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【コラム】小手先の知識で「PER」を使わない~理論株価を考える~

2020年2月からのコロナ暴落のパニック売りにより、ほとんどの指標は機能不全に陥りました。テクニカル一辺倒の投資をする人には厳しい状況なのでしょう。いつも言っていることですが、まずは大局観を養うことが重要です。テクニカルは便利な道具になり得ますが、使う人の技量が低いことには道具を活かしきれません。4月上旬現在、少しずつパニックは解消され始めましたので、しばらくすれば各種の指標ももう少し機能してくるでしょう。そこで今回は、指標の使い方を【コラム】にしておこうと思います。最もメジャーな指標であるPERの解説です。

PERとは何か?

一般にはシンプルに「株価の割安度合いを表す」なんて言われる指標です。酷い解説だと、PER10倍以下は割安、それ以上は割高、くらいに教えています。そんなメチャクチャな知識なら頭に入れないほうがよほどマシです。何故この数字が割安さを示すのかを知らなくてはなりません。

PERは「企業の最終利益を発行株式数で割ったもの」です。例えば、PER10倍といわれている企業があったとして、この企業は

今期の最終利益:100億円
発行株式数:5億株 であるとします。

100億÷5億=20円(これが一株利益、つまりEPSとなります)

継続的にEPS20円の利益をあげ、それを株主に還元した場合に、10年で投下資本を回収できる株価水準がPER10倍、ということになります。基本的に上場株のPERは、未上場株のPERより高くなる傾向があります。株を売却したらお金は投資家に戻ってくるからです。

例えば、私が熱を入れている6633C&Gシステムズの4/10時点の株価やPERはこんな感じです。

株価:296円 PER︰15.5倍
一株資産(BPS):271.31円
一株予想益(EPS):20.31円

さっきの説明で言えば、今買えば15.5年で元本回収できるよ、という意味になります。20.31円×15.5年≒314(株価)なので、296円から遠からずな数字ということで、おおよそ合っていますね。これが本来のPERの意味です。

理論株価に踏み込む

しかし、ここまでの知識と発想では不十分です。もう一歩踏み込んで、理論株価も考えておきましょう。理論株価とは簡単にいうと「今の」会社の価値を理屈的に計算した株価のことです。しかし、株式投資は「未来の」価値を予測して買う行為です。理論株価が500円でも、将来性(成長率が良いなど)があれば600円でも700円でも買われるでしょう。だから理論株価が幾らだ、という数字はあくまでも参考程度に捉えると良いと思います。

さて、この理論株価を求めるには、いろんな計算式があります。ザックリと計算するのであれば、1株当たり純資産価値(BPS)+PER10倍(つまりEPS×年数)くらいで考えてOKです。

C&Gの例なら、271+(20×10)=471円
これが理論株価になります。理論株価の求め方は、証券会社等によっても異なります。「今の」企業としての価値は471円なので、296円という今の株価はもちろん、PER15.5倍で計算した314円でも割安だし、コロナ暴落前の370円で考えても割安なのです。だから単純にPER10倍以上は買われ過ぎ、なんて考え方では投資家が務まらないのです。

しかし多くの小型株は何年もの間、実際の株価は理論株価より沈んでいました。米国ならまだしも、投資意欲の低い日本では尚更、理論株価は絶対的に参考になるものではありません。ただし、本当に価値が低くて株価が安いのか、本当はもっと価値があるのに安値で放置されているのかを判断する材料にはなりますよね。私が実践している超長期投資では、この判別が重要になります。しっかり毎年稼げる能力のある企業であれば、低リスクで気長に投資が出来ます。

更に成長率も加味して考える

もう一段レベルの高い話もしておきましょう。成長率を加味して理論株価を考えると、もっと精密な分析が可能になります。当たり前ですが、C&Gの毎年の一株利益(EPS)は20円で固定されたままではなく、業績によって変動していきます。つまり1年後より2年後、2年後より3年後の成長率が重要になってきます。

