見出し画像

私が見たFF14という幻想の最後

はじめに

 このnote記事は『ファイナルファンタジーXIV: 漆黒の反逆者(ヴィランズ)』のネタバレを含んでおり、それと同時に、このゲームをプレイした本記事執筆者の感想批判が書かれています。

 本記事を読んでいる最中に気分が悪くなった場合は直ちに閲覧をやめ、ファイナルファンタジーXIVをプレイしてください。









プロローグ

 私はエオルゼアの民ではありませんでした、2年前までは。

 ゲーム開始のキッカケは友人が勧めてきたこと。今までやってきたゲームに愛想を尽かした直後だった私はかなりヤケでした、その場のノリだけでエオルゼアに降り立つことに決めます。異性をフったその日に別の誰かと付き合い始めたようなモンですね、そんなレベルのノリです。

 やると決まれば善は急げ、当時発売されていたコンプリートパックをダウンロードで購入し(税込6,264円)そのまま即インストール、即ログイン。キャラメイクは黒毛の勇ましい虎のような見た目にしました、その方が強そうですしね。クラスはモンクにしました、その方がスキル回し楽しそうだなとか考えていました。

 薄っすらとそれ以外にもやる理由はあった。それはFF14のユーザー評価の高さ、特に評価が高い漆黒のヴィランズ、この評価の高さを知りたいというのが理由。
 TwitterのTLに時たま現れるんですよな、「漆黒最高」みたいなやつ。でもこの時は大きく気にしてはいませんでして、たぶんファイナルファンタジーだから評価が高いんだろーなとか考えてました。

 ゲームだとしても、初めて見る大地はどこまでも広大で、初めて見る空は眼前を時間とともにうつろわせ、そこに確かな生命の息吹すら感じるほど。それが地形や環境を変えて代わるがわる目の前に現れ、私はそれを通り過ぎていく。サバンナに、森に、海に。

 しかし、見慣れた景色でもあった。モンスターが置かれ、NPCが置かれ、プレイヤーが行き来する。私がやったMMORPGは片手に数えるほどですが、この景色はどのタイトルでもおんなじですし、プレイヤー同士のゲームならではなチャット文化を見ると、やっぱり懐かしくなったりするモンです。

 ゲームとして目を見張るものはUIの拡張性の高さだった。プレイヤーや敵mobのHPバー、ミニマップや受注中クエストのショートカットまで、ありとあらゆる画面に映る情報をプレイヤーの好きな位置に再配置したり、消去したりできる。マジですごい。「バフ一覧見づらいんだが」とか「クールタイムが敵のHPバーから遠いせいで目が忙しい」みたいなことが起きようもないんです。すげー便利。全部のゲームこうなってほしい。
 この機能に気づいた瞬間に、ネットでオススメUI設定を漁ってそっくりマネしました。もちろん、イジった箇所のほとんどはイジる理由も分からないままになりました。

新生エオルゼア

 いち冒険者としての生まれがいかに英雄になったのか。行く先では率先して問題に関わっていき、仲間や居場所を得て、人成らざる者から啓示を受け、闇の者の陰謀を暴き、常人では敵わない強大な力と対峙し、世界の破滅を防ぐ。3国家は一人の冒険者によって同盟を結び、冒険者は一躍英雄となる。

 特にストーリー的に驚くこともありませんで、わかりやすい冒険譚でした。3カ国を反復横跳びしてあるき回ったという記憶以外は残っていません。ムービーは殆どスキップしてました。

 その道程、クリスタルタワーへ赴き謎解明を援助。途中のムービーはほぼスキップしていましたが、内部ではFF3のアレンジBGMを聴きながら戦闘できるという楽しみもありました。出てくる敵も過去作プレイヤーなら知っているものが散りばめられており、それはきっと楽しめたものなのだと思います。

 のち英雄は国家統治者暗殺の嫌疑をかけられ、イシュガルドへと渡る。


蒼天のイシュガルド

 貧富の差をつける国営が行われ、過酷な地で生きる人々の現実を目の当たりにする英雄とアルフィノ。
 私はなんでアルフィノが英雄と一緒にイシュガルドに来たのか全く知りません、ついでにアルフィノと仲良くなったキッカケも知りません。なんかかわいらしい男の子が付いてきてくれてますね。やったー。

 このあたりはちょくちょくムービー観たり観なかったりしていました。というのも、イシュガルド編を始める前に一度FF14から離れており、このあたりでプレイ権を買い直しているのです(税込1,408円) せっかく買い直したのでストーリーも楽しもうと思っていました。当時は。


 イシュガルドの貧富問題、エオルゼア同盟問題、アルフィノ君の自信喪失問題、この全てを解決する方法が一体の竜の討伐。それだけで全てが丸く収まってくれることが、英雄の不思議な力と説得で明らかになりました。ついでに悪い教皇も討伐。

