内閣の国会召集義務(憲法第53条)
日本国憲法第53条では、内閣の国会召集義務が定められている。
(厳密には内閣が行うのは召集の「決定」であり、国会を召集するのは天皇の権能とされているが、実質的に内閣が召集しているようなものであり本記事では便宜上そのように記載する)
しかし、野党が要求した際にすぐさま内閣が国会を招集しているかというと、そんなことはない。
なんでも、自民党の某政権では「要請があれば召集を決定しなければならないが、召集時期については内閣に委ねられている。臨時国会そのものをやらないと言っているわけではない」といった反論(?)があったらしい。
『カイジ』の利根川か?
「臨時国会は召集する・・・・・・!召集するが・・・・・・日本国憲法第53条はその時の指定まではしていない そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい つまり・・・・我々がその気になれば臨時国会の召集は10年20年後ということも可能だろう・・・・・・・・・・ということ・・・・!」的な。
(判例等を見る限り10年20年後はさすがにダメそうではあるが。それに毎年の通常国会もあるので国会自体はそのうち召集されはする)
召集時期の定めがないのはその通りだが、だからといって内閣に数ヶ月単位での裁量や「今すぐ召集する必要はない」といった判断を認めるのであれば、53条の前段…通常時の内閣と同じだろう。わざわざ後段で別途規定している意味がなくなってしまう。
本当の緊急事態を除き、選択や裁量の余地なく最優先で速やかに召集する、というのが本来あるべき姿ではないか。
政権擁護側で「国会を開いても野党は必要な政策の邪魔をするだけだから開かなくていい」といった主張をする人もいるようだが、それはピントがずれているように思う。
国会を開いても野党は役に立たないし足を引っ張るだけ……(自分もそう思うことはあるが)仮にそうだとしても、それでも召集しなきゃダメだろう。憲法にそう定められているのだから。
それが嫌なら、改憲するなり両議院でそれぞれ4分の3より多く議席を確保するなりすればよい。
「臨時国会を開くのが有用かどうか」は問題ではない。これは憲法違反かどうか、対応として手続的にOKかどうかという問題だ。
上述のとおり、召集の時期が定められていないので即憲法違反とは言えないが、個人的にはこれまでの様々な政権で対応に問題があると考えている。
憲法第53条の規定ぶりについて「〇〇日以内に」などと期限を設けてよさそうな気がするし、改憲のハードルが高いのであれば、国会法を改正して追記するなどの対応でもまあよい。
野党が令和4年度に議員立法でやろうとしたが、現行の憲法との整合性などを理由に与党が慎重な姿勢だったため成立しなかったらしい(そのまま成立してほしかった)。
しかしながら、自民党の改憲草案では「要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない」とある(しかも「決定」ではなく実際の召集が20日以内という)。
改憲草案の決定当時自民党は野党だったが、与党に戻ったからといって変わるものでもないだろう。
野党の追及を避けたいのか何なのか知らないが、現行の憲法との整合性云々で法改正での対応には慎重だとしても、実際の行動として召集を20日以上引き伸ばさないでほしいところ。自分たちでもそうあるべきとはしているのだから。
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