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240730:この世界は女の子には残酷すぎる(映画「シャーリィ」)

TOHOシネマズの鑑賞ポイントを使って、映画「シャーリィ」をみてきた。あとから考えてみたら火曜日はTOHOシネマズの会員お得料金デーだったので、ポイントを無駄にしてしまった感はあるけど、それはまぁいいです。

予告編でみた時には、「『シャイニング』っぽいサイコスリラーかな?」と思って、見たい映画の中での優先度をさげた。そのあと公式サイトで山崎まどかさんのレビューを読んで、「やっぱり見ようかな」と思って予約をした。予約してから「こんなの、うつの時に見る映画じゃないのでは?」「観るならもっと能天気なエンタメ映画観るべきでは?」と自問して後悔したり、さんざん葛藤したけど、意を決して上映時間ギリギリぐらいだったけど、どうにか映画館に滑り込んだ。

映画が始まってから10分ぐらいは「つらい」「帰りたい」と思って、この映画を選んだことを後悔していた。頭の中をフォークでキリキリ引っかかれるようなモラルハラスメント、セクシャルハラスメントの連発。過去に自分が経験したさまざまなハラスメントがフラッシュバックみたいに頭を過ぎる。しんどい。これを映画館ではなく動画配信で見ていたら、即消したと思う。

でも「映画館で途中で席を立つ」という度胸がないため、息も絶え絶えという感じで見ているうちに、だんだん映画に引き込まれていって目が離せなくなり、後半では不思議なカタルシスまで感じてしまった。

これは、(とても個人的なことだけれど)自分自身がDV被害の経験者で、それからすでに20年以上の月日が経過しているからだろうな、と思う。なので直近でDVやモラルハラスメントの被害にあっている人にも鑑賞をすすめるられるか、というと、わりと際どい感じがする。見ていて思い出すことで、苦しくなってしまう人もいるかも。でも、さっきも書いたとおり、経験した人だけにわかるリアリティやカタルシスもあると思う。なので、勧め方がすごく難しい。

激しく物理的な暴力表現があるわけではないけど、精神的な抑圧による生々しい虐待、マインドコントロールの場面や抵抗の場面が続き、どこまでが正気の世界でどこからが妄想なのか、誰の頭の中の世界が描かれているのか…ということも、次第に混乱してわからなくなっていく。登場人物の支配と依存の天秤は、時間の経過とともに目まぐるしく上下して、爆弾ゲームのように、一瞬で力関係が入れ替わる。

その緊張の中で生まれる奇妙なシスターフッドというか、女たちの共犯関係があり、愛と裏切りと憎悪、抵抗と諦観と小さな希望がある。この物語の世界をクリエイターの狂気と受け取るか、抑圧された女性たちの連帯と受け取るのか、受け取り方によって、たぶんその人が生きてきた人生が少しわかる、そんな作品だった。

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