書評 「はじめての考古学」

皆さんは「考古学」と聞くと何を思い浮かべますか? 「古代エジプト」や「古代ローマ」のような外国の事例もそうですが、日本の縄文時代とかを想像される方も多いと思います。
僕は子供の頃、考古学者を目指していました。よって最初から興味を持っていたと言うことになります。最近久しぶりに考古学の本が読みたくなり、手に取ったのがこれです。

考古学とは、文献資料などではなく、実際に埋蔵された資料から歴史的事実を分析する学問です。基本的に穴掘りをしている学問と言うイメージはそのままだと思います。それと同時に、日中活躍できるといった体力も求められます。

裏表紙には、このような紹介文が記載されています。

「ようこそ考古学の世界へ! むかしの生活を明らかにしようとする歴史的研究のなかで、異物や遺跡という『もの』から真相にせまるのが考古学です。文字の無かった時代はもちろん、文字があってもわざわざ書き残されることのなかった、ふつうの人のふつうの生活も、考古学で知ることができます。もの言わぬ遺物や遺跡を前に、考古学者たちはどのように歴史の真実を突き止めようとしてきたのか、紹介します」。この説明文で僕は、「ふつうの人のふつうの生活」と言う部分に注目するべきであると考えています。昔の資料を読みあさるだけでは本当の歴史を読み解くことはできません。なぜなら、当時、字を理解し、書ける人はごくわずかだったからです。そのため考古学は別に縄文時代などといった文字の発達していない古代だけに限った話ではなく、中世、近世、近代にも十分当てはまります。

他に「歴史研究は、よく犯罪捜査に例えられる」と言ったことが面白かったです。資料という「人物の自供」だけでは冤罪事件が起こる可能性があるので、それを防ぐため「鑑識」の役割があります。「鑑識」は物から事件を特定するので、確かに考古学と似ています。これを読んで、なるほど、と僕は思いました。別ジャンルからの説明は、わかりやすく説明するのにとても効果的だと言うことも、しっかりと理解することができました。

遺物には文化遺物と、自然遺物の二種類があることも初めて知りました。前者は「土器」や「石器」のように、人の手がかけられているもの、後者は動物の骨や種子などのことです。前者が貴重なのは当然のこととして、後者もそれと同じくらい、いや、それ以上に重要なものであると考えます。骨からは当時どういった生物が住んでいて人々とどう関わっていたのか、種子は当時どのような物が栽培されていたのかという、衣食住の関わりに最も近い位置にあるからです。

本書の終盤では考古学の問題と、新しい考古学のことについて語っています。まず大きな問題としては、遺物を掘り起こすことで、かえって遺物の損壊につながることがあります。一番の例は、陵墓の発掘です。人の墓を掘り起こす行為が、倫理的にいかがなものなのかという点は、今日でも議論されています。一旦掘り返してしまうと元の状態には戻せないため、考古学は繊細な作業だということを改めて思い出します。今の時代、できる限りそうした事故や被害を最小限に留めるために、最新の機械を用いて掘らずに解析を行ったりすることもあるそうです。

また最近、水中考古学といった新しい分野も生まれて来ています。これは文字通り、水中に潜って、そこにある沈没船などの遺物から研究するものです。

考古学はまだまだ発見がある職業ということで、それをわかりやすく、この本は紹介していました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?