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「噴怨鬼」再読につき再び「鬼」シリーズを語りたい

「鬼」シリーズの最新刊「噴怨鬼」を見つけた時、高橋克彦氏の新刊が読めることに、何よりもまず心からの感謝を覚えた。

 弓削是雄の物語の新展開、前作「妄執鬼」で初登場の夜叉丸との再会に加えて、 高橋作品の他シリーズからの登場キャラクターというサプライズもあり、ますますます冴えわたる高橋氏の筆に酔い痴れた。

 所々で言及される過去作の出来事をおさらいしたくて、弓削是雄を軸とする「髑髏鬼」「絞鬼」「長人鬼」「空中鬼」「妄執鬼」を一気読みした上で「噴怨鬼」を再読した(至福の3日間だった)。
 是雄の冷静さや術士としての矜持がかっこいい、と前にも語った。
 今回一気読みして改めて印象的だったのは、鬼と対峙する術士が惑わされぬよう、仲間や家族を持つことを避け、行動を共にしても最後に危地に立つのは自分一人と決めていた是雄が、仲間との絆を深め、信じ頼ることを覚え、さらに心を強くしていく姿だ。
 信じ合い頼り合い、危地において背中を預け後を託せるほどまでに築き上げた縁は、何よりも自分の心を強くする。是雄たちの涙に、そんな思いを私は重ねていた。

 人と関わらずに生きることは不可能。それでも人を避けがちな自分をどう御したものかと沈んでいた昨今だからこそ、是雄たちの物語を読めと私自身の心が求めていたのかもしれない。そんな思いも去来する。

 やっぱり高橋克彦作品は、深い。

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