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【コラム】チャートの乖離調整は株価の上下だけではない ~横這い調整を理解する~

関連コラム:チャートの基本的な読み方➀

チャートは意味を理解することが大切 ~現在株価とチャートの乖離が意味すること~

チャートの基本的な読み方➀では、チャートを読む時はチャートが示す「意味」を考えたり、現在株価と移動平均線の乖離程度に注目することが大切だ、と説明しました。移動平均線から株価が上方に乖離すると、安値で買った人たちの利確売りが出てきて株価は一旦落ちてくることが多々あります(更に、機関投資家がこのタイミングで空売りを仕掛けてくることもあります)。そうやって株価が大きく騰がる前にはこの乖離調整が「振るい落とし作業」として何回か発生し、株価が大きく上下します。これが乖離調整の基本的な構造でした。

しかし、調整には必ずしも株価の大きな上下が伴うかというと、実はそうとも限りません。「横這い調整」で済む場合もあるからです。つまり、調整の方法には2種類あります。

A:横這い調整とは

そもそも、株価における調整とは「現在株価と移動平均線の乖離が埋まること」を意味します。では、現在株価と移動平均線の乖離が埋まるにはどうすればよいでしょうか?答えは簡単です。➀現在株価が移動平均線に近づいていくか、➁移動平均線が現在株価に近づいていけばよいのです。

➀「現在株価が移動平均線に近づいていく」とは「チャートの基本的な読み方➀」で説明した振るい落としなどの方法が代表的です。株価自体が大きく上下することで乖離調整する。つまり、株価が利確売り等によって下がり、移動平均線に近づいていきます。

しかし、②の場合は株価が動かず、移動平均線が株価に近づいて来るのを待つことになります。➀と➁、いずれの方法でも株価と移動平均線の乖離は小さくなるので、調整の役割を果たしているのです。現在株価が高い位置にあっても、その位置のまま時間経過を待てばやがて移動平均線が株価に追いついてきます。ソニーのチャートを例として見てみましょう。

これは、2020年9~12月頃までの日足チャートです。11月中旬頃までは株価が騰がって上方に乖離する度に振るい落としがありました(黄線)。しかし11月後半~12月頃になると、株価10,000円の目前ではしばらく静かに推移していたことがわかります。ほとんど大きな上下運動はなかった。これが横這い調整です。株価が横這いで推移している間に、移動平均線は少しずつ上昇してきていますよね。時間はかかりますが、現在株価と移動平均線の乖離が小さくなっていきます。

また、図の下段にはMACDという指標も付いています。横這い調整で乖離を埋めている間にMACDはデッドクロス済みとなり、指標的にもしっかり調整できていることがわかります。指標的な調整も終われば、株価は再び上に向かう準備が整うのです。

B:横這い調整から推測できること

横這い調整では株価は大きく下がりません。これは、利確売りで出てきた分の玉(ぎょく)を、新たな参加者等がしっかり買っているからです。買いの需要が大きいから株価が下がってこない、とも言えるでしょう。なので横這い調整期間にはある程度出来高があると良いですね。出来高が多いということは、その銘柄が活発に売買されていることを意味します。

※出来高が少ない銘柄には不人気な銘柄もあります。不人気で売買する人が少ないから横這い状態になることもあります。

もちろん買い手側には個人投資家だけなく機関投資家も存在します。空売りしている機関投資家以上の株数を別の機関投資家が買っているなら、株価はやはり落ちてきませんよね。我々の知らないところで、まさに札束での殴り合いが行われているのです。

C:感覚で株価が高いかどうかを判断しない

横這い調整が済めば、高値に見えた付近の株価でも手が出しやすくなります。あまり株を知らない人は、7500円の株が10,000円になったら「もう高くて買いにくい」と言います。ひたすら下がることを待ってしまう。株価しか見ていないと、株価の適正な値がわからないのです。今の乖離状態では、10,000円近辺は確かに高値圏です。しかし横這い調整で乖離が埋まり、MACD等の指標も調整が終われば、10,000円は過熱感のない適正な株価になりますこの様にして、株価は徐々に株価ステージを上げていくのです。

今回はあくまでも「チャートで見た際の」株価が高いかどうかを述べています。しかし本来は、チャート分析の前にファンダメンタルズ(財務)分析で銘柄を見ることが重要です。株価ではなく時価総額で企業の価値を考える、という視点が大切なのです。これはファンダメンタルズの記事で説明しようと思います。

「チャートの基本的な読み方➀」でもお伝えした様に、移動平均線は長期線の「発言力」が一番強いのです。例に挙げたソニーはまだ株価が長期線から上方に大きく乖離している状況ですから、長期線が株価に追いついてくるのを待たなくてはなりません(追いついてきた長期線が株価を下から押し上げてくれるイメージですね)。例えば長期戦を200日で設定するなら、直近200日の株価平均値がどんどん上がってくるわけですから、横這い調整が終わったあとの価格帯(ソニーなら株価10,000円)は決してもう高値とは言えなくなるのです。

まとめ

チャートを見る時は、乖離程度から加熱具合を計るだけでなく、仕掛けている機関投資家がどういう動きを演出しているかも考えてみると良いでしょう。「自分が機関の立場ならどこまで株価を冷やすか」とか「空売りしている機関投資家を罠に嵌めるならどのタイミングで大きな買いを入れるか」等…。その様に考えられるようになれば、もっともっと無駄な打診買いは減り、合理的に資金を動かせるようになります。

○株価と移動平均線の乖離を埋める「乖離調整」には、➀株価の上下を伴う調整と➁株価の上下を伴わない調整(横這い調整)がある。

○横這い調整の場合、買いの圧力が大きいため株価があまり下がらない。買い手に機関投資家がいる場合、彼らの動きを想像することも大切。

○いずれかの調整方法で乖離が埋まれば、高値に見えた株価帯は決して高値ではなくなる。

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