高橋克彦作品紹介(伝奇長編を贅沢に読む)
厚さ
私が最初に読んだ高橋克彦作品は「蒼夜叉」という伝奇寄りの現代ミステリで、新書版としては標準的な厚さでした。文庫版でも厚さは約1.2cm。あまりかさばらず、内容は非常に濃い。移動中の読書におすすめの本です。
一方で、移動中におすすめ! と手放しでは言えない作品もあります。
なにせ、文庫版で厚さ約3cm(1冊です)。掌中にずっしりとした存在感を誇る大長編、その名は「総門谷」と「星封陣」。
2作品もあるのですよ、厚さ3cmの文庫本が!!
「総門谷」
「蒼夜叉」ですっかり高橋克彦作品に魅了された私が、次に手に取ったのが「総門谷」でした。
当時は十代で、夏休みで時間もたっぷりあったので、朝から晩まで読みふけった記憶があります。2日ほどで読了して、作中に登場した「遠野物語」や世界の謎の数々について自分でも調べてみたくなりました。
「総門谷」の舞台は現代日本。UFOの目撃談を巡って、テレビマンと経済雑誌の出版社が出会い、謎を追ううちに、人間とは異なる存在に立ち向かうことになる……というのが、かろうじてネタバレせずに言えるあらすじです。
興味を持ってもらえそうなキーワードを挙げるなら、ホムンクルス、ピラミッド、オートマタが作中に出てきます。
漫画「スプリガン」に出てきたピリ・レイスの地図の話にも触れています。
伝奇がお好きな方は是非お読みください。
「総門谷」は「総門谷R」となって阿黒篇、鵺篇、小町変容篇、白骨篇と続いています。舞台は平安時代。現代日本から始まった物語がなぜ平安時代へ続くのか。どうぞ読んでお確かめください。
「星封陣」
そしてもう一つの大長編「星封陣」。こちらも舞台は現代日本。東北でひっそりと暮らす物部氏の末裔が、謎の勢力に脅かされます。古より受け継がれた物部の秘宝とは何なのか。伝奇的な謎と、ハードな展開(現代日本でマシンガンの銃撃戦やヘリコプターの空中戦が繰り広げられます)があいまって、ページを繰る手が止まらなくなります。
物部の末裔・緋星幸丸(あかぼし さいわいまる)が数学好きで猫を可愛がっているという、おおらかな殿様ぶりも個人的にとても好きです。
昨今の巣ごもり等で不意に時間がたっぷり取れた折り、丸一日ずつをかけてこの2作品を改めて読みました。
この上ないほどの脳の満腹感がありました。
少しずつ読み進めるのも読書の楽しみではありますが、一日どっぷり作品世界に浸るという贅沢な読み方もいいものです。
とにかく。
やっぱり高橋克彦作品は面白いです。
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