子どもの前で愚痴は

小学生時代、保護者から疎まれていた友人の母親のことを思い出した。
小学生の僕は、彼女のことを身体と声が大きく、よくニコニコとしていて悪い印象は全く持っていなかった。その母親の子どもとも学校終わりに家でゲームをするほどの仲だった。

小学6年生のとき、高原の自然の家にレクリエーションを体験する学校行事があった。1泊2日で保護者も同伴の行事で、彼女も当然参加していた。
昼の体験学習が終わって夜になったとき、大広間から保護者たちの話が聞こえた。中には自分の親も加わっていた。

話の内容は彼女の悪口だった。そのとき彼女は丁度席を外していたのかもしれない。大人たちは明け透けに彼女の愚痴を言い合っていた。
彼女がどういう理由で嫌われていたのかは分からなかった。でも、大人たちが共通の認識で彼女のことを良くは思ってなく、省いていることだけは分かった。

学校行事が終わって家に帰った。夕飯を食べ終わって居間でくつろいでいる時に両親は学校行事のことを話しあっていて、程なくして彼女の話題になった。内容は大広間で話していたことと同じだった。
僕はテレビを見るふりをして話を聞いていた。確か伊藤家の食卓を見ていたはずだけど内容は頭に入ってこなかった。

それから成長するにつれて、集団から外されて疎まれる人たちを見てきた。時には僕も彼女のような人を糾弾する側になることもあった。そのような世界があることを知っていった。

だけど、子どもの前ではそんな世界を見せて欲しくなかったと今では思う。
大人の邪な感情だとか、人間関係はいつかは知ることになる。だから綺麗な世界を生きている子どもの耳には入れないで欲しい。

中学生になって彼女の子どもとは疎遠になった。嫌いになった訳ではないし、自然と付き合いが離れていった。いや、無意識に自分が遠ざけていっていたのかもしれない。

でも、彼女は相変わらずニコニコとしていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?