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【コラム】マクロの視点からIPOを語る ~個人投資家を滅ぼしかねないボロ株にご注意~

(2020/12/12)

あ、一応上場企業に勤めてます

合コンでも久しぶりの同窓会でもなんでもよいのですが、どんな仕事してるの?という類の質問をして、このような返答をしてくる人に皆さんも一度くらいは出会ったことがあるだろう。この時、彼(彼女)は自分が上場企業の社員であることをさり気なく、とてもさり気なく主張したいに違いない。何故か多くの人にとって「上場企業」はステータスである!投資はギャンブルの一種だと思っている日本は多いにもかかわらず、である。

私もそんな人に出くわしたことがある。上場企業に勤めてると言うけど、まさか東証一部や二部じゃなくマザーズというオチじゃないだろうな…と疑った。残念ながらマザーズではなく立派な東証一部の企業だった。しかし彼はただのバイトだった!アホか!

マザーズは基本的にゴミの掃き溜めである。マザーズの醍醐味は、ゴミの山からごく稀に見つかるお宝銘柄を発掘すること。これに尽きるのです。毎日の様に、新興市場には不思議なくらいゴミでカスみたいな企業がIPOの名の元上場されている。そして本当に不思議なことに、好んでIPOばかり3000円、4000円でも買う個人投資家が後を絶たない。

今回はマクロな視点からIPOを考えたいと思います。この一ヶ月くらいの間に、IPO銘柄に興味あるんだけどどう思いますか?と3回も聞かれることがあった。先に結論から述べると、よくわからないなら買わない方がよい、です。

何故、こんなにもIPOが増えているのか?これをマクロ的に理解するには、やはりいつも通り「世界のマネーの流れ」をもう一度考えてみるとよいでしょう。

世界を見回すと、投資先は日本しかない

世界では3月以降、コロナによる経済崩壊を防ぐために莫大な金融緩和に踏み切りました。米国も欧州も日本も、です。簡単に言えば、どこかにお金を投資しやすい環境になっているし、投資しなければならない状況になっている。コロナ以前なら、中国株や米国株、もしくは新興国への投資も人気があった。しかし今は日本以外は全部ダメなのです。中国は説明不要で論外、金融ハブとしての香港も崩壊。米国も実はデフレサインが出ていて怪しい上、まだまだコロナの状況も酷い。毎日の様に医療崩壊直前だ、と騒いでいる日本とは比較にならない。欧州も同様となっています。

だから結局、日本株上昇の要素が整い過ぎている、新しい時代が始まると解説してきました。世界を見渡しても日本以外に投資対象が無い、という不幸中の幸い的な後押しや、追い風が強くなってきている。それだけでなく、日本株は30年間も解散価値以下の株価で放置されてきた。腐っても相当な経済大国なのに、この30年間は全く株価が騰っていない。庶民の給料も増えない、物価も騰がらない。未だに500円でランチが食える先進国は本来有り得ない。

つまり、今は日本株市場にマネーが流れてきており、日本株市場がかなり注目されているのです。

日本株市場で、マネーはどの様に動いてきたか

では、コロナ暴落以降にどんな日本株が買われてきたのでしょう。2020年3月から10月までは、マザーズをはじめとした成長株がとてもよく買われた(しかしこれは世界の投資家よりも、日本の個人投資家が主体だった)。夏に一旦息切れはしたものの、マザーズとそれを買った個人投資家たちがコロナで死にかけた日本株市場を盛り上げたことは間違いないでしょう。息切れした時にはテラやアンジェスなど、いわゆるゴミの銘柄に替わる銘柄がなかなか出てこなかった。当時も私はそのことを嘆いています。

その後は、大統領選挙通過あたりからようやくバリュー株に資金が入りはじめます。バフェットが日本の商社株を買ったことも、日本のバリュー株見直しに一役買ってくれた。このあたりから、本格的に海外からのマネーが流れてきている。これが10月から現在に至るまでの状況です。

つまり、コロナ暴落以降は、具体的にマザーズ→バリューという流れでマネーが動いていた。バリューのターンが来たあたりで、海外からもマネーが本格的に入り始めたわけです。春頃から私は「今年の秋くらいから日本株は本格的に回復傾向に向かう」といろんな人に自信過剰に豪語してきました。先程の記事内でも同じことを書いてますね。

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絶対それは早過ぎる、と言い張る人とは意見対立をしましたが、ここまで自分の見立て通りに動いてくれました。無理もありません、世間はどこもかしこもコロナ第2波が~と騒いでいましたからね…。お盆以降、9月にかけてのバリュー株の底入れの動きから、年末か年初にバリュー株のターンが来るのはかなり確信的でした。ここまで騰がるとは思わなかったけど。

たまに自分で書いた記事を振り返り、答え合わせすると面白いですね(本当に今年は予想外が多かった)。自分の予想が当たって鼻が高いのはもちろんなのですが、何故、私が春や夏の時点でこの様な予想を立てることが出来たかを考えてみてほしいのです。マクロの視点を身につけると、こんなふうに大枠の予想ができるようになるわけです。

