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借家か持ち家か?僕の回答案

一生借家で暮らすか、あるいはマンションや一軒家を購入するか?
これは古くて新しい問題だと思いますが、僕は断然持ち家派です。なぜなら、家族がいるから。

フィナンシャルプランナーの中には、「持ち家は無駄なコスト」と切って捨てる人がいる。確かに生涯独身を通したり、共働きの夫婦で子供がいないなら、僕も貸家暮らしを選んだかもしれない。でも僕には、「ちゃんと勉強して稼いで結婚して家を買って、子供を育てる」という漠然とした人生目標が幼いころから埋め込まれていたので、結婚してから迷わずマンションを買いました。そこに今も住んでいて、予定通り子供も生まれて、もうあと5年で最後のローンが終わります。

残された家族のことを考えるなら、家を買うのが最善?

マンションを買って驚いたのは、強制的に生命保険に入らされて僕が死んだら残されたローンは保険料で賄って、マンションはめでたく奥さんのものになるという当たり前のシステムでした。買い前は知らなかった。

よく考えたらそうだよね。家庭の稼ぎ頭の収入を前提にローンは組まれるわけなので、その人が死んだらローンは払えなくなる。融資する側にとっても「死なれたら破たん」は嫌なので、生命保険を掛ける。

ところが借家だとこうはいかない。例えば家賃12万円のマンションに暮らしていたとして、夫が死んだら専業主婦の奥さんにはそんな家賃を支払う経済力はないですよね。必然的にそこを出ていって、実家に身を寄せることになる。これが生活の破たんにつながることも多い。

身を寄せた実家が都内に住んでる大金持ちならともかく、実家に余裕がなかったり両親と仲がイマイチだったりすると残された家族が大変な目にあってしまう。僕はこれだけは避けたかった。

もちろんマンションのローンは生命保険で完済できても、管理費や修繕積立費とかは必要で、生活費も教育費もかかる。でも生活の中で家賃がやっぱり一番負担が大きいわけで、それさえクリアできれば残された奥さんがアルバイトに出ても何とか「夫が死ぬ前の生活が維持できる」可能性が高い。

ただしここで問題なのは、「奥さんとの間に子供がいないと、残されたマンションは奥さんがすべて相続できないこともある」ということですね。要するに、夫の遺産に対して夫側の親族が相続権を一部持つことになるからです。まあ普通は、夫に先立たれて悲しむ嫁から「住んでるマンションを1/3寄越せ。それか金よこせ。できないなら、マンション売って、金を1/3よこせ」なんて言えないですからねえ。でも子供がいない場合、妻の相続権は2/3しかないのでこの可能性はあります。

「いつまで借家を借り続けることができるか」は「どこで死ぬか」問題と同義

もう一つ僕が恐れたのは「年を食い過ぎると素敵なマンションを借りれない」ということです。僕は都会志向が強いので、最低でも50平米のマンションで駅近で便利か、環境が良くて暮らしやすいところに住みたい。でもこういうマンションって、やっぱり人気なのですよ。

「好き嫌いを言わなければ、マンションなんか余ってる。今は超借り手市場だ」というのは僕も知ってます。でも僕が住みたいのは人気が集中するエリア。そこには「借り手市場」なんて概念はありません。超貸手市場なのです。オーナーが借り手を選ぶのですが、30代の若夫婦(子供なし)ならともかく、60代の身寄りがない老夫婦には貸したくありません。まあ当然だよね。貸した部屋で死なれたら困るもんね。しかも孤独死とかされちゃって、3か月後に腐乱死体で発見されちゃったら「事故物件」扱いされちゃって、普通の入居者も避けて通るから家賃値下げしなくちゃいけなくて大損害だもんね。

会社を定年退職した後に今住んでる賃貸の部屋を出て、借り手市場のプチ田舎に引っ込むという手もある。家賃も安いしね。あるいは貸し渋りしないけどちょっと不便なUR賃貸住宅(いわゆる公団住宅)を狙うのも有力だ(実際、僕の知り合いの50歳以上の家庭持ちはURに住んでる人が多い。たぶんそこで死ぬのでしょう)。

僕が借家派の人たちによくアドバイスしているのは、「50歳超えたら、そこで死ぬつもりで東京近郊のURに引っ越せ。家賃は10万以下に抑えろ。独立した子供は帰ってこないと思え」です。そしたら何とかその家で安らかに死ねます。あるいはお金があれば介護付き老人ホームに入っても、未練はないはず。

老後に子供と縁をつなぎたいなら都心に住め?

