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【エッセイ】バッタとちびバッタ

家の前にバッタがいた。
鉢で育てているワイルドストロベリーの葉にバッタがとまっていたのだ。
昨年育てていたミントをことごとくバッタにかじられ、つんつるてんにされてしまったので、私にとっては天敵だ。

「コンニャロー・・・また食べようとしているな」

でも、バッタはつぶしたりできない。
蚊はもちろん、蛾や青虫はえいや!が出来るけど、かわいそうに思ってしまい、ついつい見逃し昨年のミントのようなことになってしまう。

でも、今回は5年ほど大事に育てている「ワイルドストロベリー」だ。
これは食べられたら嫌だ。

ひとまずビニール袋を持ってきて空気とともにそ~っと捕まえる。
やられた!という感じでビニールの中でジャンプするバッタ。
「ちょっと待ってよ・・・」と言いながら隣の空き地の草むらに逃がしてやった。
ここの雑草たちでがまんしてちょうだい。。。

そんな風に優しさを発揮してしまうバッタに対して
実はひどい仕打ちをしたことがある。

以前、神戸の塩屋という街に住んでいた時。
高台にあり、瀬戸内海と明石海峡大橋が見渡せるめちゃめちゃ景色の良いお気に入りのハイツだった。
その部屋には小さな庭がついていた。
庭の左右に花壇があり、中央は芝生が植えられていた。
花壇では季節の花を植えたり、バジルなどちょこっと野菜を育てたり、大家さんから電動の芝刈り機を預かり芝の手入れをしたりして、海を眺めながらのガーデニングを楽しんでいた。

ある天気の良い休みの日。
初夏だったと思う。
部屋から海を眺めてぼ~~っとしていた。
すると、、

芝生のあたりで、緑色の小さな何かがすごい勢いで吹き出していた。
そう、吹き出していた。それはまるで噴水のように!

え!!!何???

急いで近づいてみるとなんと
小さな小さなバッタが大量に誕生した瞬間だった!!
バッタの形をしているけれど全長1センチほどの「ちびバッタ」だ。

正確には・・・誕生の瞬間なのかどうかはわからない。
でも、その時は
「めっちゃ生まれてしまってる!!!!!!!」
と思い、と同時に
この恐ろしい数の「ちびバッタ」が恐ろしい数の成虫になることを想像して
「ぎゃ~!!!」となった。

で、
私はめちゃめちゃ踏んだ。

踏みまくった。
地団駄を踏むように足をバタバタさせてちびバッタをぎゃーっっっっと踏みつけまくった。

といっても果たしてそれでやっつけられていたのかどうかもよくわからない。

とりあえず、かわいそうとかそんな気持ちが起こる前に身体が動いていた。
端から見ている人がいたら

"庭の真ん中でものすごい勢いで地団駄を踏む女"

かなり笑える姿だったと思う・・・。

そして、その夏。

大量のバッタに悩まされた記憶がないことを思うと、芝の中でちびバッタが山盛り横たわっていたんだと思う。
あ~想像するとこわい・・・


というわけで、私はバッタを見るとその時のことを思い出してしまい
見て見ぬ振りをするか、そ~~っと捕まえてそ~~っと逃がしてしまう。
罪滅ぼしなのか、ちびバッタの復讐が恐ろしいのか・・・

でも、思い返してみると。

毎年のように育てている鉢にバッタを発見している気がする。
もしかしたら
「こいつの庭は安全だ」と
バッタのボスが触れ回っているのかもしれない・・・。

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