5億年ボタン

森田靖也(旧表記:オマル マン)氏との対談、第63回目。

K「森田さん、こんにちは。対談テーマ、また何かあったら、よろしくお願いします。日々、考えていることなどでも。あるいは、「一番大きな」テーマでも良いですが。例えば、現代文明について。また、かねてから森田さんが「美」に着目しているのは、私は大変面白いと思っています。」

M「加藤さん、こんばんは! 日々考えていることは、私もいろいろありますね。ネットの方というか、現実のリアルの職場の方で。特に。もちろん、私もそうですし、私の親とかもそうですけど。人って、歳をとると、ある種の傾向が出てくるんだなと。二種類に分かれていく。親族とのコンプレックスを解消できた人と、そうじゃない人、というか。あきらかに苦しそうというか。どうも、歳をとってますますヒステリーな感じの人がいて、もう一方で、悟っているような感じの人がいて。かくいう自分も解消できているかは、わかりませんが。芸術の問題とも、根っこでつながっている気がします。」

K「親族とのコンプレックスの問題、これへの言及が多い研究者として、かつて私の知人であったフロイト・ラカン派の清田友則氏がいます。氏は日本の男性は(隠しているが)ほとんどマザコンだとSNSで発言していましたね。発言がかなり大胆な人です。母娘密着についても、Twitterで発言して炎上。氏曰く「SNSで命を捨てるほどには、愚か者であることを自認」と。」

"AVの親子丼"教授の発言に物議
https://news.livedoor.com/topics/detail/6474998/

清田友則(@tomonorikiyota)という学者のツイッターでの発言が話題になっている。清田さんの専門は現代文化論で、主にセクシュアリティを扱っているらしい。しかし、発言がすさまじい。きっかけになったのは、自分の授業に参加する女子学生に向けて「AVの『親子丼』について聞いてみよう」と発言したことである。ご本人は、発言を削除したらしいが、以下のコメント付きで引用された方のログが残っている。*1 セクハラで

[加藤:注。2012年の記事。以下、内容は消えています。]

「参照。」

清田友則 @tomonorikiyota
母娘密着問題について、教員という立場上もっぱら娘の側に立って見てきたのだが、先日の同窓会では母親の側の視点を見ることが出来た。専業主婦の自身を肯定する彼女にとって育児とは創作活動であり、娘は「作品」なのだという。抱いた疑問。もし出来損ないの作品に仕上がったら誰が責任をとるのか。
2012-04-15 19:40:08

清田友則 @tomonorikiyota
母娘密着問題が難しいのは、加害者=母・被害者=娘の関係が次世代まで反復されること。「自分は母の人形として育てられ苦しんだ。同じ苦しみを自分の娘には味わせたくない」とは考えない。解決されない問題は反復強迫されるというのが、フロイトの見解。同時に加害者であり被害者であることの循環。
2012-04-15 19:47:01

清田友則 @tomonorikiyota
母親にとって娘の教育は、必ずしも自立の道をうながすものではない。「作品」として完成されても作者=所有者は以前として母親であると思っている。作品=商品なので自分の手から離れることはあるが、そこは他の作者(画家、音楽家)も同じ。作品が作者から自立できないのは構造上の問題。
2012-04-15 20:09:43

清田友則 @tomonorikiyota
母子密着問題のドロ沼について考えれば考えるほど、自分も女に生まれて、母親・娘のどちらでもいいから、負のスパイラルに巻き込まれてみたいと思ってしまうのはなぜだろうか。
2012-04-15 21:47:33

清田友則 @tomonorikiyota
映画『マルホランド・ドライブ』を観ても分かるように、羨望からは快楽は生まれないが、嫉妬からは起こりうる。女性のライバル関係の原型が母娘にあるとしたら、母子密着以上の享楽は起こりえないということになる。嫉妬を糧に生きることの悦楽。
2012-04-15 22:20:06

清田友則 @tomonorikiyota
フロイトの有名な言葉に「人は幸せになれない。なぜなら、なりたくないからだ」というものがある。「幸せ」表明はほとんどの場合、決意の表れであって、現状を示すものではない。それは人間の高貴さでもある。
2012-04-15 22:27:32

