おなかに無数の注射の痕

絶賛不妊治療中。ここ2年半ほど、毎月病院に通っては血液検査に左腕を差し出し、診療台に上がり、薬を飲んで自己注射をして治療を受けてきた。残念ながら妊娠には至ってない。

今年に入ってから子宮筋腫を取りましょうと手術が決まったものの、あれよあれよとコロナで数ヶ月延期になり、ようやく手術を受けられたと思ったら今度は「筋腫は筋肉層内で子宮内には無かった」と告げられた。手術をした医師と普段からの医師は病院も違うのだが、その後も超音波検査のたびに担当医師から「やっぱり私は子宮内に筋腫があると思う」と言われてそれは私はどうしたらいいんですか状態になっている。ああままならない。

いまは採卵に向けて朝晩合わせて3本の注射を打つのが日課だ。卵胞が一つだけ大きくなるのを防ぎ、同時に未成熟な卵胞の排卵を防ぐなどのためだ。ペン型で簡単なものと、自分で薬剤を混ぜないといけないいわゆる注射型の注射のものがある。冷蔵庫の一角を占めている薬を取り出したら、手を消毒し、箱を開けて針を付け替え、水分を注入してパウダーを溶かし、取り残しがないように注射器に戻し、針を付け替えて、お腹を消毒し、注射する。注射針はとても細いので、見た目ほど痛くない。それでも自分のお腹に細長い針を数センチ差し込んで薬を注入するのは何度やっても慣れない。痛くて痒くなる。

注射痕が腫れたり固くなったりするのを防ぐために、針は毎回違う場所に打つ。針を引き抜くのが苦手で、最後にピンと皮膚に引っかかってしまう。それが原因なのか、へそ周りの下腹部には赤い痕が点々と残っている。文字通りがんばっている証だなと時折眺めている。

アメリカの医療の仕組みをイチから学んで、得意とは全く言えない英語で医師看護師保険会社や医薬品会社とやりとりをして、医療費は本当に目が飛び出るほど高くて、それなのに結果が出なくて。身体のことだから当然だけど思う通りにいかないことばかりだ。

今回はどうなるんだろう。いままで何度も泣いたので、100%うまくいくとは全然思えないし、そう考えるのは怖い。病院の統計では私と同じ年齢や似たような数値で、同じ治療法を経て出産まで辿り着けた人は51%と言われている。高いと見るか低いと見るか、私にはよくわからなくなっている。

日に日に増える星座のようにお腹に広がる赤い針の痕を見ては、期待しすぎてはいけない、うまくいったらラッキーと何度も繰り返している。



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