 新たな集落に赴いては、その親切心で困っている人間に手を差し伸べる英雄。少々の打算的なとこはありつつも多くの人間、組織から信頼を勝ち取って来ており

  この頃にはもう、私はこのゲームに向いてないと思うようになりました。

 多すぎるクエストと、達成したときに目に入るNPCの会話。それのどれもが英雄への平らな謝辞。クエストのほとんどはおつかいで、英雄はただ都合よく通りがかっただけの他人。困ったときの冒険者。光のなんでも屋。

 広すぎるマップ、そこに出される捜索クエスト。クエストの達成座標が曖昧にしか表示されないクエストが定期的に出題され、依頼されるたびにため息を付きながら辺りをうろつき回っていました。

 おつかいで拠点と戦闘マップを行き来するたびに、私から見える景色は色褪せていきました。そこにはもう、世界観もへったくれもありません。配置されたモンスターは、マップの間を埋めるだけに配置される賑やかしに過ぎず、だだっ広いマップにまばらに配置されたNPCは、マラソンの中継地点のようなものです。

 戦闘も緊張感の無い繰り返し作業です。キャラビルド要素の全く無いFF14は戦闘における自由度がありません。自身の攻撃パターンは固定化され、繰り返し敵mobに同じ技を順に繰り出すだけの作業です。どうせ作業なら、モンクじゃなくて侍にすればもっと火力も高くてラクできたはずでした。レベル上げ直し作業はイヤなので最後までモンクでしたが。
 もちろんタンクやヒーラーは状況に応じた対応が求められる点で戦闘の緊張感はあり、それは戦闘そのものの楽しさになると思います。私はコンテンツの度にギミックを調べたりしたくなかったので、DPSを選びました。

 しかし同時にプレイし始めた友人は、やる気のない私と違ってFF14を楽しんでいました。ストーリー進行は追い抜かされ、購入時こそゲームを共に楽しみあっていたものの共有できるクエストやコンテンツが少なくなると、自然とお互いにFF14の話はしなくなっていきました。

そしてまたFF14から離れました。
モンスターハンターライズ、面白かったです。



 しばらくして、先に漆黒のヴィランズを終わらせた友人からこう言われます。「漆黒のヴィランズやれ」

 なぜなのか問いただしても、「理由は言えない」「やれ」の一点張り。
 いわゆるネタバレ厳禁系の面白さということなのでしょう。最近そういうゲームに触れる機会が多かったので、友人の意向は汲みました。私もDDLCとかUNDERTALEを勧める人種なので、良いゲームなのにゴリ推しするしかないという状態の人間がどうなってしまうのかを知っているのです。こうなるわけです。

 私は渋ります。他のゲームやりたいし、私はFF14に向いてない。税金払いなおしだし。
 なおも友人は重ねて言います「やってほしい、面白いから」「漆黒だけでも」

 このゲームをインストールしたときのことを思い出しました。
光の戦士になった人間がエオルゼアから帰ってこないという、そんな噂を。

 この友人がまさにそうで、FF14に魅入られた者としてエオルゼアでの生活を送っていました。PCの起動中は常にFF14を起動していたように思います。DPSとタンク両方のクラスを使いこなし、多勢の人間との交流は避けぎみに見えていたあの友人が、なんと自ら進んでフリーカンパニーに所属し、FF14専用のTwitter垢まで作っていました。

 何がFF14プレイヤーをそこまで駆り立てるのか、その正体がより気になってきました。

 しかし私はまだ渋ります。落とし物探しがしたくて、NPCにパシられたくて、シャトルランがしたくてゲームをやってるんじゃなく、電源を落としたときに、あー楽しかったって言えるゲームがやりたいんです。
つまりもうマップを歩きたくないということです。

「二人乗りマウントなら一緒に飛んでけるけど、買わないと無いんだよね」


 交渉成立。
 マップを歩きたくない私と、FF14をプレイさせたい友人。私はエオルゼア税(税込1,408円)友人は二人乗りの車で共にリアルマネーを消費し合っての再出発でした。

 それからは私がFF14をプレイする時は、四六時中いつであっても友人を呼びつけて、足になって貰いました。マジ?他人にゲームやらせたいがためにこんなに付き合ってくれるの?ホントに感謝してます、ありがとう。

 でもマップを歩くストレスから多少開放されても、このゲームのプレイ動機は薄いままです。

この光の戦士たるプレイヤーは、なんのためにこんなに戦ってるんだ?