清田友則 @tomonorikiyota
そうですね。考えれば考えるほど遠のいていく感じすらいたします。ただ、当の女性にとってもそうのようで、ゼミでもそれについて議論しています。@bextupu5 男性にとって女性は彼岸の存在ですな。
2012-04-15 23:34:31

清田友則 @tomonorikiyota
加害者と被害者は本来相互排他的。父子関係に苦しめられた俺にはそれがよく分かる。だから「父殺し」ができる。ところが母娘関係ではむしろ相互補完的となるらしく、その結果「母殺し」(斎藤環)ができない。そこがよく分からない。
2012-04-15 23:50:41

ayako @hazecoco@tomonorikiyota
父と息子の排他的関係の背後には、必ず「母」という第三者の存在があります。でも母と娘の関係には、「父」という存在は不要です。一対一の関係では、母を殺すことは自分を殺すようなものなのでは…?
2012-04-16 00:05:07

清田友則 @tomonorikiyota
そこは分かります。ただ問題は「ファリック・マザー」が母なのか、父なのか?@hazecoco 父と息子の排他的関係の背後には、必ず「母」という第三者の存在があります。でも母と娘の関係には、「父」という存在は不要です。一対一の関係では、母を殺すことは自分を殺すようなものなのでは…?
2012-04-16 00:08:26

@shirayuki1030
セクハラですやめてください RT @tomonorikiyota: そういえば、アダルトのジャンルに「親子丼」というのがある。/ 母子密着タイプで、かつレイプ願望をもつ女性にとっては、強烈すぎるほど享楽をもたらすジャンルではあるまいか。今度うちのゼミ生女子に聞いてみよう。
2012-04-15 21:14:10

猫神こまにゃ @comanya
それはあなたが当事者の抱える痛みや苦しみをまったく理解してないからですよ @tomonorikiyota
2012-04-15 22:14:45

清田友則 @tomonorikiyota
そうかもしれませんが、痛みを伴う快楽のほうが伴わない快楽より強烈というのが、私の師フロイト・ラカンの教えなもので。@comanya それはあなたが当事者の抱える痛みや苦しみをまったく理解してないからですよ
2012-04-15 22:16:42

https://togetter.com/li/289275

M「加藤さん、こんにちは! 展開ありがとうございます。上記の問題提示、興味深く読みました。これはマイノリティの問題ではなく、万人が向き合わないといけない問題だと。ここ数年の社会傾向を見ても。深く確信するところです。このような、あまりに、 あまりにクリティカル過ぎる問題を思考するときに、 たいていの人が見せるのが、 「そうとはいってもさ...」で思考を切断する身振り。 「現実みようよ」と。 しかしその者がいう「現実」には、まったく現実感がない。」

K「清田さんの「絶望論」はそういうものでした。だからマイノリティに焦点を合わせた、現代思想を否定。主語は「我々」でなければならないと。」

M「マイノリティの問題に囲い込むことで、(大半の人たちに)「君たちはそのままでよいよ」と。端的にいって「その君の雑な頭のままでいいよ」と。」

K「そうですね。」

M「その言及性が、その大半の人達のかかえている欲望にむかうと、破壊されることなるでしょうから。大量の犠牲者が出る。」

K「例えば、発達障害の当事者問題に集中させることで、既製の(例えば、現代アートという)制度内に囲い込むと。よく見る光景。」

M「今まで、私たちが直接/間接的に言及してきたことですね。一貫して。自己の問題を、ぎりぎりのところで回避することができる。わかりやすいEXIT機能としての発達障害。「これはあなたの問題ではないです。この呪われた者の問題なんです」と。深層心理で「ホッ」とさせるのですね。うまく出来ている。ここ数年、何度も何度もその骨法のマーケティングを見てきた。」

K「(同時に、)あくせく働く「社会」を下に見て、「反資本主義」を意匠として纏えば、そのような大枠の「我々」を問わずに、業界制度内で安定して「自己」実現できるという現代アートの方式。その紋切り型。」

