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その1.ゴールドラッシュ戦略【新規事業・新商品開発における10の法則】
毎週月曜7:00に更新する【新規事業・新商品開発における10の法則】。
まずは、1つ目のゴールドラッシュ戦略について説明します。
ゴールドラッシュ戦略
時はアメリカ、西部開拓時代。
多くの人たちが西へ西へと向かいました。
砂金を掘るためです。
暗い穴倉にもぐって、毎日砂金を採り、一攫千金を夢見ている。
そんな人たちが多くいた、そんな時代です。
リーバイ・ストラウスジャパン株式会社 公式ホームページより引用https://www.levi.jp/lvc.html
その時、一つの企業が大きく成長しました。
みなさまご存知のリーバイスです。
リーバイスは当時、テント用の丈夫な布地を商品として持っていました。そして、この布地を使って何か他の商品ができないかと考えていて、開発したのが、丈夫な破れないズボン。
しかし困ったことに、このズボンはあまり売れなかったそうです。
そう、ズボンはなかなか破れないからです。
そこでリーバイスの人たちは考えました。
「金鉱夫たちに使ってもらったらどうだろうか。」と。
金鉱夫たちは毎日暗い穴倉に入って、潜り、這いつくばって金を掘ります。
そう、ズボンが簡単に破れて困っていました。
そして、このリーバイスの破れないズボンは、金鉱夫たちにとても喜ばれました。
リーバイ・ストラウスジャパン株式会社 公式ホームページより引用 https://www.levi.jp/levis-history.html
ちなみに、今では当たり前のこととなっていますが、当時のリーバイスは、金鉱夫たちの意見をふんだんに商品に取り入れたそうです。
例えば、「ここが破れやすい」という意見があると、必要な箇所を補強する、そして「細かい砂金を採った時に、ポケットに入れると無くなっちゃうんだよね」そういったニーズに対しては、ポケットの中にもう一つポケットを作る、という工夫をしました。
こうした工夫は今でもデザインの一部として残っています。
ビジネスチャンスが生まれる場所
さて、ここでの学びは何でしょうか。
そう、多くのヒト、モノ、カネが集まるところには、その周辺に新たなビジネスチャンスが生まれているということです。
鉱山に潜って金を掘るのもいいですが、実はその周辺に、破れないズボンが欲しいというニーズがあったのです。
このように、新しいビジネスや新しい商品を企画する際には、ヒト、モノ、カネの流れがどちらに向いているのか、その流れを把握することがとても大切です。
そして、この金鉱夫たちのように実際にその金山に潜って金を掘るのもいいですが、その周辺に新たなビジネスチャンスが生まれているということになります。
この、ヒト、モノ、カネの流れに逆らってビジネスを始める、もしくは商品を企画することは決してやってはいけないとは言いませんが、オススメはできません。
この流れを見極め、その中に飛び込むのか、もしくはその周辺に新たなチャンスが生まれていないか、そういったことを見極めるのはとても大切です。
これがゴールドラッシュ戦略です。
そしてこのゴールドラッシュ戦略においてもう一つ大切なことがあります。
ヒト、モノ、カネの流れの他に、流れを変える大切なもの、それはテクノロジーです。
新たなテクノロジーが生まれると、そちらの方に、新しい大きな流れができていきます。そして、その大きな流れの周辺に、新たなビジネスチャンスが生まれています。
ゴールドラッシュ戦略の具体事例
続いて、ゴールドラッシュ戦略について、新たなテクノロジーが生んだ新しい領域について解説します。具体例=CAS冷凍について解説します。
まずはじめにCAS冷凍技術について解説します。
株式会社カネ吉ヤマモトフーズ 公式ホームページより引用 https://www.oumigyuu.co.jp/SHOP/215080/list.html
この図に示すように、従来の冷凍技術では、水を凍らせる際に、水が氷の結晶として成長してしまうという問題がありました。
この結晶は、凍らせる対象の細胞を破壊してしまいます。
例えば、肉や魚ですと、氷が結晶になることにおいて、肉や魚の細胞が壊れてしまいます。そして、これを解凍すると、壊れた細胞の中から旨みや肉汁が出てしまう、いわゆる「ドリップ」という現象が起こってしまいました。
結果として、冷凍することにより、肉や魚の旨み・風味が損なわれてしまうという課題がありました。
一方、上記に示すCAS冷凍技術は、凍結の際に強い電磁波によって水分子を高速に振動させます。そして急速に冷凍することによって、水が氷の結晶に成長することなく冷凍することが可能です。
結果として、対象となるものの細胞を壊すことなく冷凍することができる。よって解凍した時も肉や魚の風味を損なうことなく解凍することができる、これがCAS冷凍技術です。
このCAS冷凍技術は、肉や魚を新鮮なまま凍らせることができる技術として幅広く応用されてきました。
しかし、現在、このCAS冷凍技術、意外なところで活用されています。
それはiPS細胞を凍結保存するシーンにおいて活用されています。
iPS細胞は、その細胞そのものがとても大切です。凍結保存するときにその細胞が壊れてしまっては意味がありません。よってこの細胞を壊さずに保存できるというCAS冷凍技術が応用されているのです。
山中先生らによるiPS細胞の開発、そして進歩は、大きな流れを生みました。iPS細胞の周りには、ヒト・モノ・カネが多く集まっています。
こうしたiPS細胞の大きな流れの周りには、iPS細胞を壊さずに凍結保存するという新たなニーズが生まれていました。
すなわちこれはゴールドラッシュ戦略の事例の一つと言えます。
このように、大きな研究による発見、もしくは大きな技術的な進化というのは、新しい大きな流れを生みます。このような流れの中で新たなビジネスや商品を考えるというのもいいですが、その周りに新たなニーズが生まれているかもしれない、このようにして見ることはとても大事なのです。
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