バリューは騰がりましたが、しかしここ2週間くらいは、また私が心配しているように、上昇に手詰まり感が出てきています。だから無理に上昇させずに、一旦日経平均株価は調整して、再びマザーズのターンが来た方が健全だと述べています。マザーズ→バリュー→マザーズ、と資金が流れて、この冬のコロナ不安期を乗り切ってほしいのです。少し時間の経過を待ったほうが、後々安定的な上昇が見込めるからです。

最近はあまりにも極端に東証一部が買われ、マザーズがボロクソに売られている。こういった極端な状況は良くありません個人投資家がついてくることができないのです。イナゴだって素人だって、相場を盛り上げてくれる立派な市場参加者であることは間違いない。しかし、極端な値動きは彼らを滅ぼしてしまう

さて、ようやくここからIPOの話が登場します。上記の様な日本株優位なマネーの流れの中、個人投資家を滅ぼす手助けをしてしまっているのがIPOです。

世界は今、金融緩和されてばら撒かれたマネーの受け皿がほしいのです。出来れば日本市場に皿があれば尚更良いのです。だから世界の投資家は10月以降は日本のバリュー株を積極的に買っていて、こんなにも日経平均株価は下がらない。しかし証券会社は、この日本株人気に便乗してもっともっと皿を用意している。この皿がIPO株だということです。しかし、海外の投資家は日本の個人投資家ほどIPOを好んで買いません。彼らはバリュー株を買っている。しかし日本の個人投資家は積極的にIPOを買っている、という状況です。

新興市場に新規上場する企業すべてがゴミやカスだとは言いません。しかし、あまりに上場基準が緩く、だらしないゴミ企業でも簡単に多くの企業が上場出来てしまう。これが問題です。ゴミかどうかの判断は、素人にはかなり難しいことです。過去のデータもチャートも何もないですからね。

でも上場してしまえば、あとは赤字、赤字、赤字…。そんな赤字垂れ流しで社員が20人くらいしかいなくても、捨て値以下で放置されている東証一部、二部企業より高い値が平気でついてしまう。「営業人員の退社により、社長自ら営業活動にテコ入れ」というふざけた四季報コメントを見たこともあります。ここまで来ると、田舎の潰れかけた有限会社と何が違うのか…。確かあの時、その会社の株価はそれでも600円台くらいだった記憶があります。

こういう状況のゴミ企業もたくさんあるのに「IPO株は簡単に儲かる!」という意味のわからない宣伝も乱立しているから、IPOに興味あるんだけどどうなの?という質問が来るのでしょう。これは証券会社の責任です。

そもそも、上場とは資金の調達なのです。生まれたての新しい企業ならまだしも、本当に経営意識がしっかりしていて、上場後に本業でちゃんと儲っている企業なら自社株買いをして上場廃止にしてしまう。わざわざ上場を維持して煩い株主と付き合う必要がない企業はたくさんあるのです(上場維持していると宣伝効果などは見込めるのかもしれなませんが)。非上場企業でも、一度は聞いたことのある企業がたくさんあります。こんなサイトもあるようです。

https://www.homemate-research.com/bc154/ranking/access/

IPOを積極的に奨めると、幹事証券会社は儲かるから良いのかもしれません。しかしあまりにゴミ企業が上場してくると、結局個人投資家が宣伝文句に嵌め込まれて死んでいく。冒頭でマザーズはゴミの掃き溜めだと表現しましたが、この様な理由があるからです。外国人投資家だけが積極的にバリュー株を上手く買い漁り、アベノミクスの時の様に日本人が儲かることはない。証券会社が腐っていると言われるのはこういった所以があることを是非知っておいてほしいのです。

どうせなら、証券会社はIPOのゴミ銘柄に素人を嵌め込むのではなく、本当に価値のあるバリュー株や成長株に個人投資家の資金を誘導してほしいと思っています。彼らは見せ板を始めとした違法行為を暗黙のルールで許されている。それはいったいなんのためかを考えて、プロとして、彼らの社会的な役割を果たしてほしい。

腐っているのは何も証券業界だけではありません。携帯電話料金で話題になっているように、電波業界もカルテルが酷く、全く健全ではない。各業界で先導している大企業が保守的な経営や小銭稼ぎから変化していかないと、日本の経済回復はあり得ません。戦前ならまだしも、NHKに月額料金を払ってまで情報を求める人間だって何割いるでしょう?本当に、我が国には腐った分野がたくさんあるのです。

長くなりましたが、IPOを取り巻くマクロ事情は伝わりましたか?

まとめ

○IPOが増えているが、マクロ視点でマネーの流れから考える必要がある。

○世界中の大金融緩和以降、日本株市場にマネーが集まっている。

○集まってきたマネーに便乗して、ゴミ企業を新規上場させる暴挙が横行している。

○それでは嵌め込まれた日本の個人投資家が滅んでしまう。外国人はちゃっかりバリュー株を買っている。

結論

合コンで知り合った相手が「あ、一応上場企業です」と言ってきたら、「こいつ投資の世界を知らねぇな」と警戒しましょう~

他の記事はこちらから探すと便利です。
https://note.com/n_kabu/n/n94f0f50bf81c

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