FINLANDSを知らない女の子へ

FINLANDSは現在ボーカルの塩入冬湖のみで活動している。Superflyとかカンニング竹山みたいなものである。

このFINLANDSというバンド(アーティストと呼ぶべきか)、歌詞が少し聴き取りづらい。

ボーカルの冬湖ちゃんは声が高い。喉に猫と黒板でも飼ってんのかと言いたいくらいの高音が所々に入るため、びっくりしている間に曲がどんどん進む。おまけに、テンポの速い曲も多いので油断したら振り落とされる。掴まれ。call endなんて気づいたら終わってるぞ。


しかしFINLANDS、歌詞が最高。大好き。

片思い、失恋、執着、叶わぬ恋。全てFINLANDSが代弁してくれるのでここ数年大変に助かっている。私の中でこういう役目はずっとaiko姉さんにお願いしていたのだが、最近はFINLANDSの再生回数が着実に増えている。

aikoと比べる訳ではないが、FINLANDSの魅力は分かりづらさだと思っている。aikoの、テトラポットから宇宙めがけて靴飛ばすくらいあなたが好き!!っていうのもめちゃくちゃ可愛い。天使。でもちょっぴり恥ずかしさが付き纏うのも事実。

あなたが居たならそれだけでいいとか
思ってしまう日が来たら怖くて

FINLANDSのelectroのサビである。
なんだこの身に覚えがあり過ぎる歌詞。

こういう、好きって言いたい所を不安そうにぼそっとしか言えない歌に助けられる時がある。実際片思いをしている時や付き合いたてはこういう感情になりがちだと思う。

これ以上好きになっちゃったら自分の価値観とか今週の予定とかを少しくらい変えても何も思わなくなりそうで怖いのだ。予期せぬお誘いに備えて、シフトをちょっと減らして暇な時間をわざと作るくらい好きになりそうで不安なのである。

可愛くなくてもいい 馬鹿じゃ嫌なの
未来永劫比べてもいいよ
だけどあなたはとっとと愛してよ

ガールフレンズという曲の一部なのだが、とても刺さる。共感の嵐。

ここに出てくるのは自分と彼氏、そして元カノだ。元カノという存在は扱いが非常に難しい。個人的に、SNSによくいる”元カノ死ね派閥”の気持ちはよく分からない。時系列的に違う位置にいる人に殺したい程の興味は湧かない。もちろん頻繁に連絡を取っていたり2人で会っているということがあれば話は別だ。時系列が並行。殺す。

ただ、関心は本当にゼロかと言われたら正直そうではない。四六時中元カノという存在に悩まされているわけではないけれど、恋人と初めてのイベントを迎える時なんかは、ほんの一瞬以前の彼女たちが頭をかすめたりする。バレンタインとか誕生日とか。だからといって、どうすることもないのだけど。

こういう言語化の難しい気持ちをスッキリさせてくれるのがFINLANDSだ。恋人が元カノと自分を重ねているかなど分からない。ましてやしつこく過去を掘り返して恋人に嫌われる訳にもいかない。だから聞かない。

その代わりに願うのだ。あ〜あんまり可愛くないといいな、いやせめて元カノより馬鹿だなんて思われてませんように。

そして最終的に、ああこの人は今、私の恋人じゃないか。この人が愛してくれてるならそれでいい。そうやって私たちは、初めから何もなかったような顔でまた恋人に会いに行くのだ。

あるあると言うにはマイナーなこの感情。だけど一度は抱えたことがある、自分と恋人以外の第三者を交えた複雑な気持ち。このニッチな部分を突いてくるFINLANDSの”分かりづらさ”を、私はどうしたって信頼してしまう。


従順なんて誓わずに
警告なんかに惑わずに
ひとつも狡くない恋をただあなたとしたかった

baby sugarというこの曲を初めて聴いたのは、ちょうど恋愛が上手く出来ない時期だった。

「従順」「警告」

報われない恋愛をしている時にこのワードはキツすぎる。心当たりありまくりだからである。最初は対等な関係だったはずなのに、いつのまにかほんのりとした上下関係まで出来てしまっていて。友達に諦めなよって言われてもやっぱり嫌いになんてなれないのだ。だって好かれていないだけで嫌われてはいないもの。多分、きっと。

でも私だって本当はこんな恋愛なんてしたくなかった。3回目のデートで告白されるようなやつが良かった。

この曲の”ひとつも狡くない恋” というのは、いわゆる普通の恋愛のことだと思う。後ろめたいことが何もなくて、対等で健やかな恋。例え自主的であっても、好きな人の手のひらで踊るような恋は思い出す度に狡くて悲しい。この曲は何度聴いても心がぎゅっと狭くなる。


時間は心に懐かない

これも先程と同じbaby sugar の歌詞である。やばくない?片思いの経験がある人間が聴いたら全員等しく死ぬ。この曲はもはやテロだ。

恋愛において、好きでいた時間の長さは何の武器にもならない。この事実を受け入れるのは案外苦しいものがある。こんなに長い間あなたを思っていたのに、なんてエゴだと分かっていても考えてしまう。だってそれ以外このどうしようもない恋愛で得たものがないのだ。だから片思いの長さを昇華して綺麗な記憶にしたいのである。


新しい気持ちをゆっくり育て、悲しい恋もちゃんと時間をかけて悲しめるのがFINLANDSの曲の良さであり愛すべき部分だと思う。恋をして、どんな形であれそれを終わらせたことがある人にはきっと刺さる。

ところで、これを書いている途中で塩入冬湖ちゃんもnoteをやっていたことを思い出して冷や汗が止まらない。










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