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女性誌の定義する「女性像」はどうなってるのか〜2021年夏篇〜

美容院に髪を染めに行くと、ドサっと色んな年代の女性向けの雑誌を積まれて黙々と読む。
時間つぶしにパラパラとページをめくりながら「ヘ〜最近はこんなことも取り上げるのか」と思うものもあれば「2020年代にその感覚ヤバくない?」というものまで色々ある。
髪を切りに行く「女性」の年齢も職業もさまざまだから、「女性誌」も多様で、情報を得ながら世相を読んでる気分になる。
いつもは美容院でなんとなく時代の気分に触れて終わりだけど、備忘録としてKindle Unlimitedにある女性誌に目を通して、思ったことを書き残しておこうかなと思う。

「女らしさ」が社会的役割で変わってきてるなかで、雑誌が掲げる女性の理想像も変わってきているのか、個人的に引っかかったところだけピックアップしてみた。


MORE

媒体資料概要
20代の夢と可能性は無限大!そんな「のぼり坂OL」のバイブルです。
ファッション、美容だけでなく結婚、マネー、健康、料理……全方位で応えるコンテンツに定評あり。右肩上がりのWEB「デイリーモア」での拡散もお任せください。最強モデル陣と全国区のMOREブランドで、情報を確実に深く伝えます!(22〜27歳の女性がメインターゲット)

主要な読者は転職をしたり、結婚出産も見据えた人生設計し始める20代半ばが多いMORE。
ファッションが職場での自己演出として女性誌特有の「着回しコーデストーリー」がある。プロフィールは、電機メーカーの宣伝部勤務の26歳。リモートワークのあるホワイトカラーに就き。3年付き合った彼氏と別れて新しい出会いを探している設定。

コーディネートには以下のようなセリフがセットになっている。
「彼と別れてすぐ男の人紹介される私って、チャラくない?」とアリサに話してみたら

昨日のプレゼンの反応がイマイチだったうえ、たまっていたストレスが爆発して、会社をズル休み

女性誌の着回しコーデを奇妙な設定でネタに走った『CLASSY.』よりはまともだった。


ViVi

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カジュアル・大人ギャル系雑誌。読者は『誰よりも早く流行を知りたい、それを着こなしたい、いいと思ったものを周りにも発信していきたい』女のコたち。人気モデルが着こなす掲載商品がとにかく売れる! と定評があるのも、それを裏付けている。ファッションの守備範囲はハイブランドから109ブランドまでと幅広く、コスメも同様。次の流行をリードするViViと読者たちのパワーに注目。

「国宝級イケメン」特集やViVi専属モデルによる「女の子のための水着グラビア」など特定のトレンドよりも個のカッコよさやかわいさを愛でている。「ぎゃるの時代、きてます。」ではLAセレブも韓国ガールも"ギャルみ"が共通言語。1990年代後半から脈々と受け継がれるギャル文化とギャルのブレなさを改めて学んだ。


ハーパーズ バザー

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世界29地域で発行される世界有数のファッション誌『ハーパーズ バザー』は、いつの時代にも共通する、女性の普遍的な美しさを、流行だけにはとらわれない独自の審美眼で表現し続けています。ファッション、ビューティ、旅、リビング、アートなど、厳選された情報を美しいビジュアルとともに発信していきます。
あらゆる世代の女性たちのライフスタイルに必要なエッセンスを、斬新なビジュアルと読み応えのあるテキストで発信。メディアが多様化し雑多な情報が溢れる今、独自の目線で厳選した“ファビュラスなスタイル”をお届けしていきます。

フェミニズムが服や美容と当たり前のように並列で語られている。
「大人目線で韓国カルチャー最前線」特集では、K‑POP、フェミニズム文学、純情漫画、コスメを紹介。
アルゼンチの86歳のキルト作家、フェミニスト活動家の女優である83歳のジェーン・フォンダ、68歳のイザベル・ロッセリーニと誌面に登場する女性たちの年齢が高い。
サスティナブル系コスメの記事の前段では、調査機関資料から「消滅可能性都市」「世界の二酸化炭素排出量」「年齢別基幹的農業従事者」のグラフが載る。コスメをカタログ的に並べている説明にこういうものが紹介されているのは初めて見た。
ただ、主要先進国の中で日本の男女間賃金格差は最も高いと言われているが、この雑誌に載っているブランド品を買える女性はどれほどだろうと思ってしまう。


MAQUIA

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創刊16周年を迎えたマキア。既存のビューティ雑誌とは一線を画し、人生を明るく豊かにする美容のポジティブなパワーを最大限に感じられる誌面づくりで勝負します。本誌・オンラインとも時代の変化とニーズに敏感に、読者のリアルと向き合う多彩なコンテンツが持ち味です。
(20代後半~30代の女性がメインターゲット。40代の女性も多くみられる。)

目次を見ると「私にちょ〜どいい美容」「今、私のキレイが動き出す。」「ALL塗り試し!私が語る、美人マスカラ」「私のいいとこ伸ばすスキンケア」「河北裕介が提言受賞コスメで広がる『私』の可能性」「あの人の私ベーシックをつくるMYベスコス」とこれでもかと「私」だらけ。
美容が徹底して自分のケアのためというメッセージが目立っていた。


