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夜な夜な、耳が鳴る

夜な夜な、耳が鳴る。

耳がすごく鳴るので眠れない。
あんまりだから、北の耳を千切って窓の外に放り投げたら、あ、アスファルトに落ちたな。
アスファルトの上に落ちた耳がジリジリ鳴っているのが聞こえてくる。うるさいなあ。イライラする。
イライラしながら南の耳を千切ってやたら滅法にぶん投げたら、あ、天井に張り付いた。

天井には昨日押しピンで留めた耳がある。「イライラしてるねんから、鳴らんといてっ!!」と天井に向けてピシッと言ってやったら、し、、、。奇跡のように静かになった。微妙な具合ににどの耳も細かく震えているけど。

真ん中の耳も、よいしょ、とちぎって適当に投げたら失敗。パタリと床に落ちた。
床に落ちた耳が鳴り出して、あ、やばい!と思ったら、天井の耳も一斉に鳴り出した。
ああ、もう、うるさいったらうるさい。もう、頭が痛い。

藁半紙でできたペラペラの紙人間がワラワラ歩き回ってガサガサうるさい。
頭をちぎって投げちゃえ!よ、こい、あー重い。

この世には、茶色い人と、桃色の人と、緋色の人と、青い人と、緑色の人がいるのだ。私にはこの世なんてものがどこにあるのか分からないけれど、きっと何処かにある不思議な世界に違いない。
そこでは青い色を優しくそっと薄めると、透明な黄色、見えない黄色になる。

それでね、見えない黄色の色をした蝶々がね、そこここにヒラヒラ飛んでいて、
その蝶々は青い人にしか見えないんだって。

それでね、青い人は言葉を持っていなくて、言葉を持っているのは緋色の人だけなんだって。

だからさ、緋色の人はその蝶々の存在を知らないの。
桃色の人の話は今度するね。
茶色い人の話はしたくない。いるからいる、と言ったけれど、それが私の限界。

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