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その2.螺旋階段の法則に則っているか?【新規事業・新商品開発における10の法則】

2.螺旋階段の法則に則っているか?」について解説します。
こちらの法則は、田坂広志先生の著作から引用させていただいています。
興味がある方は、ぜひ書籍を読んでみて下さい。


世の中は螺旋階段を登るように進化する


螺旋階段の法則とは、この図に示したように、世の中・ブームが行ったり来たりしながら徐々に進化していくという考え方です。

スクリーンショット 2021-09-01 21.33.23未来を予見する「5つの法則」
株式会社 光文社(2008/9/25)
田坂広志(著)


具体的な例を挙げますと、国の政治のあり方といったものが考えられます。
君主的な時代が長く続いたと思うと、その後に民主的な時代がやってくる。そしてまた、君主的な時代がやってくる。
このようにして、世の中は徐々に進化していくという考え方です。

もう少し身近な例を考えますと、住宅事情が考えられます。
「都心のマンションで、駅から近くオフィスにも近い、そういったところが便利だよね」というようなブームもあれば、「多少オフィスから離れていてもいいから、郊外で、自然が豊かで、戸建に住みたい」というロハス的なブームが発生する。そしてまたしばらくすると、都心でマンションでオフィスに近い方が便利でいい、というようにブームが再来します。
このようにブームが行ったり来たりしながら世の中が進化していくという考え方です。

そして、この螺旋階段のように世の中が進化していくというスピードが年々早くなっている。一人の人生の中でも、この螺旋階段が折り返して変わっていく、というものを何回か体験できる、そういった時代になってきていると考えられます。


そして、この螺旋階段の法則は、実は市場の形成、そして成長においても当てはまります。

スクリーンショット 2021-09-01 21.43.31未来を予見する「5つの法則」
株式会社 光文社(2008/9/25)
田坂広志(著)


ある一つの市場が発生すると、そこに競合が現れて徐々に競争が起こってきます。そして競合が増えて競争が激化すると、やがてその市場は飽和します。

すると、どうなるでしょう。飽和した市場は先祖返りするかのように進化していくのです。そう、螺旋階段を登るように進化していきます。
そして、先祖返りするかのように進化した市場でまた競争が起こり、飽和し、そしてまた螺旋階段が折り返して、先祖返りするかのように進化していく。このようなことを繰り返して市場は進化していきます。

しかしながら、人間は先祖返りするようなことは決してしません。
この図に示したように、この時の技術の進化を取り込みながら、そして先祖返りするかのように進化していくのです。

スクリーンショット 2021-09-01 21.54.33未来を予見する「5つの法則」
株式会社 光文社(2008/9/25)
田坂広志(著)


例を挙げますと、都心のマンションブームから郊外のロハスブームが起こりました。
では、その時に「竪穴式住居が売れて売れてしょうがない」このようなことが起こるでしょうか。そんなことはありません。
ロハスブームとは言っても、その時のテクノロジーを取り込んだ、最新の住宅がやはり人気があるのです。

このように、我々は市場形成において、市場が生まれ、競争が起き、飽和し、そして、その時の技術の進化を取り込みながら先祖返りしながら成長していく。これが、市場における螺旋階段の法則の考え方です。


コミュニケーション手法の進化事例

次に、螺旋階段の法則の具体的な例を見ていきましょう。ここで取り上げるのは、コミュニケーション手法の進化です。

スクリーンショット 2021-09-01 21.56.46未来を予見する「5つの法則」
株式会社 光文社(2008/9/25)
田坂広志(著)


コミュニケーション手法の進化において、一番最初にあるのが、手紙です。
手紙はその昔、受け取るまで非常に時間がかかりました。
日本でいうと、飛脚がえっさほいさと何日もかけて運んで行ったのです。また、国においては駅馬車や鉄道で運ぶといったことがありました。
何れにせよ、このコミュニケーションが伝達されるまで、非常に時間を要しました。

そして、テクノロジーの進化が起こりました。すなわち、電話の発明です。

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電話が発明されたことで、我々はスピードを手にすることができました。ほぼ時差なくコミュニケーションを取ることができるようになったのです。

