2020年 新潟大学 二次試験 日本史

かっぱの大学入試に挑戦、17本目は新潟大学の日本史。時代は古代・中世・近世・近代で、おおむねそれぞれ1題の合計4題。形式は用語記述+論述。図版あり。では、以下私なりの解答と解説。

第1問 古代の仏像

問1.解答 D➝A➝C➝B

解説 古代の文化の基本問題。Aは白鳳文化期の興福寺仏頭。Bは国風文化期の平等院鳳凰堂阿弥陀如来像。Cは天平文化期の興福寺阿修羅像。Dは飛鳥文化期の法隆寺金堂釈迦三尊像。

問2.解答 白鳳文化

解説 問1の解説参照。白鳳文化は7世紀後半から8世紀初頭の天武・持統朝のころの文化。

問3.解答 京都府

解説 平等院鳳凰堂は京都の宇治に藤原頼通が建立した寺院。

問4.解答 定朝

解説 平等院鳳凰堂の阿弥陀像は仏師の定朝が寄木造で製作した仏像。

問5.解答 原型の上に麻布を漆で塗り固めて乾燥させて製作する、乾漆像の技法が用いられた。(38字)

解説 興福寺阿修羅像の製作に用いられた技法ということで、乾漆像の説明。

問6.解答 厩戸王(厩戸皇子、聖徳太子)

解説 法隆寺を創建した人物、ということになるので厩戸王が正解。厩戸皇子や聖徳太子でも可だろう。

問7.解答 百済や高句麗、中国の南北朝期の文化のみならず、西アジアやギリシアの影響も受け、豪族や王族が担い手となった仏教中心の文化。(60字)

解説 飛鳥文化の特徴を説明する問題。特徴としては、①渡来人の活躍により百済や高句麗、中国の南北朝期の文化の影響を強く受けた。②西アジアやインド、ギリシアの影響も受けている。③蘇我氏などの豪族や厩戸王のような王族が担い手。④飛鳥寺や法隆寺など、仏教中心の文化。以上を字数内でまとめれば良いだろう。


第2問 藤原北家の成長・足利義満の政治

問1.解答 ア:承和 イ:清和 ウ:応天門 エ:基経 オ:義持 カ:太政大臣 キ:御料所

解説 平安時代・室町時代の基本問題。アは「良房」が「有力氏族を退け」た変で、「外祖父」となっているイの天皇が即位する前というところから判断。ウは「伴善男」らが没落した変といえば応天門の変。エは「良房の養子」「光孝天皇を擁立」「関白の地位」で判断。オは「足利義満」が将軍職を譲った人物なので4代将軍の足利義持。カは義満が任じられて「公武の両実権を握」れた役職と言えば太政大臣。キは「幕府の直轄地」で判断。室町幕府の直轄地が御料所、秀吉の直轄地が蔵入地、江戸幕府の直轄地が幕領または天領といった。

問2.解答 天皇の側近として、太政官に命令などをすみやかに伝える職務。(29字)

解説 蔵人頭の職務について説明する問題。平城太政上皇の変の際に設置された蔵人頭は、天皇の命令などを太政官組織に伝える蔵人所の長官で、天皇の側近として秘書的な役割を果たした。

問3.解答 橘逸勢(または伴健岑)

解説 承和の変で退けられた有力氏族ということで、まず筆頭に挙がるのは三筆でもある橘逸勢であるが、伴健岑も排斥させられているのでどちらでも良い。

問4.解答 奉公衆

解説 室町幕府の将軍の直属の軍は奉公衆である。将軍に文化面で仕えた同朋衆とよく区別したい。

問5.解答 京都の高利貸業者である土倉や酒屋に課した税のことである。(28字)

解説 土倉役・酒屋役について説明する問題。「土倉」も「酒屋」も高利貸業者であり、そこに課した税であることをきちんと説明しよう。


第3問 近世の産業

問1.解答 ア:農業 イ:太閤検地 ウ:銀貨 エ:金肥 オ:酒 カ:絹(絹織物)

解説 近世の産業の基本問題。アは「近世の産業の基本」とあり、農業が入ると思うが、稲作などでも良いのだろうか。イは「豊臣秀吉」が促した「統一した基準の検地」から判断できる。ウは近世で使われた「金貨」「銅貨」以外の貨幣といえば銀貨が挙げられるだろう。エは「購入肥料」から干鰯や〆粕などの総称である金肥を導きたい。オは「灘や伊丹」の特産物、カは「桐生や足利」の特産物から判断。

問2.解答 300歩

解説 太閤検地により、それまで360歩で一段(反)だったものを300歩で一段とし、面積表示の統一をはかった。

問3.解答 借金を返済できずに土地を失う小作農と、土地を買い集める地主という格差ができた。(39字)

