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リップマン 『世論 (上)』 を読む。
1922年に刊行されたメディア論の古典。若くして第一次大戦時に政治の場において世論操作に関与、後にメディアの御意見番として活躍したウォルター・リップマン(米国人 1889-1974)の主著。人間が如何に「ステレオタイプ」な価値観に囚われてしまうかを豊富な事例を用いて説明し尽くす。
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「われわれはたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る」(本書111頁)というフレーズは有名。なぜそうなのか、そこには「労力の節約」と「立場の保全」という大きな理由がある。新聞やニュースの伝える事実は、真実とは異なる。事実と真実の間を埋めるのは、個人の想像でしかない。著者はそれを「擬似環境」と命名する。
擬似環境は、個人の持つ「好む思考」や「生きる立場」の混成物だと言えるだろう。ある事実に対する理由は、擬似環境に適合するように条件付けられていく。真実が切り取られた事実として伝えられ、それぞれの定まった想像で解釈される。
ウクライナ危機において、ロシア国内で政府のプロパガンダを信じる人たちは、限られた情報の中から、ナチ化したウクライナ人がロシア人へ残虐行為を働いているという「擬似環境」を作り上げているのかもしれない。
本書の内容を、これほど日々実感することはない。マリウポリ陥落など、自分にとって不都合な報道ほど、目を逸らしてしまいたい反面、ウクライナ軍が反撃しているというニュースは何度も見て「良し!」と叫ぶ。
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(出典: https://www.tokyo-sports.co.jp/social/4056419/?amp)
開戦から少し経った頃、ネットニュースに、ロシアの特殊部隊「スペツナズ」がアメリカの傭兵部隊「アカデミ」に敗北したという記事が掲載され、多数のコメントが投稿されていた。報じたのは東スポだけであり、真偽は不明だが、皆がこのようなニュースをどれだけ渇望しているかが、それらの反応で分かったような気がした。
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本書は(上)と(下)の構成。これから(下)も読み進めます。
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