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エッセイ:「メスガキ」の乱用ダメ。ゼッタイ。

高校2年生だっただろうか、薬物についてのセミナーを受けたことがある。テスト明けの学校全体が弛緩している空気の中、強制的に受けさせられる恒例の行事だ。

今更かよ…と半ば寝るためにでかい教室に集まった我々。
しかしそこで行われたセミナーは、教科書的な「タバコで黒くなった肺」とか「薬物中毒者が描いた絵」をまるで世紀の大発見みたいに見せつけるこれまでのモノとは確実に、気合の入りようが違った。

実際に薬物乱用によって苦しんだ過去を持ち、今も更生に励んでいる方々が、目の前に登壇してくださったのだ。そのリアルな体験談は今も強く心に残っている。

彼は凸凸と語る。
「特別なクスリで依存症になったわけではない。友達に勧められて何気なく咳止め薬を一度に大量接種したら、それが忘れられなくなってしまった」……恐ろしい。


サイケの世界に躊躇なく、悪意を持って飛び降りたのではない。
まるでスリップダメージのように小さな、何気ないミスが大きな脱線へとつながった。目の前で語られる今も戦いを続けるみなさんのエピソードは印象深いものだった。


小さな齟齬から大きなミスのうねりへと繋がっていく様子、そして中毒性のある危険なモノへの耽溺。
私はこのセミナーでの話を思い出すたびに………………………………





今日も乱用される「メスガキ」概念について思いを馳せずにいられない。


驚いたかもしれないが、大マジである。メスガキというあまりに中毒性のある概念に侵されて、私たちインターネットのオタクは少しずつその概念の基幹を見失っているのではないか?

僕ァもういい加減ウンザリなんですよ。
バズを狙ったTwitter漫画家が「同級生のメスガキにイジられ続けてたら、いつの間にか結婚してました!」って筋書きの粗製濫造2P漫画を量産するようなインターネットには。


オタク!こんなのアンタらが2008年から散々斜に構えてバカにしてた、青臭いプロポーズのコピペとほとんど同じじゃないのか?

オタク!「仕事で疲れて、もう日常アニメしか受け付けないんだよね〜」って共感性の高いため息ついた数年の間に、ついには臭いと感じるものに対してNOを表明する牙まで抜かれたのか?

オタク!「本当はバトルアニメ見たいんだけど、疲れてるから仕方なく日常系とか見よ…」みたいなニュアンスを無意識に醸し出してるんじゃない。

大体俺は、一切疲れてない日も日常ギャグアニメば〜〜〜〜〜〜〜っかり見てるわ!!意思を持って堂々と楽しむ方が絶対に健全!
堀江貴文も言ってたよ、日常アニメは好きだから見るの!



…私怨でエキサイトしたので一旦本筋に話を戻すと、「メスガキ」はちょっと最近あまりにも広義に使われすぎなのではないか?という疑義を呈したいのです。


↑ロリに造詣深い8歳女児さんによるこちらの記事は、「メスガキ」について的確にツボを押さえたまとめられ方がなされていてオススメ。オチも含め、自分のような凡才がひっくり返っても敵わない名作なのでぜひご一読を。


グリムアロエ。メスガキの旗手。

女児ニキ(対消滅)の記事でもメスガキを流行らせた契機として取り上げられているグリムアロエ。
私もグリムアロエが今日における「メスガキ」概念のキーとなるキャラクターだと考えています。

グリムアロエは2017年から『クイズマジックアカデミーTHE WORLD EVOLVE』に登場するキャラクター。健全な少女「アロエ」と対をなす存在として生まれています。
ですから彼女の年齢は11歳。大抵のオタクよりも年下のロリですから、非常に失礼ながら「ガキ」と称されるには相応しい年齢。

この年齢が重要なんですね!11歳とはまさしく子どもと思春期の波打ち際に立つ年齢。

大人を手のひらで転がしてやりたいという見栄と、まだ誰かにかまってほしいという子どもらしい寂しさが入り混じる稀有な時期。


この幼いながら岐路に立つ年齢の少女に、どこか根底に愛がある嘲笑と罵倒をされるシチュエーションの良さたるや。

「メスガキ」の真髄はここにあるのです
この注意は幾度となくしますが、自分をイジってくる生意気な年下=「メスガキ」では必ずしもない。


グリムアロエの活躍によって浸透していった「メスガキ」概念。
オタクに訴えかける強烈な魅力と、構文的に用いての改変が容易なキャッチーさを武器として、どんどんインターネット上で性力(せいりょく)を広げていきます。

そのあまりの流行りっぷりは本質から意味を乖離させるには十分すぎたと言えるでしょう。
グリムアロエによって生まれたメスガキ概念は、グリムアロエ自身の強すぎる色香によって次第にミームと化して破綻を迎えます


例えばこちらのPVでお馴染みの『イジらないで、長瀞さん』。この「初心者向け」と題されたPVの「上級者向け」をR15くらいにしてdlsiteで出して欲しい。

本当に。言い値で買うから。


そんなPVから魅力満載の本作、マガジンポケットでの正式な連載開始は2017年で、奇しくもグリムアロエによるメスガキブームと符合します。


割と近い時期にアニメ化された縁もあってか?『宇崎ちゃん』と並んで、メスガキ文脈で語られることが多いこの作品。
ですが、安易にこの作品がメスガキブームから生まれた…などとは論じられません。


なぜかといえば、この作品は正式な連載の前にpixivで2011年から掲載が始まっているから。最古の作品の時点で既に様式は完成されており、被虐性癖の方は必見の内容。

