鰻重
土用の丑の日というのが、世間では、ある。
その時に鰻を食べて精をつけるというのは、聞いて知っている。一般的知識として。
母は、こう言った。
「うちは、世間様とは迎合しないから」
そして、家内は、こう言う。
「うちは、貧乏だから」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
真っ正面から言われると、鈍感なコジでも、少しは責任を感じるなぁ。
それが、今年は、かなり過ぎてからではあるが、家内が買ってくれのである。
どうして買ってくれたのか、理由を何度も聞いたが釈然としない。
事実としては、大阪出張の帰りに、ある百貨店の地下の食料品売り場で安売りをしていたらしい。
そして、この鰻重を手に取ったら、お店の人に言われたという。
「さすが、お目が高い!」
それで戻せなくなって、買って帰ってきたという。
そして、当然のことながら、家内と私で半分こで、食べた。
我が家の、幸せの鰻重の話。
なんのはなしですか。
あの時のそんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、私の鰻、食べたわよね。
そして、倍返しの刑が、執行される……。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
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