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バイオグラフィー -- 僕が失明するまでの記憶

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生まれてから失明するまでの記憶を、忘れないよう記録として書き留めました。 記憶に基づいた記述のため不正確な箇所や不鮮明な箇所があるかも知れませんが、一人の人間の生きた痕跡として、…
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#中学生

厳しい現実(僕が失明するまでの記憶 18)

 退院して家に帰った翌日、真新しい制服を着て登校した。そのはずなのだが、入学式の記憶は驚くほど霞んでいる。安全が保証された病棟の中で静かに過ごすのとは違い、環境も人間関係もリセットされたリアルでタフな状況を生き抜くほどに、僕の目は機能してくれなかった。

 確かに見えてはいるのだが、自分と周囲との間には中継されたテレビの画面を通して世界を見ているような距離感があり、映像に全く奥行きを感じられなかっ

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