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その8. 変身してパワーアップできるか?(ステルス型参入障壁)【新規事業・新商品開発における10の法則】

今回は、「8. 変身してパワーアップできるか?(ステルス型参入障壁)」について解説します。

現代は参入障壁が作りにくくなっている


新しいビジネスや商品の開発を考えるときに、参入障壁を意識することはとても大切です。しかしながら、変化の激しい現代においては、その参入障壁を作るのは年々難しくなっています。


参入障壁を作りにくくなっている理由は2つあります。


1つ目の理由は、インターネットの普及による情報伝達の早さです。
インターネットが普及する前は、新しい商品を発売し、それが世の中に知れ渡るまで随分時間がかかりました。例えば、日本で開発された新商品を世界の人たちが知るまで長い時間がかかりました。よってここに先行者優位という考え方が生まれました。
一方、現代においては、新商品を発売・発表したその瞬間にインターネットを通じて世界中にその情報が流れていきます。
こうした情報を集めて販売する専門の会社も存在します。
このようにして先行者有利の考え方が年々通りにくくなっているのです。


2つ目の理由が特許の効果が薄れてきている点です。
特許さえ取得しておけばもう安心、という時代は終わりました。

AppleとSamsungの訴訟合戦が非常に記憶に残ります。
それぞれ特許を踏み合いながら商品を開発し、最後は訴訟で解決する」このようなスタイルも年々増えてきているように思います。
なぜこのようなことが起こるのかというと、「訴訟において解決する方が利益が高いから」、という考え方ができるからです。
特許を警戒してその商品を出さない方がロスが大きいのです。よって年々特許による参入障壁の効果が薄れてきているのが現状です。


ではどのようにすれば良いのでしょうか。
そこで有効な考え方が、「ステルス型参入障壁」です。


ステルス型参入障壁とは(その1.Netflixの事例)



「ステルス型参入障壁」の事例として、Netflixを例に解説します。

スクリーンショット 2021-10-18 8.53.38Netflix 公式ホームページより引用
https://about.netflix.com/ja

1998年、Netflixはわずか30名の従業員と共に、ウェブサイトによるDVDレンタルサービスを世界で初めて開始しました。
当初扱っていた作品数は925タイトルでした。

1999年、定額制のレンタルサービス「マーキー・プログラム」を開始。
2005年には会員数が420万人を突破。扱う作品数も3万5千タイトルにまで増え、毎日100万枚ものDVDがNetflixを通じてレンタルされるようになりました。

2007年、Netflixは自社のコアビジネスを、それまでのDVDレンタルサービスからビデオ・オン・デマンド方式によるストリーミング配信サービスに移行。大手メーカーと提携し、ゲーム機(Xbox 360、PlayStation 3、Wii)、ブルーレイディスクプレーヤー、インターネット接続テレビ、Apple製品(iPhoneやiPadなど)およびその他デバイスでの配信に対応していったのです。

2021年7月現在、Netflixの加入者数は2億900万人で、そのうち7200万人がアメリカとカナダに在住しています。

ストリーミング配信で成功を収める一方、Netflixは既存作品の配信だけでなく、オリジナル作品の製作にも乗り出すようになります。2013年に配信を開始したドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、ケヴィン・スペイシーやロビン・ライトら有名俳優を主演に据え、製作費として1億ドル(約123億円)もの巨額が投じられたことで話題となりました。


Netflixはこのように、

DVD宅配レンタルサービス 

ビデオ・オン・デマンド方式によるストリーミング配信サービス

エンタメコンテンツ制作


と隣接する新しいビジネスドメインに展開しています。
つまり、会社をどんどん変身させて大きな成功を収めているのです。


ステルス型参入障壁とは(その2.任天堂の事例)

もう一つ、任天堂の事例を見てみましょう。

スクリーンショット 2021-10-18 10.28.18任天堂株式会社 公式ホームページより引用
https://www.nintendo.co.jp/

任天堂は、
1889年、花札の製造を開始。
1902年、日本初のトランプ製造を始め、1953年以降量産を進めます。
1973年、業務用レジャー・システム「クレー射撃システム」を開発。ゲームセンターで見るような大型ゲーム機を作りました。

そして1977年から業務用テレビゲーム機を発売、1983年に家庭用テレビゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売します。その後「ゲームボーイ」「ニンテンドーDS」「Wii」「Nintendo Switch」など、様々なゲーム機を発売し、家庭または携帯で楽しめるエンタメを提供し続けています。


このように、任天堂は、

花札・トランプ(カードゲーム)

 業務用ゲーム機

 家庭用ゲーム機

とエンタメの提供という共通項をもとに、
カードゲームの開発 → 業務用ゲーム機の開発 → 家庭用・携帯用ゲーム機の開発 と隣接するビジネスドメインに展開。
現在はオンラインサービス「Nintendo Switch」を展開する企業に変化を遂げて成功しています。


ステルス型参入障壁を成功させるには


このように、もともと持っていたサービス、もしくは設備の一部をうまく活用して、全く違うところに参入していく。これがステルス型参入障壁の考え方です。
ステルス型参入障壁を成功させるには、ビジネスのプランを考えるときに、一つのプランを考えるのではなく、「これが成功したら、その次はここに展開する。そして、そこが成功したら、さらにその一部を使ってまた次に展開する」というように、ホップ・ステップ・ジャンプのように発想するということがとても重要です。

また、ホップ・ステップ・ジャンプで考えただけ、企画で書いただけでは効果が薄いかもしれません。最初にホップを始めたときに、すでに次のステップの準備を進めておくというのも重要です。

そして、次のステップに出ていくことを競合に知られてはなりません。
ホップしか考えてないようなフリをしながら、実は次のステップの準備をしておく、ということが大事なのです。これが、ステルス型の「ステルス」という意味です。


先行者利益も取りにくく、特許も有効な参入障壁になりにくくなってきた現在、このステルス型参入障壁の考え方は、参入障壁を作る上で有効な手段の一つだと考えられます。

みなさんも、一つのプランだけを作って満足するのではなく、その先さらにその先一体何ができるんだろうかと考えながら企画をしてください。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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