洗車
3月も末になろうとしていたある金曜日、長女が日付変更線をまさに跨ごうかという時間に帰宅してきて、玄関で靴を脱ぎつつ私に声をかけてきた。
コジくん、洗車、行こう。
な、なんのはなしですカー。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
こんな時間に、何を唐突に!
どうも、聞くところによると、長女は彼氏と我が家の小志朗(注1)で出かけることになったようで。
あまりにも小志朗が汚れたまんま放置されていて可愛そうなので、洗車してほしいというのだ。
深夜の時間に。洗車機が稼働しているであろうガソリンスタンドを私はひとつ、幸いにも知っていた。
そして、そこに行こうという話になった。
だが、ひとつ、問題があった。私はその日は、ちょっと飲んでいて。運転が出来ない。運転は任せると話すと、運転するから洗車機を通して、ガソリンを入れて欲しいと返ってきた。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
なんだか騙された気分だな。
ガソリンスタンドはもちろんのことながら洗車機が使えて。きちんと洗い、拭き、ガソリンも満タンにした。
ちょっと小ぎれいになった小志朗を見て、洗車をしなかったことに、なんだか申し訳ない気分になった。結果的には長女の申し出が、小志朗のためになったのである。
ちょっと前の、そんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
リキも、小志朗も、コジくんの担当だからね。メンテナンス、お世話、頼むね。それと、私も、ね。
なんのはなしですカー。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)我が家の車には、小志朗という名前がついている。燃費も良く足回りも軽やかで、最高の相棒なのである。
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