わたしへ
電車の窓から赤い夕日をまじまじ見て、別の窓から街に目をやると、寒色系のフィルターをかけたみたいに見える。
イヤホンから流れてくるのが、高校のときにさんざんきいたアルバムだってことを思い出す。
バスの車窓を眺めつづけて片道1時間。
世界史の教科書にもガラケーの画面にも酔って、あの独特のにおいが気持ち悪くて、とにかくバスが嫌いだった。電車に乗りたかった。
さて、そんな憧れの電車に乗りながらわたしは、またバスに乗りに行こうとしている。
こんなにも、わたしの世界は多面的なんだ。
自分の大切にしてきたこと、ひとりのときに目をやっていたこと、きっとあったはず。
好きなこと、得意なこと、好きな人の好きなところばっかり見ていたころのわたしへ。
わたしへ。
あらそうことなかれ。
踏みはずすことなかれ。
いちばん大事なものを見失わないように。