仏教を知るキーワード【15】出家と在家 ~優婆塞・優婆夷と比丘・比丘尼~
出家者は戒律に基づく出家サンガに所属する。在家信徒は出家サンガを布施で支えながら、その指導を受けて個々人で仏道を実践する
仏教の出家とは、一義的には比丘(びく,男性出家者)と比丘尼(びくに,女性出家者)のことを言う。*1在家は優婆塞(うばそく,男性信徒)、優婆夷(うばい,女性信徒)に分けられ、出家と併せて四衆(ししゅ)と呼ばれる。いわゆる仏教徒の総体は、この四衆によって成り立つ。
*1:これに比丘の見習いである沙弥(しゃみ)、比丘尼の見習いである沙弥尼(しゃみに)と式叉摩那(しきしゃまな)が加わるが、本項では省く。
仏教は他宗教に比べると明確な在家信徒集団を作らなかったと言われる。在家者は出家サンガに布施をして活動を支える一方、個々人で仏道実践に励む。しかし法事の際に僧侶から三帰依や五戒を受けることはあっても、それを実践するか否かは個人の意志に任されてきた。たとえ形式的に帰依を表明しなくても、ブッダの推奨する生き方を実践するならば、その人は「仏弟子」である。在家に限ってみれば、仏教は個人主義的な宗教と言えるだろう。初期仏教の時代から、修行して聖者の位にさとった在家者も数多くいた。
一方、ブッダが定めた法律である律により運営される出家組織(サンガ)は、ほとんど変化を被ることなく二千数百年、連綿と続いてきた。サンガへの入門者は自らのカーストや社会的地位をすべて捨て、衣や鉢など最低限の道具のみの集団生活に身を投じる。入門儀式では四波羅夷(しはらい)にはじまる227条の律を遵守することを誓う。そして、食事は托鉢によること、寝所は樹下によること、着るものは糞掃衣(捨てられた布を縫い合わせた衣)によること、薬は牛の尿によることを基本とし、それ以外は余慶なりと自覚すべきことを告げられる。
実際のサンガは「余慶」が肥大化しているが、出家が折りにふれ想起する四原則は、世俗価値に振り回されない精神的自由の基礎となっている。
※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。
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