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【コラム】チャートは意味を理解することが大切 ~現在株価と移動平均線の乖離が意味すること~

誰もが高値で株を買いたくないし、なるべく安く買いたいと考えるのは当然です。皆さんは買いのタイミングをどのように判断しているでしょうか?上手く使いこなせているかはさておき、多くの人は移動平均線(チャート)を見て売買タイミングを決めているのではないでしょうか?しかし、皆さんは上手にチャートを使いこなせているでしょうか?

A:多くの人は、チャートを見て「なんとなく」安そうな時に買っている

チャートを何日に設定して使うかは人それぞれの好みもありますが、一般的には短期線を25日、中期線は75日、長期線は200日くらいに設定して使う場合が多いでしょう。しかし、チャートをきちんと理解して使っている人は多くありません。気になる銘柄を「値頃感で」なんとなく安そうな時に買ってみたらまだまだ株価が下がってしまった…という失敗経験は誰しもあるはずです。

ネット等で解説を見ると「チャートは25日線が上向いていると上昇トレンド、下向きなら下降トレンドです」とか「75日線を割ったからヤバい、逃げろ!」など、シンプルで豪快な説明が多く見受けられます。チャートに限った話ではありませんが、指標や道具を使うなら、使い方以上に根拠や正確な意味を理解することが大切です。「線が上向いてるから上昇トレンド」というシンプルな解釈では、相場を到底理解出来ないのです。

ということで、今回は最低限知っておくべきチャートの基本的な意味と考え方をお伝えします。

B:まずはチャートが示す「意味」を知ろう

まず、基本的な意味から理解しましょう。移動平均線(チャート)とは、特定の期間の株価平均値を表した線です。例えば25日線とは、直近25日間の平均株価をグラフ化したもの、ということになります。例えばこれを書いている本日2021年9月26日には、9/1~9/25の終値の平均株価が、9/27には9/2~9/26の終値の平均株価が算出、反映されグラフ化されていくわけです。直近25日間の平均値が、日々断続的に描かれていくことになります。

※説明のためにシンプルな日付で例を挙げましたが、土日祝日は取引きが休みなので、厳密には25日ではなく「25営業日」で考えます。

だから「25日線が上向きなら上昇トレンドだ」という言葉は「最近の25日間(直近1か月程度)は株価が上昇傾向にあるから買いの圧力が強い状況だ」と解釈する方が、より正確な意味を掴みやすくなります。線が上向いているから上昇トレンドなのではなく、上向いた背景に「買い圧力の強まり」があることを見逃してはいけません。これがチャートが示していることの意味です。

C:必ずしも上昇トレンド=買いのチャンス、ではない

さて、「上昇トレンド」という言葉だけ聞くと「今、買うべきだ」と言っているように聞こえませんか?しかし、買い圧力が強いから「今」買うべきなのか、は別問題です。これを判断するには、チャートの意味をもう少し深く汲み取らなければいけません。

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例えばこの日足チャートは自動車メーカーのスズキですが、この画面をスクショした時の株価は4628円でした。200日線こそまだ上向いていませんが、25日線と75日線が上向いて買い圧力も強く、短期的にはまぁまぁ上昇トレンドなのでしょう。じゃあこの上昇トレンド状態なら今すぐどこで買っても良いかというと、そうとは言い切れません。このチャートの場合、直近は株価が上昇して各種移動平均線から上方向に少し離れてきていますよね?こういった現在株価と移動平均線の「乖離の大きさ」が何を意味するかを考えてみましょう。

D:現在株価と移動平均線の乖離の大きさが意味すること

そもそも「現在株価が移動平均線と乖離している」とはどういう状態なのでしょうか?先程「チャートは株価の平均値の推移を表している」と説明しました。この考え方をベースにすると、例えば上記のスズキの様に現在株価が25日線より上方に大きく乖離している場合、これは「直近25日間に買った多くの人たちに含み益が発生している状態だ」ということを意味します。つまり、いつでも利益確定の売り物が出てくる可能性がある状態(利食い圏)だと言えるのです。例に挙げたスズキのチャートでは、現在の株価が25日線だけでなく75日線、200日線よりも大きく上に乖離した位置にありますね。つまり、直近25日以内どころか、200日以内に買った人ですら含み益が発生している可能性が高いことが読み取れます。

E:調整(振るい落とし)は重要

どんな銘柄でも、このような利食い圏に突入すれば利益確定の売りが出てくるものです。つまり「売り圧力」が大きくなります。売り物が出てくれば、もちろん株価上昇の妨げになりますよね。だから含み益を抱えた人たちをしっかりふるい落とさないと、より高値を目指す時に邪魔になるのです。売りたい人には早めに手放してもらわなくてはならない。だから「振るい落とし」の作業をしなければいけません。ずっと前から安値を買っていた人や、短期目線で便乗してきた人は早めに売る傾向があります。彼らに持ち株を売らせて、加熱した株価を冷ますのです。これを「手替わり」とも言い、銘柄の保有者が変わることを意味します。買いの圧力が本当に強い場合は、売り圧力が強まってもそれを上回るでしょう。手替わりして更に高値を目指すことになります。

買いと売りの圧力のどちらが強いのか。それを確認するためにも敢えて株価を上下に揺さぶったり、過熱感を冷ますためにじっくり時間経過を待ち、チャートが現在株価に追いつくのを待つ(いわゆる横這い調整)ことが必要なのです。