解説 設問の要求は貨幣経済の浸透が農村に与えた影響について説明すること。条件として、土地の質入れに注目すること。貨幣経済が農村に与えた影響は、商品作物の生産や金肥の登場など様々に考えられるが、ここでは「土地の質入れ」という条件が付いている。となると、土地を質入れして借金する➝借金を返済できず土地を手放して小作農が増える➝手放された土地を買い集めた地主が現れる➝地主と小作農という階層分化が進み、寄生地主制の温床が生まれるといった状況について、字数以内で簡潔にまとめて説明すると良いだろう。農業は収穫物が確保できるまではひたすら投資をしていく産業だというイメージを持っていると何かとわかりやすくなってくる。

問4.解答 綿花

解説 綿織物を織る糸の原料、ということで、綿糸は綿花からできるということは常識の範疇として知っておきたい問題である。

問5.解答 工場に奉公人を集め、分業と協業により物を生産する手工業。(28字)

解説 マニュファクチュアについて説明する問題。日本語だと工場制手工業なので、それまでの農村家内工業や問屋制家内工業との違いも意識しておきたい。


第4問 太平洋戦争の開戦

解答 第二次世界大戦開戦時は、日本は日中戦争の最中であり、大戦には不介入の方針であった。しかしアメリカやイギリスが援蔣ルートを通じて中国を支援し、日中戦争が泥沼化する中で、ドイツが戦線を拡大し、フランスが劣勢になると、近衛文麿内閣は援蔣ルートの遮断を目指して北部仏印進駐を行った。さらに日独伊三国同盟を成立させると、アメリカは日本への姿勢を硬直化させ、対日輸出禁止を強めていった。日本は日ソ中立条約を締結してソ連の協力のもと日米関係の改善を図ったが、独ソ戦が開始された後は資源獲得のため南部仏印進駐が実行された。御前会議で帝国国策遂行要領が決められる中、近衛文麿内閣は日米交渉の妥結を求めたが、対米強硬姿勢の東条英機陸相と対立し、総辞職して東条英機内閣が成立した。アメリカからハル=ノートが提示されると、交渉成立は絶望的になり、陸軍が英領マレー半島を、海軍がハワイ真珠湾を奇襲攻撃し、対米英戦が開始された。(400字)

解説 設問の要求は第二次世界大戦の開始から対米英開戦までの国際情勢の変化と日本の対外政策について論述すること。条件として、「ドイツ」「仏印進駐」「マレー半島」「東条英機」「日中戦争」「近衛文麿」の語句を用いること。非常に情勢が細かな時期ではあるが、丁寧に状況を追っていき、整理すると良い。また、問われているのは「国際情勢の変化」と「日本の対外政策」なので、この間の日本の国内の政治情勢(新体制運動など)はそこまで触れずとも良いだろう。以下、時系列に沿って国際情勢と対外政策を整理していくと、1937年日中戦争勃発(今回の設問の大前提)➝1939年9月第2次世界大戦勃発(国際情勢)➝阿部・米内内閣の欧州大戦不介入方針(対外政策)➝ドイツの優勢、フランスを占領(国際情勢)➝第二次近衛文麿内閣の独・伊・ソとの連携強化、南進方針の決定(対外政策)➝1940年9月、援蔣ルート遮断のための北部仏印進駐・日独伊三国同盟の締結(対外政策)➝アメリカの対日経済制裁本格化(国際情勢)➝1941年4月、北方での安全確保と対米関係改善の糸口に日ソ中立条約成立(対外政策)➝1941年6月、独ソ戦開始(国際情勢)➝1941年7月、御前会議にて対米英戦覚悟の南進・情勢有利の場合の北進(対ソ戦)決定(対外政策)➝南部仏印進駐(対外政策)➝アメリカ、対日石油輸出禁止➝1941年9月、御前会議で日米交渉の期限と交渉不成功の場合の対米開戦=帝国国策遂行要領決定(対外政策)➝1941年10月、日米交渉継続を求める近衛文麿内閣が総辞職、東条英機内閣が成立➝1941年11月、日米交渉は継続されるも、アメリカからハル=ノートが提出される=事実上の最後通告➝1941年12月、日本陸軍がイギリス領のマレー半島に奇襲上陸・日本海軍がアメリカのハワイの真珠湾を奇襲攻撃=対米英戦開戦 となる。指定語句はどれも必然の語句ではあるが、それ以外にも情報量は非常に多いため、上手く整理してまとめて解答としたい。


以上で終わり。何というか、普通の問題って感じでした。もう少し史料の読み込みとか、知識そのままではなく活用させるような問題があっても良いのになぁと思ってしまいます。

次回は新潟大学の世界史の予定。

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