左のように思います。noteユーザーにとって、note はブログサービスとしての価値ではなく、note としての価値を感じているのです。

既存の強いブログサービスを競合にせず、「何もしない」勢というまったくの未開拓のユーザーをターゲットにできたことが、note がこれだけ躍進している1つの理由なのではと思います。

考察は以上です!お読みいただきありがとうございました。

おまけ:note はブログライトユーザーに好まれていることを実感した話

7月の4連休に、知らない人の note を100本読む企画をやりました。

実際に100本の note を読んでみて気づいたことが下記です。

【知らない人のnoteを100本読んでみて気づいたこと】
・属性はさまざま。本当にさまざま。しゅふ・学生・スポーツ選手など、ビジネスパーソン以外も多い印象
・ノウハウ系やまとめ系など、いわゆるブログでアクセスを稼ぎやすい記事を書く人はまれ
・記事を書くことに慣れてない人が多い。内容は洗練されていないが、その分書き手の想いが伝わってくる
・ほとんどの人が1記事あたりのスキ数10未満。スキ率を高めにみて5%だとして、1記事あたりのアクセスは200未満だろうか
・アクセスが少なくても、気にせず書き続けている人も多い印象

実際に100本読んでみて、note がブログライトユーザーに好まれて利用されていて、高機能なブログサービスとは競合していないんだろうな、と実感できました。
というかそもそも、いいねしてくれた人の note を読む企画が成立するくらい、Twitter に note リンクを貼っている人が多いというのもすごいですよね。

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