【世界遺産検定対策問題・番外編】第45回世界遺産委員会について(後編)
世界遺産検定のシーズンですが、試験はいかがでしたでしょうか?
今回も引き続き、最近まで開催していた第45回世界遺産委員会をまとめていきます。
(再掲載)第45回世界遺産委員会開催にあたり
元々6月にロシアのカザンで世界遺産委員会を
開催予定だったのですが、
2月に発生したロシアのウクライナ侵攻で、
開催地変更の要請が出てきたため、
延期していました。
2023年1月に第18回世界遺産委員会臨時会議で
サウジアラビアのリヤドで
開催が決定しました。
その第45回世界遺産委員会で
注目すべきポイントを
ピックアップしましたのでご覧ください。
審議した遺産がほとんど登録
50件を審議して、登録47件、登録延期は3件
勧告は31件登録、9件情報照会、9件登録延期、1件不登録でした。
これは「情報照会」と「登録延期」の勧告だった18件のうち16件が登録に格上げ、
「不登録」勧告だった1件は一段階アップの「登録延期」決議になります。
これは登録前提の決議と受け取れます。
これは否定的な動きとして世界遺産の登録推薦段階で保全計画などの推薦書さえを書いておけばあとから保護計画を検討すればいいのではと考える国が出てきて、
プレリミナリーアセスメントの意味が薄くなるのではと考えられます。
一方で、肯定的な見方として、
ルワンダ初の世界遺産が今回誕生して、
世界遺産の多様性という「世界遺産の意義」が図られているといえます。
記憶の場という考え方
20世紀の戦争や人権侵害など歴史的な「忘れがたい記憶」を象徴した「記憶の場所」に関する推薦物件が3件登録されました。
ESMA 博物館と記憶の場:拘禁と拷問、虐殺のかつての機密拠点(アルゼンチン)
第一次世界大戦(西部戦線)の慰霊と記憶の場(ベルギー/フランス)
ルワンダ虐殺の記憶の場:ニャマタ、ムランビ、ギソジ、ビセセロ(ルワンダ)
「負の遺産」と似ていますが、
「負の遺産」は正式に定義がない一方で、
「記憶の場」は20世紀の戦争や人権侵害といった「近年の紛争」に関連して正式に定義されています。
「世界の記憶」は手書き原稿、書籍、新聞、ポスター、地図、映画・フィルム、写真、デジタル記録等の世界的に重要な記録遺産のことで、歴史的な出来事の記録に限定されていない点が異なります。
保護保全によって後世に残すべき不動産を世界遺産としていますが、
「記憶」や「歴史」は立場に応じて価値や重要性が変わりやすいため、
「顕著な普遍的価値」を客観的に証明するには慎重な検証が必要となるといえます。
追記 第54回世界遺産検定に出てきましたね。いくつか問題を作ってみたので後日ご覧ください。
パレスチナの世界遺産登録と紛争
古代エリコ/テル・エッ・スルタン:旧約聖書の世界観を反映した遺跡で、ユダヤ人遺跡だがパレスチナ自治政府が管理するヨルダン川西岸にあります。
登録の際はユネスコ脱退中のイスラエルが不服申し立て中ですが、
開催地がイスラエル国籍人の入国が認められていないサウジアラビアで、
イスラエルの代表などは特別な手続きで入国し
世界遺産委員会に参加したといわれています。
これはサウジアラビアとイスラエルの国交正常化による政治的な外交交渉があったのでは?
と推測できます。
ただ、パレスチナのエリコが世界遺産登録されたことに対して、イスラエルの代表は
「パレスチナによるユネスコの政治利用」だと非難し、このことをパレスチナは
「イスラエルがユネスコに戦争を仕掛けたようなもの」と批判しております。
https://www.palestinechronicle.com/fear-of-history-the-roots-of-israels-war-on-unesco/
この記事が出たころは、まだイスラエルが
パレスチナのガザ地区への攻撃を
始める前でしたが、
世界遺産委員会が開催された時にもすでに
イスラエルとパレスチナを含めた周辺のアラブ諸国との戦いがみられる状況でした。
いかがだったでしょうか?
世界情勢を知るうえで、参考になる内容も多く含まれていたかと思います。
今後の世界遺産検定でも出題されるテーマが
数多くありますので、より調べ学習を進めていただければと思います。
なお今回の記事は下記のサイトで取り上げた内容を一部加工して記載しております。
https://whc.unesco.org/archive/2023/whc23-45com-19-en.pdf
https://www.sekaken.jp/pdf/202309_new.pdf
本日も読んでいただきありがとうございました。
お相手は旅好きのなおゆーでした。
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