歌声の分類について

人間は一人一人違う声を持っています。100人いれば100種類の声が存在します。歌声も同じです。全く同じ歌声というものは存在しません。ここではその「歌声」を、いくつかのタイプに分類し、主なレパートリーを挙げながら、それぞれの特徴をできるだけ分かりやすくまとめてみようと思います。 歌声を大まかなカテゴリーに分けることは、声のトレーニングやオペラの役を勉強する上でも有用です。

歌声の分類といってもさまざまな方法があります。女声と男声という最も大きな分け方から、声域により高いほうからソプラノ・アルト・テノール・バリトン・バスなどといった分け方はまだ馴染みがあるかもしれません。しかし、とりわけオペラの世界では、同じソプラノでも大まかに分けてもさらに3種類(コロラトゥーラ、リリック、ドラマティック)、もっと細かく分ければ8種類以上に分けられることもあります。それらの分け方は、同じ「ソプラノ」という声域を持つ声でも、さらに高めか、低めか、また重いか、軽いか、声の色はどんなタイプか、などによって決まります。 

特にオペラにおける歌声の分類方法で、よく知られているものにドイツ語圏で使われている(いた)Fach Systemがありますが、私は英語圏で使われる分類方法のひとつを採用しています。私の採用した分類方法を用いているものに、Petersから出版されている「The Art of Auditioning」という本があります。オペラハウスのオーディションやコンクールのための、いわゆるHow to本で、推薦されるレパートリーが丁寧な解説とともに列挙されています。 Voice typesについても簡単ですが分かりやすく説明されており、歌手や指導者にとって非常に役立つお薦めの一冊です。 

以下に、ドイツ語圏で使われるFach System(左)と英語圏で使われる分類方法(右)の対応表を紹介します(あくまでも代表的なもので、異なった訳や対応の仕方をする資料もあります)。私の分類方法は、以下の英語訳による分類をもう少し単純化してまとめたものです。 

.....................................................................................................................................

Soprano ソプラノ
Soubrette - Soubrette
Lyrischer Koloratursopran - Lyric Coloratura Soprano
Dramatischer Koloratursopran - Dramatic Coloratura Soprano
Lyrischer Sopran - Lyric Soprano
Jugendlich-dramatischer Sopran - Spinto Soprano
Dramatischer Sopran - Dramatic Soprano
Charaktersopran - Spinto Soprano
Hochdramatischer Sopran - Heavy Dramatic Soprano 

Mezzo-Soprano メゾ・ソプラノ
Lyrischer Mezzosopran - Lyric Mezzo-Soprano
Dramatischer Mezzosopran - Dramatic Mezzo-Soprano
Contralto - Contralto
Dramatischer Alt - Dramatic Contralto
Tiefer Alt - Contralto 


Tenor テノール
Spieltenor - Buffo Tenor
Lyrischer Tenor - Lyric Tenor
Jugendlicher Heldentenor - Youthful heroic Tenor/Spinto Tenor
Charaktertenor - Character Tenor
Heldentenor - Heroic Tenor 


Baritone バリトン
Lyrischer Bariton - Lyric Baritone
Kavalierbariton - Cavalier Bariton
Charakterbariton - Caracter Baritone
Heldenbariton - Heroic Baritone

 
Bass バス
Spielbass/Schwerer Spielbass - Basso Buffo
Charakterbass - Bass-Bariton
Seriöser Bass - Basso-profondo 

............................................................................................................................................

以上は私が約10年前にブログに書いた記事を移してきたものです。折を見て、追記や修正等していこうと思います。いずれにしても、声種は血液型のように明確に分けられないグレーゾーンも存在するので、その時々で柔軟に見ていくことも大切です。

“Singing is not about timbres or category labels, singing is about fascinating acoustical properties like the colors of the human voice which derive from thought and emotion.” (Thomas Hampson)
「歌は音質やカテゴリーによって語られるものではない。歌とは、思想や感情から引き出された人間の声という魅力的な響きが持つ特権に対して言うものである。」(トーマス・ハンプソン)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?