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大人のロックとしての「産業ロック」

産業ロックで何が悪いか!

タイトルは阿部寛さん主演ドラマ「結婚できない男」の各話タイトルのオマージュです。
とまあそんなことはどうでもよくて。「産業ロック」というとセルアウトした(売れ線)ロックというイメージで悪くしか語られないのですが、逆にいえばよく出来たキャッチーなロックなわけで、安心してその質の高さを味わえる音楽として愛聴しています。楽曲だって完成度が高い方が良いに決まっているし、演奏だって上手い方がいいじゃないですか。ヘタウマは確かに個性的で新鮮かもしれませんが、毎日のように聴きたいものではなく。そういう意味では産業ロックって大人の鑑賞に耐えうる、ガッツリハマって聴けるだけのものを持ったものと思うわけです。

そもそも何が「産業ロック」なの?

産業ロックに当てはまるバンドは何なんだろうと考えると、日本と欧米ではかなりそのイメージが異なるようで、そのあたりはAORと同じような扱いを受けているように思います。また音楽的にもTOTOに代表されるようにAORと近いイメージもありつつ、ハードロックやプログレとも親和性があります。
今回は一般的に日本で言われる産業ロックをあげ、その完成度の高さに浸れる曲をいくつかご紹介。

TOTO "Waiting for Your Love"

今日、実は久しぶりにTOTOのデビューヒットである"Hold the Line"を聴きまして。改めて曲の良さやルカサーのギターの上手さに感心しきりでした。今回、TOTOの中で渋い曲をご紹介。作曲はボビー・キンボールとデヴィッド・ペイチですが、クールなリフに熱いボビーのヴォーカルが乗るソウル・ナンバー。チャートでは73位止まりでしたが、そんなことは関係なく、82年の大ヒット作"TOTO IV"で例の"Africa"への導入曲としての役割も見事に務めています。中間のスティーヴ・ポーカロのシンセ・ソロは圧巻。

REO Speedwagon "Keep Pushin'"

REOは一般には80年のアルバム"Hi Infidelity"の大ヒットでトップ・バンドとなり、85年のシングル"Can't Fight This Feeling"でバラッド・バンド的なイメージがありますが、王道のアメリカン・ロック・バンドとしての評価もされて良いかと。今回紹介するのは76年の"Keep Pushin'"。ノンヒットですが、彼らのライヴでは"Roll with the Changes"(78年。ライヴ・エイドでも演奏)と並ぶ定番レパートリー。熱いパフォーマンスが胸を打ちます。

Journey "Girl Can't Help It"

83年のアルバム"Frontiers"以降、サントラ参加などの散発的な活動となり、スティーヴ・ペリーもソロ作がヒットするなど、解散説が流れる中登場した86年のアルバム"Raised on Radio"からのサード・シングル。それまでと異なり、大仰な作品が影を潜め、コンパクトな楽曲が占めたアルバムですが、その分曲そのものの良さが引き立っているように感じます。前述のREOとジャーニーは、大ブレイクまでに数年を要したという点でも共通し、ほぼ同時期にブレイクしたこともあって、両者のライバル意識むき出しのインタビューも残されています。

The Alan Person's Project "Stereotomy"

アラン・パーソンズ・プロジェクトの全盛期は80年代初めのアルバム"The Turn of a Friendly Card"、"Eye in the Sky"、"Ammonia Avenue"の3枚の頃ですが、"Ammonia Avenue"から一年も立たずに発表した84年の"Vulture Culture"が今ひとつのヒットで終わってしまいました。そこからまた一年足らずの間に登場したのがこの"Stereotomy"。実は彼らのオリジナル・アルバムは昔も今も聴く機会がなぜかなく、ベスト盤に入っていたシングル曲くらいしか聴いていないんですが、この曲のカチッとした感じが好きでした。摩訶不思議なMVも印象的。

Mr.Mister "Is It Love"

84年に"Hunter of the Night"が小ヒット(米57位)だったとはいえ、85年に"Broken Wings"、”kyrie"と2曲連続全米1位シングルを生み出したときには、「すごい新人が出てきたな」と思ったもんです。前述の通り新人でも何でもなく、中心人物のリチャード・ペイジはペイジズのメンバーとしてAORシーンでは著名、セッションには引っ張りだこだったというのは全て後から知った話。当時彼らを新人バンドと思った人は多かったんじゃないかなと推測。この曲は2曲連続1位の後にアルバム"Welcome to the Real World"からカットされた3枚目のシングル。前2曲とはまた異なるダイナミックなロックは痛快極まりない傑作でした。

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