M「私は、数年ぶりに筆をとり、絵画を描いて。 その自分の作品を眺めて、空虚さに慄いたのでした。 そうだったのか。空虚さが、自分の本性だったのか、と。今、話している問題と、深くつながっているのです。加藤さんに深く感謝しないといけないと思っているのです。ほんとうに、なんにも考えずに、描いたのです。そして描いた作品を見たら。」

K「私は、何かを持続しているのか、美術家として(例外的に)やはり・・。」

M「「殺し屋イチ」っていう、心理学を援用して成功した漫画があって。 かなりエログロですが、 一般的にいっても、ヒット作なんですけど。 あれも今思うと「空虚さ」がテーマだった。90年代末、ゼロ年代はじめ頃。」

K「今、画像検索して見ましたが、登場人物がやたら泣いていますね。」

M「主人公が、泣きながら。登場人物を殺しまくるんです。」

K「なるほど。」

M「清田氏の言説の質と、とっても似ている。あの漫画の世界観は。漫画のオチをいうと「...それでも欲望には限りがある」。主人公も欲望がすっかり、東京に吸い取られて、普通の人になって終わる。」

K「殺しまくって、普通の人として終わる。何かリアルですね。」

M「「空虚」をよく表している。」

K「そうですね。「自分」の欲望なんてなかったと。」

M「そう。自分の欲望なんて、ほんとうはない。凡人は「無為」には耐えられないと。じっさい、その通りではないか?」

K「うーん。」

M「「みんなのトニオちゃん」って漫画があって、「5億年ボタン」ってあって。 これもネットで大ヒットしたやつですね。 かなり怖い漫画なんですけど。 5億年、異空間でじっとしてたら、100万あげる、って漫画で。これもゼロ年代ですね。」

K「100万!(笑)。面白いですね。」

M「めっちゃ怖いんですよ...。人間の本性をよく描いてて。私も知らぬ間に、めちゃめちゃ影響を受けた。」

K

5億年ボタン【くそ怖い】
http://yoshiya55000.blog.jp/archives/6833584.html

M「そう、これこれ。極端な表現かもしれないけど。清田氏の提示している問題と、深い部分で、つながっているのではないか?」

K「すごく怖くて面白い。私のようだ(?)(笑)。」

M「加害者、加藤豪。」

K「つながっていますね。」

M「つながっている。だから、メガヒットしたのですよ。けっきょく、自分を無視しているんですよ。ほぼ99%の人。やっぱり、そこだけは、見たくないから。」

K「自分を見たくない。鬱になるから。」

M「ほぼほぼ、鬱になると思う。毒親!とか言ってた方が、まだヘルシーですよね。でもアーティストですら、例外なくその身振りっていうのは、モラル違反では?という想いも。というかTwitter見ると、アーティストこそ、毒親!とか発達障害!とか。言いまくってますよね。」

K「処方箋ですね、「毒親!って言っていなさい」と、アーティストの。言っていますね。」

M「「お前なんで美大行けたんだ!」って話で。つっこみ所しかない。」

K「確かにそうですね。「精神分析」が流行るのも、根治目的ではない。」

M「そうですね。ですが、根治目的を行使すると、死人がでるかもしれない。」

K「確実にそうですね。もう出ているし。清田さん自身、この後心臓の難病に罹ってしまった。鬱病薬と、アルコールと、ホラービデオの反復の結果(?)。」

M「一方で、おそらく、優れている人ほど、本質的に、空虚ではない。誰よりも、自己と向き合っているだろうし。自己への配慮ということでしょうが。」

K「私は空虚ではありません!」

M「そこは、もちろん!」

K「人を愛しているし、芸術を実践している。」

M「生産的ですね。加藤さんの生産的な生き方。ボイスの空虚さ。」

K「ヨーゼフ・ボイス=会田誠の空虚さですね。その空虚さを肯定する、「格付け」の彦坂尚嘉。業界人の群れ。」

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