見出し画像

【コラム】資産担保証券(ABS) ~リーマンショックを引き起こしたCDOとは~

皆さんもご存知の通り、世の中には様々な資産形態が存在します。不動産、債権、株式に現金…。これらは資産として、そのものに価値があることは当然言うまでもないことでしょう。しかし、これら資産の価値を担保にして証券を発行し、誰かに買ってもらう、というやり方も世の中には存在しているのです。資産をたくさん保有する企業などは、このやり方で資金調達することも出来るわけです。今回は、そんな特定の資産を担保にして発行される資産担保証券(ABS)についての説明です。以前リーマンショックが発生した理由としてCDOの解説をしましたが、CDOはABSの一種です。前回の【コラム】をもう少し深く掘り下げた内容だと思ってください。

【コラム】みんな意外と詳細を知らないリーマンショックを簡単に解説

まず、ABSを発行する場合、特別目的会社(SPC)を設立する必要があります。ABSで資金調達したい企業は、自社の資産をSPCに移し、資産を企業から分離する必要があるのです。万が一企業が倒産してもSPCが保有する資産が無事なら投資家は守られますよね。このような理由から、ABSはSPCから発行されることになります。

さて、ABSは担保にする資産の種類によって細分化することが出来ます。例えば、CDO (債務担保証券)はローン債権(支払いを受け取る権利)や債券を多数合わせて担保とし、証券を発行したものです。ローンだけを担保にするものはCLO、債券だけを担保にするものはCBOと呼びます。CLOのLはローンのL、CBOのBは債券(bond)のBですね。図で表すとこのようになります。

ABSの種類

ローンの種類にも格がある

CDOやCLOの証券は、複数のローン債権が担保にされています。しかし、ローンと言っても種類はいろいろ。返済受け取り優先度が高いローン債権もあれば、その逆もあります。

通常、ローン債権は保証力によってランク分けされています。すなわち、シニア、メザニン、エクイティです。格付け会社によって表現は多少異なりますが、最高のAAAからB-で評価されます。格付け会社とは、例えばムーディーズやS&Pなどのことを指します。

信用格付けの意味

ということは、安全性の高いローン債権だけで組成されたCDOやCLOは、必然的に安全性が高いことになりますね。しかし、リーマンショックの時は、CDOの中に安全とは言えないローン債権も組み込まれていたわけです。モーゲージ債権(MBS)と呼ばれる住宅ローン債権がそれに該当します。低所得者が住宅ローンを払えなくなり、モーゲージ債を大量購入していたリーマンブラザーズが破綻、そして大暴落の引き金となりました。

CDOやCLOは前述のように複数のローンで組成されます。どの格付けのローンがどのくらいの割合で組み込まれているかが重要になります。例えば、あるCLOの組成割合を見てみるとこのような割合になっています。

エクイティ:3%、メザニン:12%、シニア:85%

シニアの割合が大きいほど、安全な証券だと言えるでしょう。組成しているローンの組み合わせによって、CDOやCLOもローンの格付けのようにAAAなどの評価付けがされるわけです。

ローンの種類と信用目安

シニアの評価を受けているCLOやCDOは、よほどのことがないと毀損しないはずです。担保資産がデフォルトするなど、毀損があった場合は当然エクイティから被害を受けます。シニアが多少でも毀損するようなリーマンショック規模の事件が起こった場合は、メザニンやエクイティはボロボロです。返済順位がシニアより低いのですから、シニアローンの返済がままならない状況ではメザニンやエクイティの返済が行われるわけはありませんね。

リーマンショックの時は、CDOの中にモーゲージ債が組み込まれていましたが、高い格付けのものと混ぜてしまえば安全に見えてしまうという罠もあったのです。よく例えとして「カレーの中に腐った野菜が一部混ざっていてもわかりにくい状況に似ている」と言われます。金で買収された格付け会社が、モーゲージ債の入ったCDOを甘く評価したことも原因と言われています。

ただ、基本的に我々個人投資家の大半は、CDOやCLOといった証券には無縁かと思います。しかし、今回のコロナ騒動の大暴落の後では、やはりリーマンショックの時の記憶が呼び起こされるものです。「隠れた魔物」に警戒するのは当然でしょう。話を理解するためにも、資産担保証券のしくみについては少しでも知っておく方が良いかもしれませんね。

にほんブログ村【株日記】

人気ブログランキング【株式初心者】

株式投資ランキング

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?