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ラ・ラ・ランド観てきた。

東京の西の方に出かける用事があったので、立川のシネマシティでアカデミー賞大本命と言われているミュージカル映画、ラ・ラ・ランドを観てきた。土曜の3時過ぎ、満員御礼。

▼ここから先はネタバレ含むので、観てない方は回れ右してください▼


で、感想ですが、なんでこれがアカデミー賞大本命なのか、全然理解できなかった。

撮影はすごくいい、音楽もオリジナルにしてはまあいい、ダンサー・イン・ザ・ダークほどではないけど。でも脚本が致命的につまんない。

単に「古くさいハリウッド・ロマンチック・ラブストーリー兼ご都合主義のサクセス・ストーリーだから」つまんない、と言うわけではない。クラシックなロマンチック・ラブコメでも、ご都合主義のサクセスものでも、何年何十年たっても人の心を揺さぶる映画っていうものはある。主人公たちが結ばれないのが不満な訳でもない。むしろほろ苦系は好きだ。

だけどこの映画、美味しい要素をてんこ盛りにしながら脚本が致命的にダメだった。何がダメってヒロインのキャラクター造形が、いまどきこれかよ?っていうぐらい古くさい。いや、古くさいというよりリアリティがない。感情移入できるキャラクターの魂がまーったく入ってない。

男のほうが周囲もドン引きするほどのジャズオタクでオタクっぷりを晒しまくる描写なんかは、ジャンルは違えどヲタとしてあるあるすぎて笑えたし、この男がどんな人間なのかが伝わってきて愛おしかったし良かったんだけど、ヒロインに関しては「なんだこの甘ったれた女は」という感想しか出てこない。

女優目指してるとか言いながら、ちょろちょろ端役のオーデション受けてるだけで必死に夢にしがみつこうとしてる描写なんかまるでないし、パーティー出かけちゃ次々と男に頼るわ大事なことからはすぐ逃げ出すわ、かと思えば捨てた男が迎えにきた程度ですぐ戻ってくるわ、いったい彼女の内側にどういう情熱があって女優なり脚本家を目指してるのか、男の何に惹かれたのか、そういう人としての感情になーーーーーーーんのリアリティもない

いつだって「たまたま」上手くいってるかそうじゃないかだけで気分を左右される甘ちゃんで、たいした才能も情熱もないような田舎娘が、身の回りの男たちに助けてもらってハリウッドでごっこ遊びして最後は偶然見出されて成功しちゃいました、しかも恩人の男との遠距離恋愛はわりとソッコーで破綻してまた男変えました、って話ですよラスト見たら。「ほろ苦い」とかじゃなくて単純に女が身勝手すぎて不快だったし心の中身がなーんにも伝わってこなかった。

男はこの女がいてもいなくても、きっと自分の夢を貫いただろう。だからキャラクターとして魅力的だ。でも女は男がいなかったら、女優なんかすぐ諦めて田舎の学生に戻ってただろう。なにそれ。ぜんぜん魅力的じゃない。

ラスト近くに唐突に出てきた叔母さんのパリ話で感動を掻っ攫おうとしてたけど(現に私の隣で見てた女性客がそこのシーンでもう身体を震わせてぐずぐずに号泣しておりそっちの方が映画より気になって大変でした)、いや、いい話かも知れんけど唐突すぎるし。女のよくわからん一人芝居の窓の外のエッフェル塔が伏線なんですよ!と言われても、いや脈絡なさすぎるじゃん?このシーンに至るまでそれが彼女を支えてきたような描写ぜんぜんないじゃん?って感じで、雑。雑すぎ。

男と女が惹かれ合うことについても、さっぱり理由がわかんない。彼氏持ちの女が言いよってきて男が引き摺られてるだけじゃんか。みたいな。それもこれもヒロイン側の、夢を追いかけてる人としての人間的な魅力がちゃんと掘り下げられてなくて、単にモブよりちょっと可愛い女の子、としてしか描かれてないせいだ。

往年のミュージカル映画を彷彿とさせるサービスシーンにアメリカの観客たちは萌えてるのかもしれないけど、だとしたらオリジナル見た方が絶対いいと私は思う。それらは決して色褪せない映画たちだし、主人公もヒロインも魅力的なキャラクターだから。恋人たちが結ばれないほろ苦ラストでも、ラスト違う道を生きていく2人の姿が心に染みる映画はこの世にはいっぱいあるのよ!

そんな訳で私、大ヒット映画ながらこれっぽっちもいいと思えず、モヤモヤしながら劇場をいったん出て、お口直しには同じ映画館でデヴィッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」の極音上映会を観てきました。これはもうホントに素晴らしかったんですけど、そろそろお出かけするので別エントリーで。

アカデミー賞の発表は今日でしたっけ。これ下馬評ではさんざん強いと言われながら賞とれないパターンじゃないかと思うんだけど、どうだろう。ゴールデングローブ賞のほうはとりまくりだったようですが。

私はホントだったらスコセッシの「沈黙」が圧倒的に作品賞だったと思いますね。テーマとして宗教が絡んでるのでノミネートすらされてないけど。

追記:名誉のために書き加えておくけど、役者はぜんぜん悪くない。ダンスもよく頑張った。ダメなのはあくまで脚本演出、つまり監督だと思う。

#ララランド #映画 #ミュージカル映画



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