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『時をかける少女』の監督 細田守が、大学の講義で語っていたアニメのこと

いつまでも昔の作品を...と言われてしまうのですが笑、細田守さんの『時をかける少女』という作品が好きでした。

作品から溢れ出る青春の偶像や後悔のような感情を感じ取れます。

また、当時『カメラを止めるな』のように、プロモーションなしでも、良い作品だと口々に囁かれて、一気に世に広まり、ムーブメントができていったというざわざわ感があって。

現代のフレームワークである「広告を打って認知をとり、売上を見込む」を大きく超え、人の心打ち、行動すら変えていった作品という意味でもすごく好きでした。

興行規模はミニシアター並みであり、そのため上映館も発表当初は全国で21館のみと非常に少なかった
インターネットなどによる口コミ効果により、公開後1か月を過ぎてからもテアトル新宿などでは連日立ち見が出るほどの観客で溢れかえり、配給会社の角川ヘラルド映画は急遽、上映館を増やすなど異例の対策をとった。
上映用のフィルムの数が14本しかないため、上映が終わった館で使っていたフィルムを次の上映館へと使いまわす方式で各地で順次公開され、最終的には上映館は延べ100館以上、2007年4月20日のDVD発売日まで9か月にわたり公開が続くという、ロングラン興行となった。

早稲田大学 土曜1,2限 『Master of cinema』

早稲田大学の授業に、『Master of Ciname』という授業がありました。

1限目で映画を上映し、2限目にその作品の監督や大きく携わった方が実際に大学にきて、教授と対談するという授業で、ジブリの音楽を担当する久石譲さんなどもいらっしゃっていました。
(今では考えられないくらい豪華な時間...憧れてしまう。。笑)

そのMaster of cinemaに、『時をかける少女』監督 細田守さんが登壇された時があり、行くしかない!という思いで、朝一番に教室に向かった記憶があります。

細田守が語るアニメの話

その授業の中で、細田守さんがアニメに対する思いや、自分の過去を赤裸々に語っていました。ここからは、当時の授業でメモした内容を載せてみます。
(さすが私立の雄 早稲田大学。質問のキレがすごく、みんな賢い。。)

*細田守さんの作品には、常にファンタジーが関係する理由

教授「時かけ、サマーウォーズ、おおかみ..すべてに通じるのは、身近なテーマと非現実的なテーマ(=ファンタジー)。あえて考えているのか?」
細田さん「現実世界は結果が見えていたりつまらないと感じることが多いと思うが、現実世界の広がりはとてもわくわくするもので、端的に表すために、ファンタジー要素を用いるように思う。」

*アニメ作品に込めているものと、視聴者への期待や願い

教授「構造的に、非常に文学的だと思う。手前の2人は現実的な時間が流れ、一方で星空はぐーっと早く流れている。
その2重構造が絵の中にあって、さらに、その後彼女はこう過ごしていったと、3重の時間経過が含まれていた。
こういう語り口はどこから生まれたのか。おそらく、中学や大学で学んだわけではないと思う。」
細田さん「映像の多義性ということですよね。映像でも文章でも、読み手によって解釈がさまざま。そういう余地を残すことは面白いことだと思う。
単に筋を追うだけなら映画である必要はなく、あらすじだけで良い。
映画を作っている中で、膨大な情報をものすごく詰めて表現している。それを読み解いてほしいという希望ももっている。
通常の映像なら、俳優の奇跡的な表情のように、一種の飛躍を見つけて嬉しかったりするかもしれない。
ただアニメは記号なので、そういった偶発性はない。最初から準備して設計することが大切。

*アニメに向き合う姿勢について

学生「ときかけの前に、ワンピースのような、すでに存在するアニメの監督をやられていたが、違う難しさはあったか」
細田さん「東映は版物が多く、グッズ販売をするために映画を作るような、商売の権化のような会社だった。しかし、作り手としては、「このおもちゃを買わせるために」ではなかった。
その作品を通して、何か子どもたちの心に残ってもらえるようにと思って作っていた。自分としてはすごく真剣に作品作りに取り組んでいた。
それ以来、版権物、プログラムピクチャーが、クレヨンしんちゃんとか、ワンピースを下に見ることがある。ただ、自分にとっては同じくらいの努力や情熱をかけないと出来ないと思っている。だから、その大変さは変わらない」

*過去の作品と新作との繋がり

学生「デジモンとサマーウォーズのストーリーが似ていると感じたが」
細田さん「やはり、作ることによってわかることがある。以前短いものを作って、そこから影響を受けたのだと思う。決して作品それぞれが単体で存在するのではなく、作り手が積み重ねの中で作られていく。

『カルテット』 脚本家 坂元裕二との共通点

ドラマ『カルテット』や映画『世界の中心で、愛をさけぶ』などの脚本を手がける坂元裕二さんという方がいらっしゃいます。

先日NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組で密着取材されていたのですが、そこでこんな言葉が出ていました。

『Mother』以前、『Mother』以降」とよく言われますけど、自分では書いてる筆圧は変わってないし、『西遊記』や『トップキャスター』も大事な子供たちだから、そっちはダメでこっちはいいって言われると、そんなのただのジャンルの違いでしょって思って、若干気分悪いですね(笑)。

細田さんが、ワンピースや過去の作品に対する情熱を語る内容と共通していて、アニメとドラマ。映像の種類は違えど、通ずる部分があるんだなと思いました。

映像作品を見続けていると

多く映像作品をみていくと、面白い、楽しい、感動したという感情の動きだけでなく、「こういう意図を込めて作っているのかな」「監督のメッセージはこれかな」といった、作り手の情熱を感じ取るようになってきました。

ただ、これはアニメだけでなく、普段の仕事も同じですよね。誰かの情熱の結晶が、人の心を動かすような仕事を形作っていく。本当にこだわりある仕事は、何か伝わってくるものがあります。

改めて振り返ってみると、細田守さんの語る”アニメ作品に意図を込め、視聴者それぞれが自分なりの解釈を加えて意味を見出して欲しい”という思いに、一層グッとくるものがありました。

これからも、心打つ作品を楽しみに待っていたいと思います。

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