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映画「沈黙」宣伝記事への顔本のコメント欄が酷い件。

こちらがその宣伝ポストなのですが。

もちろん私もまだ作品を観てないので、なんとも評価しがたいところはあるのですが、それにしても、いや、遠藤周作の原作って書いてありますやん…という作品の宣伝記事に「イかれた反日プロパガンダ映画」とかコメントしちゃう人が散見されるというこの世の地獄感をリアルに味わえるので、ほんとFacebookって苦手です。

匿名のSNSなら「きっと煽り垢だ」「一人でいくつもこんな毒アカ作ってスクリプトで連投しているのだ」などと信じこむことで「世の中そんなに狂ってない」と思えるんだけど。

何事にも「反日プロパガンダ」というレッテル貼りをしてる人たちが、スコセッシが日本人の役者たちを「東洋の神秘」ぐらいの勢いで(むしろナイーブすぎるほど)ベタ褒めしてることを知らないのは、不幸せなことだなと思います。私なんかインタビュー映像みてて逆に「スコセッシ、いくら宣伝でも褒めすぎ」「日本ごいすーファンタジー持ちすぎ」と思ったほどなのに。

この映画は企画の存在を知って以来、何年も楽しみにしてたんで当然見に行くつもりですが、にしてもキチジローに窪塚洋介使うとは思わなかったなー。でも、彼のプロフィールを知っててキャスティングしたんだとすれば「スコセッシ、やるな」って感じする。特に好きな俳優さんではありませんが、彼自身の辿ってきた芸能人生とキチジローのキャラクターは、なんとなくシンクロするところがあると思う。そして塚本晋也監督の「昔の日本人」ぽい佇まい素晴らしい。若い役者さんは、どう頑張っても足が長すぎたりして時代物に向かないことあるから…

とにかくそんなことも遠藤周作の原作ストーリーも知らずに「未開の時代の日本を差別的に描く映画!反日!ウェーイ!」って盛り上がってるのって、「やったぜ、オバマケアを潰してやったぜ!俺たちにはACAがあるから大丈夫!」って言ってた人たちを見てるようで、なんともはや。日本の監督が日本語で映画化できなかったのは、映画のリアリティを考えたら少し残念だなぁ、とは原作ファンの私も思うけど。なんせ台詞が英語になっちゃうし。

それでも「転び」と「救済」は、スコセッシの映画で何度も取り上げられたモチーフなので、彼が原作に惹かれたのはすんなり納得できるし、なので当然映画としても酷いことにはならない気がする。

昔、伊丹十三がヤクザ映画を撮ってスクリーンを切り裂かれたことがあった。あのときスクリーンを切り裂いたのはヤクザだったけど、この先イデオロギーに基づいてスクリーンを切り裂くことになるのは、ヤクザでも活動家でもない、Facebookに我が子の写真や楽しい旅行や美味しそうなお料理の写真を投稿している、ごく「普通の人たち」になるんだろうな、と思う。リアルホラーの時代を生きていく僕ら。書いてて口の中酸っぱくなりますが。

右も左もポスト真実だけを信じる今のご時世に、「信仰」について深く内省する原作が映画を機会に再読されるのはたぶんいいことだと思う。でも求道者としての遠藤周作のプロフィールも知らずに的はずれな批判をする人もいっぱい出てくるんだろうなぁ、と思うと、アマゾンのレビュー欄を見るのもちょっと怖いのだった。週末公開。

#映画 #沈黙 #Facebook #ポスト真実 #世の中のこと #徒然つぶつぶ草

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