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よんだ「反少女の灰皿」矢川澄子 著(新潮社 1981)

千夜千冊 0591夜(意表篇)

矢川澄子(1931 - 2002)
小説家・詩人・翻訳家。 澁澤龍彦との結婚(1959 - 1968)。

【この世界】が見え過ぎてしまう人は、生きていくのがしんどいのに違いない。書くことで、創作することで、死ぬのを先延ばしにしているのかもしれない。ただ、その瞬間だけ、死から離れられるということか。naka

一冊のは延期された自殺

E・M・シオラン著「生誕の災厄」

さて、矢川さんの言葉を転記しておこう。

最高の衛生法とは何か?
好きなことをとことんつらぬくこと、どこまでも趣味に徹することだ!

イギリスが晴れると・・・・・・(1972)

自分のことも満足に見究められないくせに、
ひとのことをとやかく云々できるほど、
おまえさんはゆとりのあるご身分なのかね?

詩人論以前(1975)

・・・今もゆとりはないが、
数年前と比べれば、まだ、精神的にゆとりがある。
しかし、ひとのことをとやかく云々はできない。naka

目と耳。
この双方を閉ざしただけでたちどころに消滅してしまうような現実に、
はたしてどれほどの意義があるのだろう。

密室の浄福(1978)

・・・

(・・・)ピルなるもの、
その医学的安全性はいったいどこまで保証されているのでしょうか。(・・・)この薬は女性の天与の生理的リズムを根底から狂わせるもので、はっきりいってひとつの環境破壊です。

ある夜の手紙(1977)

矢川さんの言葉の転記途中だが、医学的見解をDr. 崎谷ブログより。

ピル(エストロゲンとプロゲスティンの合剤)はエストロゲンおよび
コルチゾール作用のコンビネーションを持つ強力なストレス物質です。
(・・・)受精卵が子宮粘膜に着床しないのです。
これはエストロゲンやコルチゾールが
プロゲステロン(妊娠維持ホルモン)をブロックするから(・・・)
ピルは避妊(受精を防ぐ)ではなく、実際は中絶させている

Dr.崎谷ブログ

薬は、人の内臓にダメージを与え、農薬は、土にダメージを与える。
自然に対し行なわれている暴挙は、
人(支配される側)に対しても同じように行なわれている。naka

「発達した大脳前頭葉をもって自然のしくみをあばきだし、
それを自分たちの欲望の方向に向けて技術化し、
自然を、したがって生物の生存基盤を破壊してゆく」というのが
近代科学の常套だとすれば、その魔手は当然、
人体というミクロコスモスの内部にまで及び、
外なる自然に対して行われたとおなじことが、
医学の進歩の名においてわたしたちの内なる自然に対しても
行なわれつつあるであろうことは、素人目にも見やすい道理

ある夜の手紙(1977)

妊娠の不安からの解放(・・・)元凶はピルです。
それと、もひとつ、子宮内挿入式の半永久的避妊器具です。
こうした便宜的処置によりひとたび子宮が人工的に石胎化されたとき、
男たちはこの不毛の地へむかって、
それこそ際限なく種子をまきつづけることができます。(・・・)
女陰とは、
もはや生命の神秘やおどろおどろしい闇の力をひめた謎の領域ではなくて、反応ゼロの画一化されたコンクリートの廃墟にすぎないのでは(・・・)
彼らは人並み以上に男としてふるまってよいのです。
あらゆる生命現象の軽視がここからはじまります。
自然への畏敬がいつのまにかわすれ去られ、
己の行為の結果や相手の条件への配慮がしだいに失われます。(・・・)
ロゴスとういものはペニスのすることを模倣している(・・・)
雄々しい断念や抑制や、古来のあらゆる精神的美徳は地におちて、
のこるものはただ、
企業のあくなき利潤追求や科学技術のやみくもな暴走など、
もろもろの近代的諸悪のありようと奇妙にもぴったり一致する(・・・)
女性の側にしてもおなじことです。
妊娠の恐怖からの解放は、生の喜悦の放棄にもつながりします。

ある夜の手紙(1977)

女性が抑圧されている社会では男性もまた歪曲されている

透明と聡明(1980)


【この世界】について何かを知ったからといって、
何も出来ないのであれば、どうしようもないだろう、という思いもある。
【この世界】を知れば知るほど、ただただ、気分が重くなるだけだ。
それでも、生きている以上、何かをしないわけにはいかない。

この本に当てられただろうか。
「人の考え」が書いている本は、力になることもあれば、
力を奪うこともある。
そして、哲学や思想まで至った「人の考え」は、
人を殺すこともできる、だろう。対象が、他者か自分かは分からないが。
権力層が実施している優生学は、他者を殺すだろう。

松岡正剛さんが千夜千冊で書かれていたのは、
「少女の真骨頂は、不言である。」ということであったが、
私の場合、いつも「対・権力」という話になってしまう。naka