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Love Like Pop vol.21

aikoが好きだ。
きっと自発的に好きになった最初のアーティストだ。
人生はじめてのライブもaikoだった。

aikoの20周年アリーナツアー、Love Like Pop vol.21に行ってきた。初めてaikoのライブに行ったときはvol.10だったLove Like Popももうvol.20を超えた。当時高校1年生だったわたしは、今年で29歳になる。すごく最近のことのようなのにもうこんなにも前のことになってしまったんだな。当時のアルバムは今もまだ大好きでよく聴いている。逆に最近のアルバムはあまり聴かなくなってしまった。

それでもライブに久しぶりに行きたくなって、チケットを取って行ってきた。さいたまスーパーアリーナ。普段行くようなライブハウスとは違ってとても大きな会場。アリーナならではの演出がきれいだった。ステージから伸びる花道と、花道の中心にあるセンターステージ。aikoはステージを端から端までめいっぱい走ったりくるくる回ったりしていた。難しいような曲調だとしてもそんなふうに歌うもんだから、歌上手いなぁという、とても当たり前の感想を抱いてしまった。センターステージはちょうどわたしのスタンド席から一直線上にあって、双眼鏡で覗いたら視界がaikoしかなくて、わたしのためだけに歌っているような錯覚を起こしそうになったよ。そして、色とりどりの光る結束バンド。歌や演奏に合わせて光るバンド。「あたしの向こう」でaikoがピンクの光を背にして歌っていたときに、すごくキレイで目が釘付けになった。他にも照明だったり映像だったりの演出がたくさんあって、「密かなさよならの仕方」では厚みのある演奏と相まって曲のエモさが増していた。aikoの歌声も時がたって変化したのかな。CDで何回も聴いた曲はずなのに、ライブで聴いてさらに重たい印象の曲に変わった。

20周年記念ライブということもあって、昔の曲もたくさんやってくれていた。アンコールの始まりで「ナキ・ムシ」のイントロが演奏された瞬間、一気に昔の自分に引き戻された感じがして思わず立ち上がってしまった。薄いマキシシングルのケース。CDプレイヤー。ストーブのにおい。部屋の絨毯やカーテンの色。記憶の断片がたくさん蘇った。他にも「あなたと握手」「ロージー」「ボーイフレンド」「be master of life」なんていう、たくさんの懐かしい曲が演奏されて記憶の引き出しが順不同であちこち開けられていくような感覚がして心が大変だった。
前述したように、初めて自分から好きになったアーティストがaikoだ。初めて聴いたアルバムは「桜の木の下」。当時小学校三年生で、お姉ちゃんが買ってきたアルバムを借りて聴いていた。歌詞と自分を重ね合わせて聴くという行為をしたのもaikoがきっと初めてだと思う。aikoの歌う歌は恋愛に関するものが多くて、こんな世界もあるのだなあと思って聴くことの方が多かったけど、でも、わかるなあってフレーズもたくさんちりばめられていた。今回のライブで演奏された曲だと「彼の落書き」の二番目のA・Bメロがそうだ。

「今日何かにすがりついてないと 動き出す空に負けてしまいそう」
「待ってるだけじゃ変わらないから きつく縛ったままの日記をもう一度開けて」


共感できる部分なんて、ひとつふたつあるだけでよかった。それだけでその歌を自分の歌のように感じてしまっていた。自分の気持ちを吐き出す人は当時いなかったから。だから、たくさんaikoの曲に無意識的に救われていたんだと思う。

今回、ライブに行って気づいたことがあって。世間一般のaikoは、恋愛ソングばかり歌っていて、明るくて、元気で、みたいなイメージが強いように感じるけど、わたしがaikoを好きな理由ってそこじゃないんだろうなって。さくらももこさんに頼まれて曲を作ったというエピソードと共に、「もし小学生のときに自分がまるちゃんと一緒に過ごしていたらって想像して書いた曲」だという曲紹介で歌われた「ドレミ」。それを聴いてそう思ったんだよなあ。まる子と一緒にいるであろう幼き頃のaikoが、とても切なくて寂しげで。でも嬉しい瞬間もそこにはあって。あんないつも元気で明るいまる子を前にして、そんな揺れる感情を抱いているなんて…!とえらく感動してしまったし、「小学生の自分がまる子と一緒にいたら」というテーマで、こんな曲を書いてしまうaikoのソングライティングに改めて脱帽したのだけど。やっぱり、aikoのベースは不安や寂しさ、悲しみのような陰の感情なのだと思った。そして、それを「でもね。やっぱり」ってはね除ける陽の感情がちゃんとあって、その振れ幅が”わかる”って気持ちに繋がるんだよなあ。上に書いた「彼の落書き」の歌詞もそうだよね。そんな歌がきっとたくさんあるんだと思う。から、今度そのことについても文章にしたいな。

そんないろいろを抜きにしたって、aikoのライブは楽しい。楽しいんだ。それを思い出させてくれただけでうれしかった。旧友との再会みたいな、また仲良くしたいなと思えるような、そんな時間だった。思い立ってチケットをとってよかったな。

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