Precious

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キャリア世代のリアルラグジュアリー誌。
Preciousブランドは、豊かな時間・空間を過ごすための「実⽤的なラグジュアリー情報」をお届けする、日本でNo.1の読者&ユーザー数を抱えるラグジュアリー&モードメディアです。
ファッションや美容、インテリア、お出かけ、スイーツ&レストラン情報などを、上質で美しいビジュアルとともに、丁寧にお伝えします。(30代後半から40代の働く女性をターゲット)

目次に並ぶ言葉は「大人」が多い。「大人の洗練流儀」「エレガントな大人の手元がこんな時計だったら…」「今大人が目指すべき」「大人の毎日を彩る」。他にはポメラート、ハリー・ウィンストン、ルイ・ヴィトン、ボッテガ・ヴェネタなどブランド名が多い。
冒頭はSDGs連載「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」。白い服や小物のページに挟まれる川上未映子のエッセイ「色以上の、白」。「マネー学」特集では貯蓄ではなく利他を切り口にインパクト投資、ESG投資、クラウドファウンディングの応援など紹介。
日本の女性向けの「ラグジュアリー」が成立してることはよかった。


GINGER

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コンサバ・キャリア系雑誌。可愛いだけのファッションに違和感を覚え、自分スタイルを築き始めた働く30歳の女性に向け、見るだけではなく読むことから始める、ファッション、ビューティ、ライフスタイルの新定義を伝えるファッションマガジン。

他者目線があまりなく「私が惚れた♡コラボアイテム」「私をときめかせる最愛ワンピース」など自分軸が目立つ。
自己啓発的な読みもの「“風の時代”の幸運アクション12」では、「結婚がゴールだと思わないこと」共感の時代なので「話し方に注意すること」など、スピリチュアル風味がある。
西野亮廣の特集ページに幻冬舎らしさを感じた。


with

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恋も仕事もわたしらしく
おしごと女子応援バイブル
「なりたい自分」を叶えるために、仕事もおしゃれも自分磨きも欲張る20代女子がターゲット。ファッション・美容をはじめお金・マナー・結婚など、「今知りたい!」すべてが詰まっています。

「可愛い」がキーワード。「一番新しい"可愛いの教科書"」「新しい可愛いのカタチ」「今欲しいのは、可愛いだけじゃなく"有能"な服!」「新世代の"カワイイ"を作るのは」「『かわいいOL(仮)』ジャーニー」「サマーワンピ"可愛いものだけ"20」「白石麻衣まいやんと"新しい可愛い"を探す旅」。
SDGsを学ぶ「サステナ知識」や、ファッションも環境に配慮したアイテムなど。着回しコーデは『メンタル強め美女白川さん』コラボで、コーディネートに付けられるセリフは、意識高めだけど他者に承認を求めない。
「SNSで毒を吐くアンチコメが多い時代。私は『好き』を伝える人になる♡」
「『心の美容ノート』を書いてまとめる時間がなんとも至福♪」

with誌の創刊40年の歴史を振り返った「『かわいいOL(仮)』ジャーニー」は、量産型かわいいや女子力を過去のものとして提示している。


GISELe

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自分の「好き」に忠実で流行に左右されすぎず、自分のスタイルを確立した、 20 ~40代のファッションが趣味のような人に向けたファッション雑誌『GISELe』。 年齢・職業などで的を絞らない「1テーマ掘り下げ型」の編集方針で、 流行を押し付けるのではなく、その時々の新しさを組み合わせた 独自のシンプルスタイルを提案し続け、『GISELe』の世界観を確立しています。 ファッションに特化しながらも、毎号テーマに不随したヘアメイク等の美容企画も提案しています。 世界のファッショ二スタのトレンド情報は毎月掲載。 常に今と先の気分を的確に読み取った、 必要な情報だけを「ここにしかない」一話完結型のトピックスで毎月お届けしていきます。 

日本の出版社である主婦の友社から発行され、日本でのみ販売されている商品ばかりだが、モデルがほとんど白人女性の不思議な雑誌。
着回しコーデもセリフはなし。「パンツスタイルのインスピレーション」にコラージュされているストリートスナップの女性も全て白人女性という徹底ぶり。
掲載されている情報よりもそればかり気にして読んでしまった。


まとめ

美容院のように飛ばし読みせず、雑誌をちゃんと読むのは久しぶり。
今や、雑誌というパッケージがなくてもファッション、美容、ライフスタイルの情報がいくらでも入手できて、消化する可処分時間も足りなくなってるが、きちんとコンセプトを立ててテーマに沿って情報設計されている雑誌は面白いなと思った。

どの雑誌も昔よく見かけたような「モテ」という言葉が見当たらなかった。(withの40年振り返り特集だと2010年代後半が結婚できる女子力ブーム)
でも、女性誌特有の「OL」「女子」という言葉の多用に、女性の規範が当たり前のものになっているところに、閉じた世界観を感じた。
女性誌がいつの間にか他者評価ではなく「自分軸」になっていったのか気になるが、自分磨きには他者評価が織り込まれているからこそ、SNSの処世術も一緒に掲載されているのだろうなと思った。
女性誌の提示する世界観に違和感を覚えるのは、自分がそこの客じゃないからでもあるし、閉じた世界を作っている側が世間ズレしている可能性もあり得る。
ただ、女性誌が掲げる理想像は、女性たちの欲求や願望の仮説で勉強になるので定期的に色んな種類の女性誌を読もうと思う。


Photo by Les Anderson on Unsplash

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