成長率の計算には、複利終価係数を使います。このあたりからはファイナンシャルプランニングの内容になるので、少し専門的です。ネットで調べると、複利終価係数表というのが転がっています。いつぞやの記事に使った気がしますが、再掲します。

複利終価係数

向こう10年の成長率の予測は発表されていないので難しいですが、フィスコレポートによると、このあとは成長期に入るようです。そして過去のロイターの分析によると、C&Gの5年成長率は5%程度ということです。いずれもコロナ騒動の前の数値ですから、この後変わる可能性はありますけどね。とりあえず説明のためにこのまま数字を当てはめてみます。ちなみに暴落前の株価は370円くらいでしたから、この数字も使ってみましょう。成長率5%を見込んだ場合、例えば10年後の株価は370×1.63≒603円となります。

10年先を見据えた投資なら、370円の株価でもだいたいPER30倍までは買っても良いということになりますね。
EPS20円×PER?倍=603円ですから、?=603÷20≒30倍となります。暴落前の370円だとPERは約18倍でしたが、まだ割安だったわけです。

PERの正しい使い方がわかってきたでしょうか?10倍以上なら割高、ではダメなのです。最低でも理論株価程度は計算をし、精密さを求めるなら成長率も加味して、複利終価係数を使った理論株価を計算してみると良いでしょう。銘柄を厳選する際はもちろんまだまだいろんな指標を使いますが、PERはその中の一つに過ぎません。機会があれば他の指数についても解説したいと思います。

繰り返しますが、今は何もかもがコロナ騒動で大暴落し、指標はまだ機能不全に陥っています。もう少し機能するようになり、新しい決算数字も出てきたら自分の買っている銘柄を分析してみると良いでしょう。いろんな人がいろんな銘柄を奨めていますが、鵜呑みにせず自分でも分析してみることは大切です。投資に楽な道はありませんから・・・。事業内容に夢があって、高い成長率を出している企業であれば、その銘柄は化けるかもしれませんね。

アメリカはPER数十倍でも、成長が見込めるなら当たり前のように株を買います。それが本来の投資の姿です。だからアマゾンやアップルが育つのです。夢を評価し、未来に投資出来るから国の経済成長率は高くてなるわけです。日本の経済成長率はもう何年も最悪レベルです。投資に後ろ向きな時代が終わらないから、理論株価よりもかなり安い株価で優良銘柄が放置されます。ある意味、コロナ騒動によりチャンスが生まれています。新たに投資を始めた人たちは、市場の養分にならないようによく考える力を身につけましょう。

成長率や理論株価は、あくまでも一種の目安です。注目されて過熱すれば、理論株価なんて関係なく跳ね上がります。だから夢のある銘柄でなくては株は買われないのです。その企業の将来性を、事業内容や経営スタイルを見て、伸びると思ったものを自分で感じたままに買うことが大切です。

逆に、大型銘柄の成熟した企業の成長率は高くないでしょう。225銘柄の成長率が低いというのはまさにそういうことです。グロース(成長)株ではありませんからね。こういう銘柄は暴落で安くなったところを素直に買うに限ります。だから私は、この暴落の後はソニーやソフトバンクGなどで慣れないデイトレをしているのです。

大型企業は、コロナ騒動が落ち着いたら余った金でどんどん自社株買いをして、株式を償却して発行株式数を減らすか、もしくは配当を出すべきです。そうすれば株価はもっと上がっていきます。株価が上がれば景気は良くなります。

今日はなかなか難しい内容でしたね。理解が追いついている人は、もちろん今日の内容をアレンジしてもいいわけです。EPSの成長率をベースにして理論株価を出しましたが、株価上昇に一番直結するのは売上げだと思うなら売上げの成長率を使ってみればいいし、経常利益が大事だと思えばその成長率を使ってみても良いかもしれませんね。

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