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ジェンダーと代替医療の関係

代替医療と女性の関係について、ジェンダーが関連しているという記事や論文をいくつか見たので、書いておこうと思う。

アロマオイル、サプリメント、ヨガ、瞑想、ホメオパシーといったものは女性に人気がある。科学的に効果があるとされているものとそうでないものもあり、最近はアロマとサプリメントはマルチ商法の商材にもなっている。

代替医療の歴史は古くからあるが、60年代のカウンターカルチャーとフェミニズムの機運が結びついたオルタナティヴ・ヘルスムーブメントから現在の女性向けの代替医療文化が形成されてきた。

代替医療は、健康や快適のためにあらゆる選択肢が提示するが、それは可処分所得の高い女性に向けてのビジネスだ。害はないかもしれないが、効果的な治療法へのアクセスが遅れる可能性がある。

それでも必要とされるのは、伝統的な医学が家父長制的だからでもある。そこからの逸脱として代替医療が女性に支持されているのは、医療のジェンダーギャップで女性の心臓病や生殖関連の研究が大幅に遅れるなど、女性が社会の多くの場面で「他者化」されてきたことと関係がある。

また、代替医療が盛んなアメリカは従来の医療システムへの失望もあいまっている。

東洋の漢方や養生文化とやや異なるのは、個人的な問題や疎外感を解消するもので、それが商品化されているのが特徴的なところ。

代替医療は自己啓発に似ている。新しいヘルスケアの実践が、古い規範を変える挑戦につながる。さらに治すだけでなく癒すというケアが備わっている。
女性が自分の身体について知り、管理することは、フェミニズムが密接に関与するリプロダクティブ ヘルス・ライツ(性と生殖における個人の自由と法的権利)と結びついている。

70年代にフェミニズムとヘルスケアが合わさったときの極端な動きとしては、女性を無視し、支配し、傷つける男性優位の医療への反発として妊娠しても病院に行かなかったり、自宅出産をする人も現れた。

個人的なことは政治的なこと」という第2波フェミニズムのスローガンは、個人主義的なヘルスケアとして親和性の高い代替医療と接近する。

長く家父長制で「他者化」されてきた女性だが、古来から女性はヒーラー、助産師などで、医療の現場で重要な役割を果たしてきた。特に助産婦は、ハーブや民間療法の知識を持つだけでなく、堕胎薬の調合、避妊効果のあるハーブの栽培、出産の補助など、女性のリプロダクティブ・ヘルスを司ってきたという。しかし能力を持つため魔女として迫害された歴史がある。

非科学的な魔女術(​ウィッチクラフト)を実践するフェミニズムの流派もある。周縁化された女性を象徴し、エンパワーメントするものとして、あらゆるSNSであらゆる世代が参加するコミュニティが形成されている。

@okaries

What are pentagrams and pentacles?

♬ original sound - laura

健康の根幹に関わる「医療」の本筋ではなく、育児や家事など価値の認められがたい「ケア」が女性の役割とされてきた。

自然やスピリチュアルな原理で、女性の個人的なニーズと社会的、環境的なコミットメントを実現できるかのように謳う代替医療は、社会での立ち位置に左右されず、自己の価値、受容、理解を促し、精神的な変化を実践できる。

代替医療はカリスマ的なセレブリティのブランドが提供する主力な商材だ。フェミニズム と代替医療のかけ合わせは、女優のグウィネス・パルトローのブランド「Goop」の事業展開が象徴的。
Netflixで番組になり、医療の恩恵を受けてこなかった女性や、医療では解決しがたい慢性痛などの悩みを持つ女性たちから支持を得て企業の評価額は2億5000万ドルになっている

「Goop」では積極的に性に関する商品を販売している。24時間以内に完売したバイブレーターも、実は代替医療としての歴史がある。

もともとバイブレーター は20世紀初めから、家庭療法の家電として背中や足の疲労、鼻づまりなどに、あらゆる年齢層の人が家庭で使ってきた
標準的な医療ではなく、代替医療の機器だったものが、時代の変化で性的な用途になり、女性をエンパワーメントになり、Sex-tech産業は2024年までに1,220 億ドル規模に成長すると見込まれている。
代替医療とジェンダーのかけ合わせは、時代を巡っても続いている。


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画像:Wikiwand Electrotherapy (cosmetic)より

若く、ホワイトカラーの職業に就いている、ある程度教養ある女性が代替医療に傾向しているという記事では、女性は男性の約3倍、代替医療を取り入れていると書いている。

健康や病気に対する個人主義的なアプローチは、実害につながる場合もある。健康の課題を解決することよりも「自分は健康のために何かをしている」という安心感や、自己をコントロールしている自己啓発止まりになる。

しかし、代替医療を享受する女性たちを、非科学的なものを信じる残念な人として扱うことは、これまでの女性が置かれてきた歴史や、現在も続く状況を軽視することになる。

Photo by  Evie S. on Unsplash



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