F:大きく下方乖離した場合は買いのチャンスあり

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反対に、先程のチャートの直近安値である3407円を考えてみましょう。この時点では株価がいずれの移動平均線よりも下方に位置していたので、短期目線の人でさえ多くの人が含み損を抱えていた、ということになります。もしもスズキに伸び代も無く、買う人がいないダメ銘柄だったら、どんどん弱気の損切り売りも出てきたことでしょう。しかし誰かが買い集めたくなる良い銘柄であれば、株価はそれ以上大きく下方乖離せずに反転、回復してきます。この銘柄も大きく下方乖離せずに株価が反転してきたわけですから、買われる価値と素質があった、ということでしょう。

それに、高値の4805円をつけた5~6日前には上ヒゲを出して取り引きを終えていますが、その後は出てきた売り物を買い方がしっかり吸収し、更に株価は上昇しています。買い方が売り物をどんどん吸収している様子もチャートから汲み取ることが出来るわけです。

先程説明したように、これは株の所有者(ホルダー)が次々に入れ替わっている状態で、この入れ替わりが株価上昇の重要なエネルギーになります。スズキが更なる高値に進むためにはこういった調整は必要ですが、ホルダーも入れ替わって順調に推移しているように見えます。この様に、順調に推移している銘柄を調整のタイミングで買えればベストですね。

チャートの見方について理解を深めることが出来たでしょうか?決して「線が上向いていれば上昇トレンド」というシンプルな話では無いし、チャートの形やセオリーだけを暗記しても駄目なのです。チャートの意味を考えながら読み解かないと、自分のレベルも上がっていきません。

株価とチャートの乖離の大きさを計るなら、乖離率を用いると良いでしょう。乖離率=(現在株価ーn日移動平均株価)÷n日移動平均株価×100で計算可能です。例えば、現在株価1500円、25日移動平均株価1200円なら、(1500-1200)÷1200×100=25%、となります。乖離率についても「10%以上乖離したら買い(売り)だ」などとシンプルに語られがちですが、銘柄のクセや仕掛けている大口投資家の感度によっても変わります。

G:長期線の向きは最重要の要素

例に挙げたスズキのチャートは短期目線ではまずまずの上昇トレンドですが、本格的な上昇トレンド入りとは判断出来ません。長期線(特に200日線は大切)がまだ上を向いていないからです。チャートは長期線の「発言力」が一番強いのです。現在株価は長期線から上方に大きく乖離しているから、①株価を上下に揺さぶって調整するか、②長期線が自然に追いついてくるのを待たなくてはなりません(②は時間をかけて調整する「横這い調整」といいます)。いずれにしても「調整により現在株価と移動平均線の乖離が小さくならなくてはいけない」のです。そして調整が終わり、長期線が上向いてきたら株価を下から押し上げてくれるのです。だから今の200日線が上を向いていない状態では、株価が上方乖離するとまだ売り物が出てきやすいし、その売り物に株価が押されやすい。短期線や中期線だけが先走っている状況では、息の長い上昇相場は期待出来ません(短期目線の投資なら少しくらいの利益は出ると思いますが)。

短期線、中期線、長期線全てが上向きになり、株価が高値をどんどん取るようになれば素晴らしい上昇トレンドです。高値をどんどん取るということは、ホルダーが入れ替わりマネーの回転が利いている、ということを意味します。新しく参入してきたホルダーに入れ替わり、みんなが利益を得ることが出来ている状態です。早く利確したい人が消え、誰かが捕まって株価にシコリが出来ていない状態なら、株価は軽々騰がるようになります

まとめ

いかがでしたか?基本的なチャートの意味は理解出来たでしょうか?

○チャートを見て「なんとなく安そう」という値頃感で株を買うのではなく、チャートの意味を考えよう。

○チャート分析では、現在株価と各移動平均線の乖離の大きさを意識すると良い。上に大きく乖離するほど売り物が出やすくなり、調整が必要となる。

※乖離の大きさを分析することは、すなわち加熱感を分析することを意味します。

○長期線が上向き、高値を取りながらホルダーが入れ替わっていくのが理想的な上昇トレンド。

以上の点を意識して、自分の監視している銘柄の加熱具合や、仕掛けている大口の投資家(機関投資家)がどういう動きを演出しているかを考えてみると良いでしょう。自分が機関投資家の立場ならどこまで株価を振るい落とすのか…一歩引いて考えてみると無駄な打診買いは減るし、だんだん合理的に資金を動かせるようになります。

投資には長期的な観測が必要です。私が短期投資ではなく長期投資を好むのは、時間をかけて研究する方が銘柄のクセを知ることが出来る=無駄な打診買いリスクを下げることが出来る、という理由もあります。

今回は調整の重要性について説明しましたが、続きの内容は【コラム】「チャートの乖離調整は株価の上下だけではない ~横這い調整を理解する~」で解説します。乖離を調整する方法は株価を上下に揺さぶるだけでなく「時間をかけて横這い調整する方法もある」ということを説明します。どちらの調整方法も重要なので、ぜひ一読ください。

↓の【コラム】でもチャートの重要な見方について触れています。合わせて読んでみてくださいね。

おまけ:スズキのチャート、その後はどうなった?

2021年2月12日現在に追記をしています。この記事を書いた後、スズキはどのようなチャートになっていったのでしょうか?正解はこちら!

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やはり大きな調整(振るい落とし)がありました。時々しっかり乖離を解消し、徐々に下値を切り上げていくという教科書的なチャートになりましたね。ふるい落としの後は安値から14日程度観察し、底を割れなければOKと考えています。しかしスズキは底値から9営業日で前回高値さえも越えていったので、展開が早かったですね。

他の記事はこちらから探すと便利です。
https://note.com/n_kabu/n/n94f0f50bf81c

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