全くわからないまま蒼天のイシュガルド編は終わりました。


紅蓮のリベレーター

 全く記憶がありません。ムービーは全てスキップし、マップの移動は友人に任せ、戦闘中はYouTubeを見ていました。

 この辺りで友人の所属するフリーカンパニーに招待されました。オンラインゲーム特有のテンションの高い挨拶に郷愁を感じつつも、そもそも所属したところで何をする集団なのか全く知りません。これ以降フリーカンパニーのメンバーとチャットを交わすことはありませんでした。


漆黒のヴィランズ

 いよいよやってきた漆黒編です。これのストーリーを見るためだけにこのゲームをやってきたと言っても過言ではありません。

 エオルゼアの英雄である光の戦士は、帝国との合戦の真っ最中に第一世界に召喚されるところからストーリーが始まります。第一世界とは、光の戦士がもといた原初世界と似た、異なる境遇の世界であることが召喚者である水晶公から説明されました。

 しかしなんのために光の戦士は第一世界呼ばれ、なんのために第一世界を救わなければならないのか?
 そうこうしている内に原初世界は帝国に侵略されてしまうのでは?
 ここでの冒険は原初世界にとってなんの意味も無いのでは?
 ストーリーの流れも、やたら強い冒険者が召喚者と手を組んで未曾有の驚異を討つ、というありふれた異世界転生モノにしか見えませんでした。

 いつも通りお使いをこなし、いつも通り友人の足を借り、いつも通りその世界の問題を瞬く間に解決し、いつも通り一躍英雄と成り果てました。


 もちろんしっかりムービーは見ていきました。光の戦士はかくて闇の戦士となり、原初世界と違う世界に生きる人々の、窮地に立たされながらも逞しい生き方、考え方、力強さが感じられるようでした。
 たぶん、そういう風に見えるよう描写されていたはずです。

自らの課題を乗り越え精神的にも身体的にも強くなっていく仲間たち。

国家の変遷を目の当たりにしたからこそユールモアの未来を案じていたアルフィノ

英雄と仲間のことを考えていたからこそ真実を隠し続けたウリエンジェ

ミンフィリアを守り自身の意地を貫きとおしたサンクレッド

能力を活かし民を尊重して地位すら築き上げたヤ・シュトラ

ミンフィリアを自らの意志で受け継いだリーン

英雄にデレデレのアリゼー

そして、第一世界を復興するために尽力した水晶公

 それぞれの第一世界で作った人脈と、思いが成果となって最後の大罪喰いを討伐せんと手を取り合った「イノセンス討滅戦」

 クリア後ムービーで水晶公のフードが捲れ上がり、その一瞬に映る赤い頭髪のミコッテの後ろ姿に、選択肢は


・何も言わない
・彼の名前を呼ぶ


 何も言わなかった。
 何も言えませんでした。水晶公の手によって魔法が放たれようとしているさなか、手にした光のエーテルによって英雄が倒れふさんとしているさなか、モニターの前で腕を組み頭を傾げ5分ほど考えました。誰だこいつ?赤毛のミコッテの知り合いなんかいないが?

 選択肢を選んで程なく、赤い双眸が映り込み、そこでようやく思い出したのはクリスタルタワー攻略のラストムービー、気まぐれに観た部分でした。あ~、あいつ!クリスタルタワーに帰っていったあの!
 原初世界で終えたクリスタルタワー攻略は、私にとってはただのダルいコンテンツの一つでした。

 感動の再開になるはずだったろう、英雄が残した生きる意志を、私は全く無下にしました。
 画面の中のカッコいい黒虎の英雄は、私なんかではありません。

 FF14へのモチベーションが上がらずに何度もゲームを起動しては落とすを繰り返していました。そんな日々を過ごせば当然、支払った税金の期間満了が近づいてきます。この時点で残り3日しか残っていません。コレ漆黒間に合うのか?


水晶公の正体を知り、原初世界へ帰る手段を見つける英雄。
アシエンたちの過去を知りつつも戦う英雄。
税金の残り期間が気になる私。

人の統合のために戦ったアシエンにはもう、守るべき友すら残っておらず

「お前はもう戦えない、戦う目的がない」

「お前の冒険はここで終わる」

光の戦士に向け投げられた言葉は、私の胸にすら突き立てられました。
二度も。

 全てFF14に勝手に抱いていた幻想でした。


 税金期間満了最終日
 いつものようにボスを倒し、いつものように世界を救い、いつものように救った地域を観光しました。これで4度目で、もう慣れたものですね。
 このゲームが終わる頃にはきっと感動して涙を流しながら、自らが救ったエオルゼアで充実した日々を過ごすのだろうと勝手に思っていました。
そしてFF14未プレイヤーに、その素晴らしさを説いてまわるのだろうと。

 友人にフリーカンパニーへ招待した理由を聴きました。
「同じフリーカンパニーにいるとログイン通知が飛ぶから、フレンドには無いんだよね」

その場でフリーカンパニーは無言の脱退

 私は友人に大きな声で聴きました。
「ねぇこれで漆黒のヴィランズ終わり?もうやることないよね!?」


即ログアウトし、即アンインストールしました。

私はエオルゼアの民ではありませんでした。これからも。


契約終了日 : 2021/10/04

商品名
(PC ダウンロード Windows版)ファイナルファンタジーXIV コンプリートパック[新生エオルゼア~漆黒のヴィランズ]
購入日
2019年07月08日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?