死産を乗り越えて③
先生の口から放たれた言葉は、
理解はできるが、
その時の僕には一切理解することはできなかった。
「無頭蓋症といって、赤ちゃんの頭蓋骨の形成がされていない。どういうことかというと、お腹の中では生きていけるけど、外にでたら頭蓋骨が形成されていないわけだから、外の世界では生きてはいけない。出産と同時に赤ちゃんは亡くなるということだね」
この先生は何を深刻そうに話しをしているのだろう。
そういう状態でも、なんとかしてくれるのが医者でしょ?
きっとこれから、何かを対策を提案してくれるのだろう。
そう思っていた。
しかし、その後沈黙は続いた、、、
早く次の提案を言ってよ!
という気持ちとは裏腹に実際はそんな長くはなかった沈黙のあと、先生はこう続いた
「4ヶ月に入っているから中絶はできない。中絶はできないから強制的に出産をします。でもここではできないので病院を紹介します」
何を言っているんだ?この先生は
中絶?強制出産?病院を紹介?
子供はどうなるの?
「いや、先生頭蓋骨は後からまたできるんですよね?」
さっきの先生の言葉を無かったことにしたい!
そのような気持ちで質問をしました。
「できません。背骨からできて次は頭蓋骨が形成されます。今の時点で頭蓋骨が形成されていなければ、頭蓋骨ができることはありません」
「奇跡が起きてできるかも…」
「いえ、可能性はゼロです」
極め付けに先生はこう言った。
「無頭蓋症の選択は2つしかありません。今子供をおろすか、10ヶ月の間赤ちゃんをお腹の中で育てていき、出産と同時に死を選ぶか。お腹の中で10ヶ月もいれば愛着も湧きます。奥様の精神的ダメージもすごいでしょう。」
僕はなおそれでもその言葉を信じることができなかった。
選択肢は2つ?
どう考えても1つしかない。
「先生、本当にもう頭蓋骨はできないのですか?」
できると言ってくれ!
なんとかしてみます!と言ってくれ!
そんな思いも届かず、
先生は静かに首を横に振った。
僕と先生の最初で最後の診察は終わった。
④へ続く
美容師の価値を高め、美容師として多くの人に幸せをお届けできるようにしていきます。