そして、この電話の技術が普及し、満遍なく行き渡ると市場が飽和します。
そして、この時に新たなテクノロジーが発明されます。

そのテクノロジーとはインターネットです。

インターネットの発明により、我々は電子メールという新たなコミュニケーション手段を手に入れることができました。
そしてここで大事なのは、螺旋階段の法則により、世の中は否定的に進化していくということです。

具体的に説明しますと、「手紙ではあったけど、電話で失ってしまったもの」、その価値を再び取り戻すということです。

では、「手紙ではあったけど、電話で失ってしまったもの」とはなんでしょうか。
それは「相手の都合に合わせる」ということです。

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手紙はいつでも自分が読みたい時に読むことができました。ところが、電話になった途端、コミュニケーションのスピードは手に入れましたが、自分の都合の悪い時に電話がかかってくる、こういった不便が発生してしまいました。

そして、インターネットの発明により生まれてきた電子メールは、この欠点を見事に克服しています。
電子メールであれば、スピードも持ちながら、自分の都合のいい時にメールを確認することができる。このように、手紙にはあったけど、電話で失ってしまった「相手の都合に合わせる」という不便を克服することができたのです。


螺旋階段の法則で大事なこと

ここで大事なのは、「人間は、一度手にした便利は手放すことがない」ということです。
手紙から電話になった時に、我々はスピードという便利を手に入れました。そして、このスピードという便利さは二度と手放さない、ということになります。

すなわち、手にしたスピードという便利さは手放さずに、手紙から電話に変わった時に発生してしまった「相手の都合に合わせる」という不便さを電子メールが解決したのです。

そして、電子メールも全ての人に行き渡り、飽和してきました。そこで新たなテクノロジーが発明されます。

そのテクノロジーとは、スマートフォンです。
スマートフォンの発明により、また、螺旋階段の法則に従ってコミュニケーションの手法が進化していきます。すなわち、電話にはあったけど、電子メールによって失ってしまった価値・便利さが復活してくるという考え方です。

さて、その価値・便利さとは何でしょうか。
それは「感情を伝える」ということです。

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電話では、相手が怒っている、悲しんでいるという感情が声の調子により簡単に伝えることができました。一方、電子メールで伝えるには非常に難しいです。
例えば、非常にシンプルな文面のメールを受け取ると、「あれ、もしかして怒っているのかな?」と感じてしまうこともあるかもしれません。

そして、この電話ではあって電子メールではなくなってしまった感情を伝えるという便利さを、スマートフォンの発明が見事に復活させました。すなわち、SNSおよびスタンプのやりとりによるコミュニケーションです。
図に示したように、このスタンプをもらって、「あれ、怒っているのかな?」と考える人は少ないでしょう。
この簡単なスタンプのやりとりによって、感情を伝えることが可能になりました。

先ほど説明したように、一度手にした価値「スピード」「相手の都合に合わせる」ことを失うことなく感情を伝えることを可能にしたのです。


未来のコミュニケーション手法とは


では、現在の状況はどのようになっているでしょうか。
SNSおよびスタンプによるコミュニケーションも飽和してきたと考えられます。そろそろ螺旋階段が折り返すタイミングかもしれません。

さて次は、どのように折り返すのでしょうか。
ここでも同じように考えます。


電子メールにはあったけど、SNS・スタンプによって失われてしまった価値が復活してくる
という考え方です。さて、それは何でしょうか。

いろいろ考えられますが、その一つは「正確さ」です。
電子メールは、内容を正確に伝えることが可能ですが、簡単なスタンプで内容を正確に伝えるのはとても難しいです。ではどのようなテクノロジーを取り込んで螺旋階段が折り返していくのでしょうか。

例えばですが、近年音声の認識技術の進化が非常に著しいです。もしかしたらこの音声認識技術を使って、昔でいう留守番電話(留守録)のような技術が進化し、コミュニケーション手法になるという未来も考えらえます。


さて、みなさんが実際に新しい事業を考えたり、新しい商品を考えたりするときに、螺旋階段の法則に則って考えるということは非常に大切です。

このときに、みなさんが携わっている事業や商品が飽和していないのであれば、螺旋階段が折り返すことはあまり意識する必要はありません。

一方、競争が激しく、すでに飽和している場合は、そろそろ螺旋階段が折り返す時期ではないか、という発想がとても大事になってきます。
そして、新しい技術を取り込みながら、「昔はあったけど、今失ってしまった価値・便利さ」を復活させるかを考えることが非常に大事です。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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