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人を見つける、人を育てる -「成長」の哲学、江副浩正を中心に(3/3)

「君たちは22年の人生で先人が創った歴史を学んできた。でも23歳からは自分で歴史を創るんだ。リクルートならそれができる。一緒に歴史を創らないか」

江副浩正は、優秀な人材を発掘し、育成することを重要視していた。リクルートの情報誌ビジネスでは、創業当初から多くの学生アルバイトを雇用していた。また、新入社員の最も重要な仕事は、自身の出身大学で自分よりも優秀な人材や、周囲に一目置かれている人材を見つけ出し、接触することだった。

就職活動の時期になると、リクルートは東大赤門前の寿司屋の2階を3か月間貸し切り、可能性を感じる学生を招待する。そこで江副は学生を迎え入れ、次のように語りかけるのだ。「君たちは22年の人生で先人が創った歴史を学んできた。でも23歳からは自分で歴史を創るんだ。リクルートならそれができる。一緒に歴史を創らないか」

江副にとって、採用したい学生の面接は何よりも優先すべき事項だった。ある時、巨額の投資を決定する重要な取締役会と、採用したい学生の面接がダブルブッキングした。その際、江副は「僕は面接に行くから、あとは皆で決めておいて」と言って会議室を立ち去ったというエピソードがある。

なぜ江副は採用にそこまで力を入れたのだろうか。それは、彼が次のように考えていたからだ。

「マネジメントの才能は、幸いにも音楽や絵画とは違って、生まれながらのものではない。経営の才は、後天的に習得するものである。それも99%意欲と努力の産物である。その証拠に、10代の優れた音楽家はいても、20代の優れた経営者はいない」

江副は、経営の才能は後天的に身につけられるものであり、それは意欲と努力によって習得できると信じていた。そして、人事部には口癖のようにこう言い聞かせていたという。

「君たちは20年後のリクルートの社長を採用しているんだ」

さらに、江副は後継者育成の重要性についてもこう語っている。

「我社は永遠の発展を願っているが、それは後継者たちの力のいかんにかかっている。後継者の育成も、マネージャーの大切な仕事である。自分が脅威を感じるほどの部下を持つマネージャーは幸せである」

企業の永続的な発展のためには、次世代のリーダーを育成することが不可欠だ。そのためには、マネージャーが自分よりも優秀な部下を育てることを恐れてはならない。むしろ、自分が脅威を感じるほどの部下を持つことこそ、マネージャーにとっての喜びだと江副は考えていた。

江副浩正の「人を見つける、人を育てる」哲学は、優秀な人材の発掘と育成の重要性を説いている。意欲と努力次第で、誰もが経営の才能を身につけることができる。そして、企業の永続的な発展のためには、次世代のリーダーを育成することが欠かせない。この哲学は、人材が最も重要な資源である現代社会において、私たち一人一人が心に留めておくべき教訓だと言えるだろう。


松下幸之助氏も人材育成には特に力を入れていた
私は、ずっと以前でしたが、当時の年若き社員に、得意先から「松下電器は何をつくるところか」と尋ねられたならば、「松下電器は人をつくるところでございます。あわせて電気製品をつくっております」と、こういうことを申せと言ったことがあります。
松下

人間はあたかもダイヤモンドの原石のようなものである。ただの石はいくら磨いても光らないが、ダイヤモンドの原石は磨くことによって光を放つ。しかもそれは、磨き方いかん、カットの仕方いかんで、さまざまに異なる、燦然(さんぜん)とした輝きを放つのである。人間も同様で、だれもが磨けばそれぞれに光る、さまざまなすばらしい素質を持っている。だから、人を育て、生かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識し、それぞれの人が持っている優れた素質が生きるような配慮をしていくことが大切である
松下

“事業は人なり”といわれるが、これはまったくそのとおりである。どんな経営でも適切な人を得てはじめて発展していくものである。
いかに立派な歴史、伝統をもつ企業でも、その伝統を正しく受け継いでいく人を得なければ、だんだんに衰微していってしまう。経営の組織とか手法とかももちろん大切であるが、それを生かすのはやはり人である。
松下

私は、経営者には、2つしか仕事がないと思っています。一番大事なのは教育すること。経営者は全員、教育の担当であり、人事の担当でないとダメ。それが一番大事です。もう1つが利益責任。利益がなければ誰も幸福になれません。今日の生活があるのは、利益を上げてうまくビジネスをしているから。そのお陰で今、存在できているわけですから
柳井正

敎育はあまりやってないです。うちは分厚いマニュアルを用意するより、背中を見て勝手にやってくださいという放任主義です。
前澤友作


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