見出し画像

【コラム】相場サイクルの季節が切り替わるタイミング

相場サイクル論の大枠が理解出来たら、今後の投資計画がイメージしやすくなったと思います。2020年初頭が逆業績相場のどん底で、その後は大金融緩和により、金融相場の雰囲気に切り替わったのが2020年後半です。新しいサイクルに突入したことを感じさせる相場の動きになっています。

最近の相場サイクル

しかし、下記の記事のセクションDでも説明した様に「金融相場⇒業績相場」といった季節の切り替え時に、明確な区切りが存在するわけではありません。大きな事件が発生すると一つの期間が伸びたり短くなったりもするし、全体が10年ピッタリになるとも限りません。

でも、せっかく相場サイクルを理解し始めたなら、少しでも具体的に活用出来るようになりたいですよね。今回は「敢えて切り替わりを判断するなら、観察ポイントはどこにあるのか」を解説します

A:金融相場の直前は真っ暗!夜明け前が一番暗い

まずは新しいサイクルのスタートである金融相場の始まりについて観察ポイントを紹介します。つまり「逆業績相場⇒金融相場」に切り替わるタイミングを考えます。

この時期を一言で表現するなら「夜明け前」です。つまり、不景気が極まって一番世の中が暗い時期なのです。先に示した年表を見るとわかりますが、2018年はクリスマスショック、2019年は増税、2020年はコロナショックと、どう見ても景気も人々の心も冷え込んでいく出来事が連発しています。まさに大寒波の時期でした。

ようやく東の空が明るくなってきたのが2020年3~4月です。これは世界中で行われた大金融緩和のおかげです。金融相場はその名の通り、金融政策の効果に期待が持てると市場に判断された時に始まります。まだ暗い雰囲気の中、株が買われ始めて株価が底打ちするのです。金融緩和により金利が安くなってマネーが調達しやすくなるため、投資先を探す動きが出てくるのでしょう。金融相場のポイントは以下です。

金融相場のポイント

最初は公共系の銘柄が早く動きだす傾向にあります。景気刺激策として、高速道路や橋の建設などでお金を使うようになると、建設部品に使われる鉄鋼や木材、セメント等の需要が増加するため、これらの企業の株価も反転してきます。こういった素材系の銘柄は業績相場になってから本格的に株価が伸びる傾向がありますが、初動は金融相場の時に見えます。実際2020年8月に1000円程度で買った日本製鉄は、翌年5月には2000円を超えています。

徐々に波及した金融効果は、もちろん銀行株等の金融株にも波及します。低金利下では客単価が低いですが、お金の借り手が増えることで手数料も挙がります。株以外にも金など、様々な資産が買われるようになります。

ただし、金融相場の初期の頃はまだ景気はどん底で、投資マインドも冷え切っています。金融緩和が始まったところで、しばらくは疑心暗鬼状態が続きますから、懐疑の中で徐々に株価が反応し始める感触です。ただし、株価の反応が本格化すると、一気に高騰しやすい時期でもあります。

B:2番底を確認しよう

みんなが疑心暗鬼なので、ゆっくり株が買われ始めたところで「さぁ金融相場が来たぞ!」なんて自信を持って言い切れる人は皆無です。ましてや、コロナショックで日経平均が24,000円から16,400円に急暴落した後なら、心理的にも皆ズタボロどころか死にかけです。なので、まずは二番底の確認作業をするのが良いでしょう。これは2008~2012年の日経平均株価の月足チャートを見て頂くとわかりやすいでしょう。

底ダブル

1番底でとりあえず暴落が止まったかな?と思った後は「本当にもう底割れしないかな?」という確認作業が行われます。これが2番底です。2番底は、1番底の時に思い切って株を買った人たちの利益確定売りも相まって下落へと作用します。そのため、このような「W型」のチャートを描くことが多くなります。これは個別銘柄を分析する時も同じです。

2番底の他、暴落時の観察ポイントはこちらにまとめているので、併せて参考にしてください。

例えて言うなら、大ケガをしてなんとか止血に成功した状態が1番底。その後一旦包帯を剥がし、ケガの直り具合を確認するのが2番底です。治りが悪ければ、1番底の価格を割って更に下がっていくことになるでしょう。その場合はもう一度1番底の確認作業からやり直しが必要になります。

では、2020年コロナショック後の様子も見てみましょう。こちらは週足で示しています。

ダブル?底

あまりW型とは言えない形になっていますね。おそらく、大暴落直後に素早く世界中で金融緩和を行ったことが理由の一つです。しかも、対策に使われた金額も桁違いに大きかった。これが2つ目の理由です。一応、2020年5月や7月頃に2番底らしきものはありましたが、大金融緩和の勢いが優ったように見えます。

2008~2012年の時は政府の対応もイマイチでしたから、新しい金融相場までに約4年もかかってしまいました。この記事を書いているのは現在2021年2月ですから、コロナショックからまだ1年です。なので、もう2~3年は警戒感を持っていても良いかもしれません。

2020年7月の2番底確認作業ポイントは「東京のコロナ感染拡大」や、「アメリカで人工呼吸器が不足する」という悪材料ネタでした。こういった悪材料に反応して、2月の様な株価水準に下落するようではダメなのです。

C:金融株を観察すると様々なことが見える

日経平均のチャートを見れば、W底を描いて底入れ確認が出来ることがわかりました。しかしこれは、日本を代表する一部の銘柄たちの総和でしかありません。先程のポイントにも書いた様に、いち早く株価が騰がり始める分野の銘柄もある(公共系や素材系)し、その反対もあるのです。もしかすると、置いてけぼりになっている分野の銘柄もあるでしょう。
しかし、本格的な金融相場がスタートしたのであれば、いろんな分野の株が買われていきますので、置いてけぼりの分野は基本的に無いはずです。