僕は奥さんとよく、「子供たちが独立して出ていったら、渋谷のマンションに住もう」と話してます。実は僕は渋谷にも100平米超のマンションを持ってる。そしてなぜそこに住みたいかというと、その方が子供たちも遊びに来やすいから。今、僕の両親は神戸に住んでいるのだけど、やっぱり親に合うのは年に2~3回なんですよ。今は「もうあと20回会えないかもしれないな」という予感がしてきたので、正月・GW・夏休みとできれば年に3回は最低でも帰るようにしているけど、やっぱり少ないよねえ。東京と神戸って想像以上に遠いのです。

独立した子供たちはたぶん東京で働くと思うのだけど、もし僕たち夫婦が渋谷に住んでいたら、子供たちはちょくちょく来てくれるような気がする。飲み会で遅くなって「タクシー代ないから泊めてー」とかね。まあそんな風に計画していて、NY勤務が決まってもう帰ってこない…とかなっちゃうとショックなんだけど。

ローンは30歳から25年で組んだとしても55歳で返し終わる。55歳になった時にそのまま住み続けるか、あるいは数年後に処分して違う人生を考えるかは分かりませんが、「選択権が自分にある」ということは僕には大きいなメリットだと感じています。

もちろんデメリットとして、死なないまでも僕が鬱病とかにかかってしまって働けなくなってローン途中のマンションを捨て値で売らなくちゃいけないとか、天災が起きて住処が崩壊しちゃうとか、健康でも務めていた会社が不適切会計をやらかして早期退職に追い込まれるとか、いろんな悪い可能性もあるけどね。

でも僕は「最悪を想定した保険を掛ける」ことを考えたので、「自分の死後も残された家族が暮らしを維持できるようにしたい」という観点から、マンションを購入しました。学資保険とかも同じ理屈だよね。

いまは穏やかながらも借り手優位な法整備も進んできたので、マンションの貸し渋りが起きない可能性もあります。でも年金収入だけで都心の賃貸住宅に住み続けるのはやはり現実性が低いと思う。何に重きを置くかは、その夫婦の考え方次第ですが、子供がいて便利な場所に住みたい夫婦には、僕は持ち家を推薦しています。逆に独身の人には「一人暮らし用のマンション買うのはバカだよ」といってます(笑)。

子供のために(特に娘のために)

これは追加だけど、「子供にマンションを残せるのは大きいかも?」という気持ちもある。まあ築40年を超えるマンションは資産的な価値や、建て替え問題とかどうなるのか分かったものじゃないのですが、「中古マンション」ではなく「家賃を毎月支払わなくてもすめる可能性のある家」と考えてほしい。僕もそう考えているので。

僕には娘もいるのだけど、彼女が結婚に失敗してシングルマザーになった時、たぶん僕たちが残したマンションに住めることは、人生の選択肢に及ぼす効果が大きいと思う。日本ではシングルマザーの人たちがよく貧困生活に陥っている。これは大きな理由の一つに家賃が支払えないからです。

「家賃が払えない?じゃあ、生活費が安い田舎に引っ越せばいいでしょ?」というのは短絡的だ。家賃が支払えない→家賃が安い田舎に引っ越す→職がない。子供を預けられる社会インフラもない→都会に戻る→家賃が払えない。生活が極貧に→生活保護→働けなくなる。子供のアルバイトもできなくなる…というパターンですね。シングルマザーの人がさらに病気になっちゃうと、一発アウトです。

僕は自分の娘がシングルマザーになることを望んでいるわけではないですが、親としては最悪を想定して、仕事が見つかりやすい都内で(しかも子育てがしやすい環境で)家賃の心配をしなくていい住処を残してやりたい…というのは正直な気持ちなのです。僕たち夫婦が死んだ後に、極貧に落ちて欲しくないからねえ。まあ僕がリッチだったら、娘が結婚したらとりあえず都内にマンションを即金で買ってあげるのがよいのでしょうけど、そんな金は(今は)ないので。

ローン完済まであと5年。意外とすぐでしたよ。

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