鎖錠第=\月 / 20200602

待ちきれなかったね、美味しいアイス、たまには、歯が欠けるくらいの愛情だって、厭わない。入院ベッドの上で、点滴を体内に飼いながら、消毒液の匂いに頭をくらりくらりとやられているんだよ。清潔。有人飛行だって、今はそういう時間らしい。お昼ご飯を食べたら、まずは空を見上げて、次は僕があの場に行くんだなあと覚悟を決めるべきなんだって。洗濯物を干しながら看護婦さんが暢気に告げる。鉄柵越しの青空に、何を見ようというのか、僕にはよく分からないけど、とにかくここから▓人類初の飛行があるって言うから、きっての宇宙おたくの僕は、土星の輪っかに触って、あわよくば持って帰るか、それで入場規制されたら木星のところにもっていってどうぞさんをしてこようと思ってる。それくらい夢に溢れている。木星が要らないよって言って、土星の方にやって、いや最初から輪は俺のものだったのに、なんだか損だけしたような気持になって、暗い宇宙で何事もの無かったかのように、新惑星が加わっていることに、気付いていたかな?地球とはちょっと違う軌道に居るんだ。地球が見たかったから。地球が好きだから。特等席なんだよ。第二の月。今度は何度でも不気味に、嫌って欲しい。堂々と。だから器用に許しを請おうなんて言うんでしょ。面の皮がマントルくらいには厚いんだね。僕はずっとここで、人の気分の手綱をちょっと引いたり、戻したりをしながら、ずっとずっと彼を見て、彼の死を見て、人類全員の死を見届けるまでは、絶対に死なないって決めたんだ。

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