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ワインを分かろうとしなくてもいい。

こんにちは。
ソムリエになってから海外移住。
みゆきです。
ワインと食の観点から生活を豊かにするヒントをお届けしています。

ソムリエが言うべきタイトルではないと思いますが、
最近つくづく思うのは
ワインを頭でわかろうとしなくてもいい。

ヨーロッパに住み始めてから特に感じます。

頭で理解する、腹落ちする。
言葉でわかる、納得する。

後者の感覚に触れたときこそ感動の瞬間。

私は職業として、
どうしてこのワインが美味しいのか。
なんでこの食事にどうやって飲むのがいいのかを
言葉と文章で伝えるのが仕事ですが、

やはり体感に勝るものはありません。

以前に酸っぱいワインは美味しいのか説について、書きましたが

酸っぱいワインが本質の品格を表す瞬間のひとつは
空気(温度、湿度、酸素、空間すべて)と触れた瞬間です。
(私はこの類のものをワインの術式だと思っている。)

イタリアでは通称「王様のワイン」を作ると言われるブドウから造られたワイン。Nebbiolo(ネッビオーロ)
その味は酸っぱくて渋いです。(これ聞くと全然美味しくなさそう。)

このブドウから造られたワインが本領を発揮するのが、
食べ物と合わせたときと、空気に触れた瞬間です。

私の体感の話をします。
北ドイツでは6月ごろでした。
気温が28度くらいで、少し蒸し暑い日です。
高緯度の地域なので、日照時間が長くて気温より体感温度は暑い日が続きます。
ViettiのLanghe Nebbioloというワインを常温で、一人で開けて空気に少し触れさせた瞬間。
お客さんに提供する前にコンディションを確認しようと試飲したときでした。

周りの空間が一瞬に凛と張り詰めたような緊張感を持ちました。
ワインの持つ酸味が、暑さをリセットさせるような、
清涼感として、一気に輪郭を主張しました。

ほんの10秒足らずの出来事でしたが
私にとっては永遠を閉じ込めたような、静止画の中に入ったような瞬間でした。

その一瞬で、ワインのセラーの温度について理由から
ワインがなぜ地下(セラー、カーヴ、ケラーと呼ばれる)にあるのか。
冷蔵庫がなかった時代の叡智といったすべてのことが
「あぁ。」と納得した瞬間でした。

同じワインを似たような状況で開けたからと言って
同じようなシーンに出会えるという保証はないのですが、、
(それがワインの術式の面白いところ)

今日、ワインを口にするなら
あまり知識や情報は考えずに。かつ、急いでガブガブと飲むのでもなく

色と香りと味を味わって
五感をフル活用してリラックスして
楽しみにしてみると、奇跡の瞬間に出会えるかもしれません。



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