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【怖い話】個人サイト黎明期の怖い話

2020年1月24日の、北陸オカルト会で語った内容の元原稿になります。テーマは「インターネット」。

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まぁ、オカルト、ではないんですけれど、インターネットの怖い話ということで。

私は、ダイヤルアップ接続で電話代がウン万円、みたいな時代から、自宅でネット使いたい放題という環境が与えられていました。当時、小学4年生。早すぎたんだ腐ってやがる……という言葉が実によく似合う大人になってしまいました。
それはそれで怖い話ですが、それはさておき。

Windows95とか98とか、そんな時代。
インターネットのオタク活動なんてのは、ちまちまやっている個人サイトが主流でした。
HP管理人のプロフィールがあって、日記があって、絵とか小説とかのコンテンツがあって、あとリンク集にメールフォーム。そして、交流用の掲示板。当時はBBSとか言ってましたね。

……大丈夫ですか、インターネット老人会のみなさん、まだ怖い話じゃないですからね。

そろそろ本題へ。

そんな、BBS全盛期の話。
とあるサイトは、作品だけでなく、管理人のSさんの人柄が良いことが評判で、BBSでのファンとの交流も盛んでした。

しかしある日、Sさんが急に入院をすることに。
『ノートPCを持っていくから、隙あらば日記くらいは更新したいな。でも親にバレないようにしないと!』
と、いつも通りのSさんの書き込み。
当然、心配したファンが、BBSにお見舞いや励ましの言葉が次々書き込んでいきます。

『BBSの返答は全部できないのですが、みなさんありがとうございます。がんばります』

最初こそ、そんな言葉が返ってきましたが、入院がじわじわと長引くにつれ、日記は少しずつおかしくなっていきました。

『がんばってとか言われてもよくわかりません。正直鬱陶しいです。こっちの身にもなれ』

挙げ句の果てには、

『みんな私と同じ目にあえばいい。しねしねしねしねしねしねしねしね』

当然ながら掲示板は大荒れ。
2ちゃんに晒されたりもして炎上状態になりましたが、しばらくすると、みな興味を失ったように、もしくは、そんな状態でもなにも変わらないSさんの様子に怯えるように、ひとり、またひとりと離れていきました。

それからしばらくして、ふと思い立ってSさんのサイトを訪れると、あの呪いじみた日記は全て消され、釈明の言葉が掲載されていました。

曰く、
・入院中の日記は誰かの悪質ななりすましで、自分は何も書いていない
・長期入院になったが、病気は全快している
・日記の件もあるので、サイトは移転する予定


そのなかに、『ソース』という、それだけの書き込みがありました。

荒らし?

実際、その書き込みはすぐに消されました。Sさんはひとつずつ書き込みに返信していたので、気づいて消したのだろうか。
でも、なんとなく引っ掛かっていたのでしょう、記憶に残っていました。

また別のサイトを見て回っているうちに、あ、と気づきました。
ソース、というのは、サイトを構成するソースコードのことだろうか、と。

ソースコードというのは、まぁ要するにサイトを構成する設計図みたいなものだと思ってください。

さしあたり、Sさんのサイトのトップページのソースを表示しました。
目に入った瞬間、ぞっと、鳥肌が立ちました。

『気に食わない』『苦しい』『殺してやる』……


その他のページのソースも、大体同じような状態でした。

BBSを見れば、ファンの励ましの言葉に、ひとつひとつ、丁寧なSさんの返信が付けられています。
『ありがとうございます! 優しいお言葉が凄く染みます~。よかったら、これからもよろしくお願いしますね』

インターネット上なら、どのようにでも装える、という、そんな話でした。

……まあ、これだけだと、あれなんで。少しだけオカルト色強めの話を。

これは、とある絵師さんの話。

自分のサイトに、イラストなどを掲載していた絵師のYさん。
このサイトのBBSに沸いたのが「自分好みのBLエロを描け」みたいな頭のおかしな荒らし。
当時でいうところの厨です。
他の訪問者が荒らしとレスバし、火に油を注いでしまいます

今でこそ、荒らしやヤバイ奴に無反応が定石と浸透してきていますが、当時の個人サイトというのは、マジで無法地帯。黎明期ゆえ、ルールも整備されてなければ、取り締まる法律もありませんでしたからね。

仕事があるYさんは、夜遅くなってから事態に気づき、対処が遅れたことで、掲示板のログがパンク。
結局掲示板、どころか今までの作品も全消し。
唯一残された日記には、明らかに心を病んでるような短い詩が投稿されていきます。
それも日を追うごとに数が増えていき、一日に数十件に及ぶことも。

……実は、掲示板の騒動の1年ほど前から、荒らしからだとおぼしき嫌がらせメールが数百件単位で送りつけられていたYさん。
仕事もやめ、自宅にひとり引きこもり、ただ自分を呪うような詩を書き続け……

そして、遂に、Yさんは自ら死を選んでしまいました。

オカルトじみてくるのはここからで、実は、Yさんが自殺したとされる日は、最後の投稿の前日だったのです。

ブログなんて気の効いたものがなく、サイトの更新のためにいちいちデータを手動アップロードしていた時代。
予約投稿なんてこと、できなかったと思うんですけれど、どうなんでしょう。

まぁ、当時の回線の不安定さなどを考えると、偶然そうなった可能性もありますけれど、ね。

そんなこんな、今夜は、2ちゃんねる 怖い話@同人板から、個人サイト黎明期の怖い話をお届けしました。

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