AIガバナンス本で1位

「AIガバナンス、本」で検索するとGoogleでもトップに、WebChatGPTでもトップに出てくるようになりました。ありがとうございます。

AI関連書籍は流行ってはいますが、生成AIの法的問題についての本が多い中、制御装置機械としてのAIからLLMまで幅広いAIを扱いつつ、管理ルールから下記のように関係者間のコミュニケーションまで幅広く論じた本はいまのところこの本だけではないでしょうか。ご興味持っていただければ嬉しいです。

第5章AIガバナンスの実践

5.1 ステークホルダーへのコミュニケーション

本章では、AIガバナンスを実践するための手順や、効果的な取り組みに焦点を当てます。具体的には、ステークホルダーへのコミュニケーションと継続的な評価と改善のプロセスを説明します。

AI技術は急速に発展し、企業や組織における業務利用が益々増えています。しかしながら、皆さんの周りにはAIの業務利用に懸念を抱く人たちもいるでしょう。これらの人たちと効果的にコミュニケーションを取るためには、まず彼らの懸念や反対の理由を理解することが重要です。

皆さんがAIの業務利用を推進する中で、どのような悩みや課題があるのでしょうか。技術的な問題や組織内での理解の違い、リソースの不足など、さまざまな要因があるかと思います。これらの悩みや課題を整理し、明確にすることが、対話の第一歩です。

リスク管理の用語ではこのようなことをリスクコミュニケーションと呼びます。正確な情報を、関係主体間で共有し、相互に意思疎通を図り物事を前に進めるための合意形成を得る手法のことです。

ChatGPTを使ってはいけないという上司は皆さんの周りにもいると思います。古い人間であると決めつけるのではなく、抵抗を示す人たちの意見や懸念を理解し、共感することがコミュニケーションの基本です。彼ら彼女らの懸念は何か、具体的な反対の理由は何かを情報収集し、整理することが重要です。

5.2 AIの業務利用に懸念を抱く背景

AIの業務利用に対する懸念は、さまざまな背景によって引き起こされます。ここでは、主な要因をいくつか挙げます。

a. AI技術やデータの不正利用に関する懸念

AI技術やデータが不正利用されることへの懸念は、抵抗感の一因です。個人情報漏洩や企業秘密の流出、AIによる偽情報の拡散など、過去に起きた事例が不安を煽る要因となっています。

b. プライバシーや情報セキュリティの問題

プライバシーや情報セキュリティも、AIの業務利用に対する懸念が引き起こされる要因です。特に、個人情報を扱う際には、プライバシー保護が不可欠です。情報セキュリティの観点からも、データの保護や適切なアクセス制御が求められます。

ほかにもAIに関するリスクは本書において挙げましたが、AI利用に難色を示す人の主な関心はこの2点と、以下に挙げます「責任」の問題であると思います。

c. 責任やリスク管理の課題

AIの業務利用によって発生する責任やリスク管理の問題も、懸念の要因となります。利用した人の責任、そしてその利用に気づかなかった上司の責任、利用を禁止しなかった上司の責任がやはり会社員として気になるところでしょう。それゆえに、この本でも推奨するように、会社としてのAI利用AI管理の方針を策定することがとても重要です。AIを利用するかしないかという決断は個人やチーム単位には大変重く感じられるでしょう。

5.3人間の心理とリスク認識に関する理解

AIの業務利用に対する抵抗感には、人間の心理やリスク認識に関する要素も関係しています。

a. 不確実性や知識の欠如による恐怖心

AI技術に対する理解が不十分であったり、具体的な利用方法がわからない場合、不確実性や知識の欠如による恐怖心が生じます。このような状況では、AIの業務利用に対する抵抗感が高まることがあります。

b. ネガティブな報道や事例の影響

メディアで報じられるAI関連のニュースや、過去に起きたネガティブな事例の影響も、抵抗感を生み出す要因です。特に、問題が起きた際の報道は大きな影響力を持ち、人々の意識に悪影響を与えることがあります。

c. 変化への抵抗感

AIの導入による業務や組織の変化への抵抗感も、懸念の根底にあります。変化に対する不安や、従来のやり方への固執が、AIの業務利用への反対や懸念を生むことがあります。

5.4リスクコミュニケーションを通じた抵抗を示す人への説得

リスクコミュニケーションを通じて、抵抗を示す人たちを説得する方法を以下に示します。

a. AIの利用に伴うリスクの特定と評価

まず、AIの利用に伴うリスクを特定し、評価することが重要です。これにより、懸念事項に対する具体的な対策を立てることができます。また、リスク分析を共有することで、抵抗を示す人たちに対して、問題意識を共有することができます。リスク管理のプロセスについては本書の4.2にてご紹介しました。

b. 適切な対策やガイドラインの策定

次に、リスクに対する適切な対策やガイドラインを策定することが求められます。これには、技術的な対策や組織的な取り組みが含まれます。具体的な対策を提示することで、抵抗を示す人たちの不安を緩和することができます。AIリスクのガイドラインについては本書の4.1で、AIガバナンスのための組織については本書の4.3にてご紹介しました。

c. 抵抗を示す人への説明やディスカッションの重要性(上司の例を含む)

リスクコミュニケーションにおいて、抵抗を示す人たちへの説明やディスカッションが重要です。AIの利用に伴うリスクや対策を明確に伝えるとともに、彼らの意見や懸念を受け入れ、対話を通じて理解を深めることが求められます。この章がここに該当します。

d. 継続的な情報共有と協力体制の構築

最後に、継続的な情報共有と協力体制の構築が重要です。AIの業務利用に関する最新情報や成功事例を共有することで、抵抗を示す人たちの理解を促すことができます。また、協力体制を構築することで、AIの業務利用に関する問題や課題に対処しやすくなります。

AIの業務利用に対して抵抗を示す人たちとのコミュニケーションは、リスクコミュニケーションの手法を用いることで円滑に進めることができます。問題点の共有、問題提起、原因分析、そして解決策の提示を通じて、抵抗を示す人たちの懸念を払拭し、理解を深めることが求められます。このプロセスを通じて、AIの業務利用がより効果的かつ安全に展開することができるでしょう。

「不安(または期待)」はステークホルダーコミュニケーションでは非常に重要です。「不安(または期待)」を適切に調整することで、「信頼」「満足」「協力」を得ることができます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?