人格から容姿まで、自分にまつわる要素の全てをを徹底的に否定された挙句に愛をちらつかされ、先に待ち受ける破滅を示唆されながらも男子が自ら望んで交際に進んでいくシチュエーションがめちゃくちゃエロいです。


そんな被虐性癖の救世主であった『長瀞さん』はこれでは人気が取れないと判断した編集部の意向からか、正式連載序盤からどんどんデレが多くなっていく。

みなさん見てください。
このコメント欄こそが、マゾ向け漫画を一般向けに塗り替えようとする卑劣な同化政策が行われている現場です。
長瀞さんに平易なイジリを求めるなんて、ジョジョに伏線回収求めるようなもんだよ。向き不向きがあるだろ。


アニメ2期で取り扱われた範囲なんて、もはや換骨奪胎の一言!先輩を虐めて嗜虐の快感に酔いしれていた、あの古典的な長瀞さんの姿は画面上には無い。

そこにはもはや、オタクに都合よく惚れて嫉妬してくれる…ラブコメのステレオタイプな後輩ヒロインが居るだけ。もちろんそうなってもビジュアルが100000点なので可愛いのですが、やはり虐待癖という稀有な個性が失われたという印象は避けられない。
商業化された同人ヒロインの悲しき徒花


…また呪詛が漏れ出てきたので閑話休題しましょう。

先ほど例に挙げた『長瀞さん』、そして少し文中で触れた『宇崎ちゃん』は兎角メスガキ文脈で語られがち…なのですが、やはり私にとってのメスガキではない。


高校生と、大学生……「ガキ」と言うには思春期を超えている時点で大人すぎる。

長瀞さんも、宇崎ちゃんも、いたずらっぽい性格でこそあれど、やはり大人なのです。
彼女達の持つ魅力が先ほど述べたような子どもと思春期の境界に立つ「メスガキ」独特の魅力と合致するとは言えません。



『水星の魔女』のセセリアさんも「メスガキ懺悔室」というパワーワードを引っ提げ、現在話題沸騰中。
しかし彼女もこれまでと同じ理由で私の定義するメスガキではないことはもうお分かりでしょう。

そう。あくまで彼女はいじりがいのある先輩をコケにして楽しむ、太ももがエロすぎる生意気な後輩に過ぎないのです。


彼女は決闘委員会に所属しているくらいですから、世間の綺麗じゃない面をたくさん知っているでしょう。もしかしなくとも、年齢以上に大人びているえっちな人なのは間違いない。

何度も繰り返すようですが、「子どもと思春期の境界」を彼女はとっくに越えて大人側にいます。それはそれでエロいが。
少なくともメスガキではない、私がそう判断した。



これは上で例に挙げたヒロイン達全員に適用できる視点ですが、やはり「愛ゆえのイジリをする後輩」という要素を見出すとオタクはメスガキと呼びたくなってしまうようです。

確かに上の作品たちほど有名ではないマンガにも、ああいった「いじり後輩系」ヒロインは最近多い。
オタクがこんなにも美少女にイジられたがってる時代あったんだろうか。一時代を築いた暴力系ヒロインはこんなにも淘汰されているというのに。


オタクたちの気持ちは分かる。「イジってくる後輩系ヒロイン」とか額面通りの説明をするより、「メスガキ」と称した方が圧倒的にネット受けが良いから使いたいってのは分かるんだ。

ここからはもはや「メスガキ」論ではない。
俺含むオタクたちの、完全に個人的なプライドの問題なのである。「ネットウケがいいからってキャラやストーリーに安易なレッテル貼りをする」ことに屈するのか?

思えば『水星の魔女』は初めから安易に「実質ウテナ」とか言われていたし、安易な言葉のキャッチーさにオタクが屈するのかを常に試してくる作品である。


言ってしまえばこの「メスガキ」概念すら個人的な思考にすぎない。
多くの言葉もそのような進化を遂げたように、メスガキという言葉もまた多くの人々に使われていく中で、後天的に意味を獲得していくのでしょう。それもまた世の中。

ですから私は一切、「俺のこのメスガキ観に殉じろ!!!」なんて思っていない。

でもオタク達がネットで話題になった「キャッチーかつ本質を捉えていない」フレーズに惑わされる様は見てて悲しくなる。
お前らは自分の意思でキモいことが言える。もっと無意味にオタク用語の定義を考えたりしろよ!そういう無意味な思考を捨てたらだめだ!

文学フリマでは、「萌え」の定義を考えよう!と100P超えの同人誌を出している人たちがいた。この萌えが死につつある今だからこそ、である。
なんて凄い人たちなんだろう、と思う。
絶対に必須かと言われればそうではないことを、自分なりに求道し続けるオタクはカッコいいぞ。心なしかブースで本を手渡しして下さったとき、光ってたもん。


こう書くと、この記事って「メスガキ」云々というよりも大勢に流される癖が付きつつある「オタク」という生き物に対する「祈り」だったのかもしれない。それに気づけただけでも、この記事を書いた価値があった。



最後に言いたいことはひとつだけ。

「生意気に心の性感帯を刺激してくるエロい後輩キャラ」を総じてメスガキと括るな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!、!!!!、!!!!ネットのキャッチーなフレーズに惑わされず、もっと繊細かつ芯を持って己の世界を保て!!!!!!!!!!!!!!!お前らはそういうことが出来るキモいオタクなはずだろ!!!!!!!!!、!!!!!!ネットの偉い人の引用じゃなくてお前のキモい表現をツイートしろ!!!!!!!!!!!!こら!!!


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