しかし、一番出遅れがちなのは金融、証券、不動産分野の銘柄です。これについては下記コラムで詳しく説明しているので、併せて読んでみてください。

金融相場に必要な条件は、その名の通り金融株の株価底入れ確認です。金融政策で金利が下がると銀行の利益性は低下しますが、企業はお金を借りやすくなります。みんながお金を借りて設備投資や買い物が始まると、経済循環というエンジンがかかります。モノが売れ始め、循環が良くなってくると徐々に金利も上がり、銀行の業績も回復し始めます。つまり、銀行株の上昇は金融相場の後半~業績相場に突入した頃に顕著になります

D:企業業績も先取で予測することが大切

金融相場(株価)は実態経済を半年程度は先行した動きになるので、現状の実態経済の様子を見て右往左往していては投資家は務まりません。だから「東京でコロナの感染が拡大している=株価は上がらない(下がる)」という考え方は厳密には間違いです。東京で感染拡大している時期なら、もうその悪材料は株価に織り込み済みです。「織り込んだ上で一番底の値を割れないかどうかを試している」と見なければ、株価に振り回されてしまいます。

この考え方は、企業の決算発表を見る時も同様です。「業績が悪かったから株価はまだ下がる」という考えは間違いです。決算は「予測の答え合わせ」でしかないのです。決算が発表された時には、既に予測されている業績内容は株価に織り込んでいます。株価に織り込んでいないサプライズの材料がなければ、株価は大きく反応しないことが多いでしょう。そのため、この夜明け前の時期に発表された業績発表は「一番暗い時期の内容を示した過去のもの」と考えるべきです。この時期の投資は「現状は赤字、でもこれから金融相場で回復するならどこまで業績は伸びるか?」と予想する視点が非常に大切になります。これ以上はファンダメンタルズ分析の話になるので、別の記事で解説しようと思います。

E:金融相場から業績相場へ

金融相場期の投資は「今後の業績回復を予想する視点が大切だ」と述べました。予想の結果通りに業績が回復してきた企業の株は、更に買いを呼び込みます。予想や思惑ではなく、業績という実態が伴って株価が評価される期間、これが業績相場です。

金融相場で早くから株価が上昇し始めた銘柄は、いち早く結果=好業績が確定するものも多いでしょう。しかし、金融株などはおそらく出遅れるので、まだ業績相場に移行していないものもあります。つまり、分野別に、または個別に銘柄を見ると、金融相場の最中の銘柄と業績相場に移行している銘柄が入り乱れています。だから全体で見た時には、金融相場と業績相場の境目はわかりません。ある程度好業績が確定した銘柄が多くなってきたら「もう業績相場かな?」と考えるようにするしかないと思います。

しかし、観察すべきポイントはあります。金利の変化です。金融相場から業績相場に移行する頃になると、金利が底打ちすることが考えられ始めます。業績相場の中盤頃には、少しずつ低金利政策の修正も意識されることでしょう。そしていよいよ低金利政策が修正されるかも、というニュースが出る頃から逆金融相場が意識され始めます。

F:金利は、景気回復動向を測る目安

金融相場のスタートは金融緩和だ、という説明をしました。金融緩和は金利を下げる手法で実施されています。特に近年の日本の金利は「マイナス金利」まで導入していますから、それはそれはお金を借りやすい状況なのです。お金を借りやすい状況であれば、投資意欲は盛んになります。企業は設備投資をし、いろんな業界が潤うことで業績が上向くのです。しかし、経済が順調に回復基調を辿れば、やがて金利は上昇していきます。これは正常な景気回復の動向なのです。

銀行の利益を考えるとどうでしょうか?銀行にとって、低金利では収入が減ってしまいます。だから金融緩和スタート時はまだまだ苦しいのです。しかし金融相場の後半や業績相場の前半に差し掛かると「低金利状態もこれ以上は流石に進まないだろう」という考え方も出てきます。すると、銀行株も回復傾向に変わっていきます。…話が見えてきたでしょうか?何故私が金融や証券、不動産は最終ディフェンスラインであり、観察が大切かと言い続けている理由がわかるはずです。

相場サイクルの季節が変わるのは、金利に変化の兆しが表れるからなのです。金利の変化によって相場サイクルは発生している、と言っても過言ではないでしょう。

あとは政治がどう判断するかです。まだ不安定な景気状態だから金融緩和を継続させよう、という判断になれば、金利は抑えつけられることになります。しかし、日本は随分と長くマイナス金利政策を行っているので、流石にやり過ぎな気はしています

まとめ

○金融相場の開始は金融緩和。景気がどん底で投資マインドが冷え切っている状態からのスタートなので、疑心暗鬼を払しょくするまでに時間を要する。

○金融相場における投資は、赤字からの回復を狙うのが良い。ズタボロの企業業績がいかに回復するか、を織り込みながら株価が騰がっていく。

○ある程度企業業績に回復見込み目途が立つと、金融相場から業績相場の移行時期となる。正常な景気回復傾向としては金利の低下が止まる(止まり始める)ので、出遅れていた金融株などが金融相場の後半に上昇する。

他の記事はこちらから探すと便利です。
https://note.com/n_kabu/n/n94f0f50bf81c

にほんブログ村【株日記】

人気ブログランキング【株式初心者】



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?