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ホログラフィック宇宙論

これから夢のない話をします(笑)。ホログラフィック宇宙論ってご存じでしょうか。

ホログラフィック宇宙論とは

1970年代、物理学者のヤコブ・ベッケンシュタイン氏が「ブラックホールの内側の情報は3次元の体積(かさ)ではなく2次元の表面(境界)にエンコードされている」という理論を発表しました。20年後、レオナルド・サスキンド氏とヘーラルト・トホーフト氏はその考えを宇宙全体に拡張し、それをホログラムになぞらえました。つまり、我々の3次元の宇宙はすべて、2次元の情報から生まれてくるという考えです。

ホログラフィック宇宙論はブラックホールの矛盾から生まれてきた

ブラックホールは事象の地平面を越えると全ての物質は崩壊してなくなってしまうのか、という問題がありました。物質がブラックホールに落ち込んで消え去るとエントロピーも永久に失われ,熱力学の第2法則(エントロピーの法則)が破れてしまうように見えます。下図は事象の地平面の概念図です( https://cdn45.atwikiimg.com/stein_sgate/?plugin=ref&serial=348 より)。

エントロピー : 熱力学および統計力学や情報理論において定義される状態量。熱力学において断熱条件下での不可逆性を表す指標として導入、統計力学において系の微視的な「乱雑さ」を表す物理量という解釈が追加され、統計力学での結果から、系から得られる情報に関係があることを指摘、情報理論にも応用され、情報理論では情報の乱雑さを表す尺度として用いられている。一言で言えば、混沌(こんとん)性・不規則性の程度を表す量。
熱力学第二法則 : エネルギーの移動の方向とエネルギーの質に関する法則。熱力学第二法則は、次の3つの原理や法則で説明される。
1.エントロピー増大の法則。系の乱雑さは増える方向に働くという法則で、例えば水の中にインクを1滴垂らすとインクは垂らした位置から広がるが広がったインクが一箇所に集まってくることはない現象。
2.クラウジウスの原理。外部から何も変化を与えずに低温から高温へ熱を移すことができないという原理。例えば冷めた湯飲みのお茶が外部の熱を吸収して熱いお茶にはならないという現象。
3.トムソンの原理。一つの熱源から熱を受け取り,そのすべてを仕事に変換することは不可能いう原理。例えば自動車のエンジンは、ガソリンを燃やした 「熱」を 「ピストン運動」 に変換するが、ガソリンの持つ熱エネルギーを100%ピストン運動に変えることはできず、一部は必ず熱になる現象。

ヤコブ・ベッケンシュタイン氏は英ケンブリッジ大学のホーキング氏らの研究成果にヒントを得て、「ブラックホールは事象の地平面の面積に比例したエントロピーを持つ」と1972年に提唱しました。ビットで測ったブラックホールのエントロピーは、プランク単位で測ったその事象の地平面の表面積に比例する、つまり、(3次元である)情報は(2次元の)面積と等しく、またブラックホール内部でも情報は失われないということになり、これを宇宙全体に拡張して適用すると、宇宙の実体が「情報宇宙」であるということを示すことになります。

人間の知覚は脳の認識に過ぎない

人間はすべての感覚はあり、すべての実感はありますが、それはあくまで人間の脳で知覚された主観的な感覚であって、現実の宇宙は平面に記述された情報にすぎず、全ての本質は情報にあり、エネルギーと物質は副次的なものであるという考え方ですね。

アインシュタインの相対性理論も最初は俄に信じられなかった

これはなかなか理解しがたい考え方だと思います。しかし直感に反するという意味では、ニュートンの万有引力の法則にあった前提、つまり物体を加速し続けると速度が無限大になってしまうという問題に対して、アインシュタインは光速度不変の原理で全ての物体は光の速さを超えないと否定したことについても十分、直感に反します。普通に考えれば物体が光の速度に近づくと時間がどんどん遅くなり、空間が歪むというのは考えづらいですよね。天文学の地動説もコペルニクスが指摘するまでは天動説がずっと信じられてきました。それと同じ事だと思います。

アインシュタインは「神はサイコロをふらない」という自らの信念を最後まで曲げることができず、量子論を否定し続けて亡くなりました。しかし、現在、量子論を否定する物理学者は存在しません。それは相対性理論がある程度まで正しいのと同じ程度に量子論も確からしいということは理論と実験から明らかになっているからです。

ホログラフィック宇宙論をコンピューターゲームに例えると

このホログラフィック宇宙論について、家庭用ゲームで例えてみます。家庭用ゲームのキャラクターがボタン操作でジャンプしたとして、ボタンを離すとキャラクターはゲーム内の地面に着地しますが、この時の重力はあくまでプログラムで表現されたもので実際の重力ではありません。「あたかも重力に支配されているかのようにプログラミングされた」キャラクターの動きが画面に映し出されているに過ぎず、それをキャラクターに重力が発生していると思っているに過ぎません。この時のゲームを動かしているプログラムそのものが情報であり、極端に言えば、我々の宇宙もこれと同じである、というのが「ホログラフィック宇宙論」です。

全ての存在は01で表された情報に過ぎないのか

我々がプログラムされた登場人物だとすれば、ホログラフィック宇宙論を検証するにはゲームプログラム内の登場人物が自分自身について解き明かすくらい難しいということが想像できます。端的に言えば、全ての存在は01で表された情報に過ぎないということになり、我々の現実世界も例えて言えばコンピューターシミュレーションで表現された世界に過ぎないという、まったく夢のない話になります。

媒体や記録方法の違いと物事の本質は別物

ここで、ちょっと話を変えます。凄く感動する映画があったとして、それが35mmフィルムに記録されているか、それとも01データとしてハードディスクに記録されているかは、その映画の本質とはなんの関係もありません。ホログラフィック宇宙論は単なる現在の時空間のエンコード方式の議論に過ぎず、この時空間がどのようにエンコードされているとみなした方がより矛盾なく物理現象を説明できるか、という話で、記録媒体が35ミリフィルムかハードディスクの01データかで、映画の本質的価値が変わらないように、我々の生きている現実がどのような宇宙論によってより整合的に記述できるかによってこの現実空間の本質的価値は変わりません。我々が現実と思っている時空間の「外側」から見た現実が単なる01の羅列のプログラムコードであったとしても、それは現実の「内側」にいる我々には関係のないことです。

最後に夢のある話を...

また、夢のある話をしますと、全てが01の情報から発するとすれば、世界は「何でもアリ」ということです。極端な話ですが、RPGの世界の「剣と魔法」が支配する世界やハリーポッターの様な世界も十分あり得るということです。自分は恐らくそれは別次元の世界であるんじゃないかと思っています。コンピュータープログラムで言えば、一つのプログラムコードが一つの世界を構成していて、それが何本も走っているのが現実世界ではないかと思えます。物理法則はプログラム次第で如何様にも変更できます(実際物理法則は計算上500億通りくらい作れるらしいです)。

ということで、どこかにRPGのような魔法で世の中が動いている世界もあり得るという「夢のある話」で終わりにしたいと思います(笑)

同内容の記事はg.o.a.tにも公開しています。

#ホログラフィック宇宙論 #夢のない話 #でも最後は夢のある話 #熱力学第二法則 #相対性理論 #量子力学

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