その6. 現在のニーズか? 未来(想像)のニーズか?【新規事業・新商品開発における10の法則】
「6. 現在のニーズか? 未来(想像)のニーズか?」について解説します。
次の図を使い、現在ニーズと未来ニーズの違いから説明していきます。
現在ニーズ
上の図の左側が「現在ニーズ」です。
時間軸でいうと、今を起点にして目の前の事象やその事柄に対するニーズです。
例えば、
「風邪を引いたから風邪薬を飲もう」
「お腹が減ったからハンバーガーを食べよう」
こういったものが現在ニーズです。
未来ニーズ
一方、未来ニーズは時間軸が未来です(図の右側)。
まだ起こっていない、未来で起こるかもしれないという想像を基にしたニーズが未来ニーズです。
例えばサプリメント。サプリメントは、飲んですぐ効果が現れるというものではありません。サプリメントを飲んでおくと、未来にいいことがあるかもしれないと思って、ユーザーは使うのです。
保険も同じような考え方ができます。
保険に加入したその瞬間に何かメリットがあるわけではありません。
将来何かあったときのために入っておこう、未来の出来事を想像してニーズが生まれている。これが未来ニーズの考え方です。
現在ニーズと未来ニーズの違い
現在ニーズと未来ニーズは、そのユーザーのフィードバックに大きな違いがあります。
目の前の事象に対する現在ニーズについて、ユーザーのフィードバックは非常に厳しいです。
例えば、ある風邪薬を飲んで全く風邪の症状が良くならなかったら「もうこの風邪薬は買わない」と思うでしょう。また、ハンバーガーを食べて全く美味しくなかったら「もう二度と食べない」という風に思うかもしれません。
このように、現在ニーズはユーザーのフィードバックがとても厳しいという特徴があります。
それに対して、未来ニーズはユーザーのフィードバックが緩いという特徴があります。
例えば、サプリメントを毎日飲み続けて風邪を引いたとします。
するとどうでしょう、サプリメントのせいにするでしょうか。
「昨日の夜、体が冷えちゃったからな…」
「友達の●●君が風邪を引いていたからうつっちゃったかな…」という風に、他の理由を探してくれます。
「なぜこのサプリを飲み続けているのに風邪を引いたのだろう?もうこのサプリ止めよう」という風にあまりなりません。
このように、未来ニーズは想像から来るニーズですので、ユーザーのフィードバックが緩くなります。
皆さんも、新しいビジネスや商品のアイデアを考えるときに、自分の考えているアイデアがどちらのニーズを満たそうと考えているのかを意識するのが大切です。仮に現在ニーズをベースとしているのであれば、ユーザーのフィードバックが厳しいということを意識しなければなりません。
一方、未来ニーズをベースとしているのであれば、ユーザーのフィードバックはそれほど厳しくないのかもしれないという風に考えられます。
現在ニーズなのにユーザーの期待に応えられないような商品というのは、決して受け入れられません。一方で、未来ニーズであるにも関わらず、厳格なフィードバックを期待するような商品の設計というのも実は適してないのかもしれません。
それぞれのニーズの違いをよく理解した上でアイデアを設計するという考え方が非常に大切です。
3つ目のニーズ
そして、この現在ニーズと未来ニーズ以外に、3つ目のニーズが存在します。
図の真ん中に示した、いいとこ取りのニーズです。
これは何かというと、現在ニーズと未来ニーズの両方を合理的に満たしているニーズです。
これを満たすような商品の例としては、トクホ系の飲料が挙げられます。
このお茶は、喉が渇いているから飲みます。すなわち、現在のニーズです。
一方、このお茶を飲み続けることによって痩せるかもしれない、体に良いかもしれない。これは未来ニーズです。
このように、目の前のニーズと未来のニーズを合理的に結びつける、いいとこ取りのニーズを満たすことができれば、非常に強力な商品が生まれます。
同様に、もう一つの例がトリートメントです。
リンスとトリートメントの違いは、現在ニーズのみを満たしているか、または現在ニーズおよび未来ニーズも満たしているかの違いにあるのかもしれません。
すなわち、トリートメントの特徴として、トリートメントを使うことによって、翌日起きたときに髪の毛がゴワゴワするという問題を解決することができます。
これは目の前の事象に対応する現在ニーズです。
加えて、トリートメントとリンスの違いになりますが、使い続けると髪が綺麗になる、髪が健康になるといった効果が期待できます。すなわち、未来のニーズを満たしているということになります。
結果として、このいいとこ取りのゾーンを商品として配置できているという考え方ができます。
新規アイデア・商品を考える時に必要なこと
新しいビジネスや商品のアイデアを考えるときに、現在ニーズと未来ニーズを合理的につなぐことができる「いいとこ取りニーズ」に配置することができないかと考えることは非常に有効です。
もちろん、無理やりくっつけていいとこ取りをするのは、ユーザーはすぐに理解してしまいます。あくまでも合理的につながっているということがとても大切です。
この考え方を鍛えるには、世の中にある商品が「現在ニーズ」「未来ニーズ」「いいとこ取りニーズ」のうち、どのニーズを満たしているのかを考えることが非常に有効です。
日々の生活の中から、このニーズの違いを見極める力を養って、ぜひ「いいとこ取りニーズ」を満たすようなアイデアを確立してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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